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いい匂いが必ずしも正解とは限らない、精油ブレンド制作の失敗事例

この冬は暖かい日が続いていましたが、最近はようやく冬らしい寒さが戻ってきました。

私は天候に左右されやすい気質なので、日の出が遅くて寒い冬は、やる気が薄れてしまいます。こうした季節性の症状というのは、わりと誰にでも起こりやすいようです。

冬特有の無気力感は私の長年の悩みで、どうにかしたいと常々思っています。特に困っているのが、朝起きられなくなること。目が覚めていても体にエンジンがかからず、どんどん時間が過ぎていきます。そうすると、やりたかったことができなくて苛立ったり、イライラから気分の落ち込みに波及したりして、よけいに無気力感が増幅するという悪循環に陥ります。

そこで、目覚ましのアラームが鳴ると同時に匂いを嗅いで強制的に体を起こし、その勢いで動き出すというアイデアを思い立ちました。そんなわけで、精油ブレンドのレシピを一人ブレストしながら考えてみました。

おおまかな流れは次のような感じ。

miroを使って、今の状態と症状を可視化・把握する
ブレンドの目的とキーワードを決める
精油の候補を挙げる・使い方を考える
精油の種類を決める・香りの確認・レシピ決定
調合

今の状態を掘り下げるため、miroで可視化する

まずはやる気が起こらない状態を掘り下げてみます。これは、ブレンドの目的を明確にするためです。
私は精油ブレンドのアイデアを練るときにいつもmiroを使っています。考えついたことを書き出したり、情報を整理したりしながら可視化するのに、miroはとても便利です。

以前は紙のノートに書き出していました。紙には紙のよさもありますが、レシピとして残すことを考えるとmiroのほうが断然便利です。
ノートの場合は最初からきれいに清書しながらブレストするのは無理ですが、miroの場合はブレスト後に清書するのも簡単です(というか、ブレストしているうちに清書になっていく)。そうすると、たとえばブレンドの趣旨や経緯を見直したり、ひとつのブレンドから別のブレンドのアイデアを派生させたりするときなど、とても便利なのです。
また、図形や線などの要素を自在に動かすことができるのもmiroのいいところ。ブレスト中は新しいアイデアがどんどん浮かぶので、それに伴って変化していく思考に沿って図を作り替えていけるのです。

そのようにして、頭でなんとなく考えているだけでなく、可視化してみると、改善したい症状同士の関連やプライオリティをつかめるようになります。

今回の場合は、やる気が起こらない(無気力)のはそもそも体の冷えから来ていて、更年期症状と相まって気分の落ち込みが生じているのだろうと思います。なので、冷えを改善する作用のある精油を選び、体のエンジンをかけて動き出しをスムーズにすることを目的にしました。

miroでブレストした結果。プライオリティが高い症状は赤い文字で表した。

キーワード、精油の候補、使い方を決める

状態を掘り下げてゴールが設定できたら、次に精油選択のキーワードを考えます。
今回のキーワードは「冷え」にしました。そこで、加温作用と血行促進作用のある精油、心身の活力向上を促す精油、そして更年期症状に適応する精油もあわせて候補にしました。最初の候補は、グレープフルーツ、サイプレス、ジンジャー、レモングラスの4種類。後述しますが、私の場合、精油をいきなり決めることはほぼありません。

加温・血行促進作用のあるジンジャーとレモングラスで体を温め、グレープフルーツの快活な香りでやる気を起こすことで、朝の動き出しをよくする狙いです。サイプレスはセルライト対策と集中力向上を期待して候補に挙げました。

そして、「どう使うか?」ですが、最初に考えていたのはキャリアオイルに希釈してマッサージするという使い方でした。しかしよく考えれば、「朝の動き出しができない人間がマッサージなどできようか?」と思いました。

香りや精油の作用はもちろんのこと、「その人が、そのときに使いやすいこと」もアロマを使う上で大切です。私が自分のアロマ教室で調香セッションを行うときも、この点を重視しています。

今回は、そもそも動き出せないという状態で使うので、「目が覚めたらすぐに使えるように枕元に置いておく」「布団の中で横になった姿勢で使える」ことを満たす方法として、ロールオンボトルで手のひらにクルクルとオイルを塗って香りを嗅ぐというやり方にしました。

さらに候補を探し、精油を絞り込み

最初の精油の候補として、ジンジャー、レモングラス、グレープフルーツ、サイプレスを挙げましたが、ここで終わりにはしません。「本当にこれでいいのか?」という疑問を持ちながら、ほかにも候補になり得る精油がないか調べます。

なぜそんなことをするのかというと、ひとつは単純に見落としているものがあるかもしれないからです。そして、もうひとつは精油の組み合わせを考慮するためです。これは、精油の相乗効果と抑制効果、そして香りの相性のことです。

この段階で、最初の4種類(グレープフルーツ、サイプレス、ジンジャー、レモングラス)から以下の4種類が候補に加わりました。

  • ジュニパーベリー:加温作用があり、グレープフルーツと香りの相性がよく、セルライト対策の定番の組み合わせ。

  • プチグレン:バランス調整役として。精神がピリピリしているときに鎮静させると同時に、活力を高める。

  • ベルガモット:さわやかな香りで気分を爽快にさせてくれる。更年期症状の適応として。

  • レモンバーベナ:精神を刺激し、気分を爽快にさせてくれる。

この4種類を加えた合計8種類の香りを、このあと確認していきます。

匂いを嗅ぎながらレシピを決める

まず、1種類ずつの匂いを嗅いで、どれは外したくないか、外したくない精油とうまくマッチするほかの精油はどれか、などを探っていきます。続いて、選んだ精油の組み合わせを変えながら、匂いを嗅ぎます。

そんな具合に匂いを嗅いで組み合わせを考えているうちに、ほしいと思う香りの立体的なイメージが出来上がってきます。

普通はトップノート、ミドルノート、ベースノートをそれぞれ選ぶと思いますが、私は必ずしもその方法にこだわってはいません。それよりも、目的に合わせることとイメージに近づけることに重きを置いています。

今回は、キーワードの冷えに最も効果のあるジンジャーを主役にすることにしました。目的は、スッキリと起きて、スムーズに動き出すこと。イメージは、雨上がりの森のようなみずみずしさ、朝露のような光の輝き、軽やかに走り出す…という表現になります。

最終的には、候補に挙げていなかったバルサムファーを含め、以下のようになりました。

  • ジンジャー 0.09ml

  • バルサムファー 0.09ml

  • グレープフルーツ 0.06ml

  • サイプレス 0.06ml

  • ベルガモット 0.06ml

  • レモンバーベナ 0.06ml

これらをホホバオイルおよそ3mlで希釈し、ロールオンボトルに入れて保管して完成です。

いい匂いだが、正解ではなかった

翌日、このオイルを使ってみました。アラームと同時に手のひらにクルクルと塗って匂いを嗅いで活動スタートとなるはずが、まったくうまくいきませんでした。

その理由はとても単純で、香りが心地よすぎるから。

たしかに、いい香りに仕上がりました。イメージにもそこそこ合っているように感じます。しかし、心地よい香りゆえに、ほんわかとしてしまう。そして軽すぎた感もあります。敗因は、レモンバーベナが予想以上に強く出て、ジンジャーが隠れてしまったこと。

ほんわかとできるので、眠るときにはいいかもしれません。しかし、いくらいい匂いでも、目的に合わなかった失敗作の出来上がりとなってしまいました。

あらためて、目的に合わせた香りづくりの難しさを感じました。

Coffee cup with the words “Wake up!” and steam, clouds and birds by Zamurovic Brothers from Noun Project (CC BY-NC-ND 2.0)


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