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【映画感想】 『カミノフデ 怪獣たちのいる島』〜子どももオタクも楽しめる 空想特撮ファンタジー怪獣映画

『カミノフデ 怪獣たちのいる島』
監督 村瀬継蔵 、脚本 中沢健
池袋HUMAXシネマズで観賞

 昔の怪獣映画の着ぐるみなどを造っていたレジェンド美術造形家である、亡くなった祖父のことをよく思ってない孫娘と、同級生のオタク男子が、追悼お別れ展示会の会場で遭遇。

それまでお互いをちゃんと認識していなかったふたりは、突然現れた謎の斎藤工にいざなわれ、製作されなかった幻の怪獣映画の中?に入ってしまう…

ほぼ絶滅したオリジナル怪獣映画

 映画『カミノフデ』は、ゴジラシリーズでもガメラシリーズでもウルトラマンでもない、単独のオリジナル怪獣映画です。

 かつて、単独のオリジナル怪獣映画は、『大巨獣ガッパ』(1967年.野口晴康 監督)、『宇宙大怪獣ギララ』(1967年.二本松嘉瑞 監督)、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』(1970年.本多猪四郎 監督)、『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(1972年.飯島敏宏 監督)、などなど、昭和の怪獣ブームの際は沢山撮られました。

魑魅魍魎
どの作品もポスターのワクワク感が楽しい

 今ではゴジラのお友達と化している、モスラやラドンなども、はじめは個別のオリジナル怪獣映画として誕生。その後ゴジラシリーズに、今で言うアベンジャーズ的に組み込まれていったという経緯があります。

 ブームの頃は無数に撮られたオリジナル怪獣映画ですが、次第に邦画の新作怪獣映画は、ゴジラかガメラのシリーズがほとんどになっていきました。

インディーズ映画やショートフィルム、イベント上映以外での、邦画の劇場公開オリジナル怪獣映画は『ヤマトタケル』(1994年.大河原孝夫 監督)以降、沈黙。

唯一、おバカ映画の巨匠、河崎実 監督が『大怪獣モノ』(2016年)、『三大怪獣グルメ』(2020年)など面白いやつを撮り続けます。しかし、低予算を逆手に取ったパロディ要素の強いコメディ映画です。

絶対におかしい


子どもも楽しめる真っ当な怪獣映画


 映画『カミノフデ』は、そんな状況で製作された、子どもも楽しめる真っ当な空想特撮ファンタジー怪獣映画です。

公開されなかった幻の映画の中?に入ってしまった少女と少年の、ひと夏の冒険として展開するジュブナイル映画として撮られており、小さいお子さんも自分事のように感情移入して観やすい構成になっています。

ファンタジー世界で出会う、妖精のような怪獣「ムグムグルス」はフワフワでかわいらしく、モスラだけがその地位を独占している、モフモフ系怪獣の魅力を発揮しています。

かわいい

スクリーンで観るミニチュア特撮の迫力



 現在の怪獣映画は、ハリウッド版のゴジラだけでなく、日本で撮られた『シン・ゴジラ』も『ゴジラ-1.0』も、怪獣のシーンは基本的にCGで描かれています。

CGは、今の映画では怪獣に限らず当たり前に使われる手法ですが、逆にそればっかりになってしまいました。
 
しかし、CGで描かれる迫力と、実際にミニチュアで街や戦車を造り、それを怪獣が本当に破壊する特撮の迫力は、迫力の質が違います。

とりわけ、映画館の大スクリーンで観るその存在感は、今のCGに慣れている人ほど、驚くと思います。

サブスクで配信されるのを待つのではなく、上映されている映画館を探して観に行くのが絶対におススメです。

マニア向けネタのさじ加減

 怪獣映画やヒーロー番組などの特撮作品は、最初のゴジラやウルトラマンが大昔の作品ということもあり、ファンが高年齢化しており、作品もついついマニア受けだけを狙ってしまう傾向があります。

カミノフデ』も、そもそも物語がレジェンド怪獣造形作家の自伝的作品であり、マニア向けのネタ(イースターエッグ)は相当組み込まれています。

しかし、「分かる人には分かってクスりと笑える、もしくは感動するが、分からない人はそういうものとして全く気づかない」さじ加減で組み込まれており、マニア向け作品特有の気持ち悪さがありません。

ネタは無数にありますが、分かりやすい例をあげると、謎の男 斎藤工の存在があります。マニアからすると『シン・ウルトラマン』であり、実は マイナーな特撮に沢山出演している俳優 でもあるので、「謎の男」などという怪しい役で登場すると、それだけでもう面白いのですが、マニア以外の人からすると普通の人気俳優さんです。

映画『カミノフデ』は、子ども向け夏休みファンタジー映画でありつつ、特撮マニアなら楽しいネタも満載の、王道娯楽空想特撮ファンタジー映画です。

怪獣がミニチュアセットの街で暴れる姿をスクリーンで見られるのは最高!
ぜひ映画館でご覧ください。

ちなみに
池袋HUMAXシネマズでは、実際に撮影に使用された現物が展示されていました。

だいあぱんだよ、ムグムグルス…

また、2024年7月末に開催されたワンダーフェスティバルという造形物イベントでは、撮影に使われた怪獣ヤマタノオロチが展示されていました。

でかい!

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