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「LSE留学記 2: Paul」(2023年7月13日)

イギリスはチョコレートの消費量が多い。イギリスの甘味の主たるやチョコレートではないかというほど、スーパーの陳列棚はチョコレートが占拠している。それもあってか、あらゆる店舗でココア(hot cholocate)が手に入る。体感であるが、カフェに入ってココアがないという事態はまずほとんどなかったと思う。在籍のLSE(London School of Economics and Political Science)の小規模のカフェでも購入できたくらいだ。
自分は元々チョコレートの甘味が好きであるのと、よく頭を使った後や精神的に一時的な負荷がかかった時にはどうも甘味が欲しくなるのとで、私の留学中のささやかなリフレッシュはココアを楽しむことによって達成された。まさに留学中の勉強の最高のお供であったのである。

Paulのココア

ロンドンにあるいくらかのカフェのココアを試して、最もスイーツじみた濃厚さ(リッチさ)と満足感を覚えたのは、フランス発の「Paul」というパティスリであった。セントラル・ロンドンのあらゆる場所に店舗を構えていた。他によく見るCaffe Nero(淡いブルーの店構え)やPret A Manger(赤い店構え)に比すると目にする機会には恵まれなかったが、それでもPaulもよく見かける「定番のカフェ」であった。それぞれ、Caffe Neroはシック、Pret A Mangerはカジュアル、Paulはクラシックという感じだった。フランスの食文化が輸入されたイギリスでは、フランスの食文化をあちこちで見かけるのは自然なことである。Paulのココアは日本でいうようなミルク感≧チョコ感というものではなく、ミルク感<チョコ感であって、チョコを飲んでいるような感覚に近い。ゆえに、さらさらとした質感ではなく、とろとろとした質感だった。ナポレオンはチョコレートを「飲んで」楽しんだと聞いたことがあるが、当時私はそれを思い出して飲んだものだ。ココアを飲むというより、チョコレートを飲むという体験だった。(そういえば、友人に連れられて行った、ロンドンのItalian hot chocolateの店が出すのも「飲むチョコレート」だった。推測に過ぎないが、ココアの食文化は多少地理的な広がりを持って共有されているのかもしれない。)

訪れたPaulの内装


Paulの内装はブラウンで統一された落ち着いた印象(さらに飲み物のカップも同系色であり統一感がある)であるが、シンプルなのに地味な印象を与えない。温かみのあるオレンジ色の照明がパネル板の天井を照らし出すことで陰影が生み出され、空間上部に華やかな印象を与えていた。空間全体のデザインとして、商品であるパンをカラースケールで薄い方に位置付けることで、パンを目立たせ、客の目が自然とパンにいくように計算されているようである。シックで落ち着いた店内は、忙しいロンドンでそれも忙しく仕事を終えて入店した際にもほっと一息つけるような場所である。

余談であるが、後日昼食にサンドも試してみた。カリッとした麦の素朴で優しい香りが楽しめる表面に、水分と弾力のあるもちもちとした中が印象的だった。全体として空腹も気持ちも満たされる満足感がありながら、重くなく食べやすい。こだわりが感じられつつもtoo muchではないことから、上品で好感が持てる味であった。

スイーツもある。これは、シュー生地の甘さを控え、クリームと粉砂糖に甘味を持ってきたシュークリーム。いちごがたっぷりでジューシーである。くどさがない。

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