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美容師が輝ける世界をつくりたい。訪問理美容と髪質改善専門ヘアサロンを展開する株式会社ILUMINAR海口光洋の物語【誰かの物語vol.4】

商品やサービスには、必ず物語がある。現在地に至る紆余曲折や叶えたい未来を知れば、もっと好きになったり、もっとおいしく感じたり、五感が刺激されて、ともすれば人生さえも変えてしまうかもしれない。そして、また新しい物語が巡り生まれ、世代を紡ぐ。『誰かの物語』は、誰かを救う力に満ちている。そんな、誰かの想いが詰まった素敵な物語の数々をご紹介します。

今回は、訪問理美容と髪質改善専門ヘアサロンを展開する株式会社ILUMINAR(イルミナル)海口光洋さんの物語。

「全ての美しいを照らす」。企業理念に則り、幅広く事業を手がける

海口光洋さんが代表取締役を務めるILUMINARは、2018年に兵庫県川西市・日生中央の地で髪質改善専門ヘアサロンとしてリニューアルオープンして以来、尼崎市の塚口(IRIS/イリス)、宝塚市の中山寺(ALLICIANT/アリシアン中山寺)、川西市の川西能勢口(ALLICIANT/アリシアン川西)に店舗を展開しています(2024年4月時点)。

「白髪や癖毛、頭皮のかゆみといった悩みに寄り添い、髪をキレイにすることに特化したヘアサロンです」(海口さん)

海口さんいわく、“髪のお医者さん”。初回は30分かけてカウンセリングを行い、その人の悩みに合わせて最適化したケアを施しながら髪質を改善していきます。

「『マイナス10歳を目指す』が、当社の髪質改善専門ヘアサロンのコンセプトです。完全予約制のデザイナーズサロンで、キレイになりたい大人女性の願いを叶えます」(海口さん)

川西市・日生中央にある髪質改善専門ヘアサロン「ILUMINAR」

そして、同社は2007年、業界に先駆けて訪問理美容サービスを提供し、注目を集めたことでも知られています。現在は、川西市を拠点に病院や介護施設、在宅介護の現場に美容師を派遣。「自分たちが“最終ライン”。後ろには誰も控えていない」と訪問理美容に携わる使命感を口にしますが、だからこそ大きなやりがいにつながっているのでしょう。「たとえご本人が言葉を発しなくても、ご家族や介護スタッフさんから『ありがとう』と喜んでもらえると、すごくうれしい」と海口さんは目を細めました。

他にも、2022年には日生中央の店舗の隣に女性専用のアイラッシュ専門店「LUNA EYE BEAUTY」をオープン。「全ての美しいを照らす」という企業理念に則り、幅広く事業を手がけているのは、海口さんが美容の可能性を心から信じているからに違いありません。

おじいちゃんに憧れて。手応えを微かに感じ始めた矢先、思わぬ出来事が……

そんな海口さんが美容の世界を志したのは、小学生の頃。当時、憧れの人物がいたと教えてくれました。
 
「大阪駅にあるビルで理容室と美容室を経営するおじいちゃんに憧れていました。白のスーツ姿はカッコ良く、スタッフさんたちからも愛されていて、そのうえお金もたくさん持っていて(笑)おじいちゃんみたいになりたくて、髪を切る仕事に就きたいと思うようになりました」(海口さん)
 
一途な想いは強く、揺らぐことはありませんでした。「早くおじいちゃんみたいになりたい」。焦りにも似た衝動を抱えたまま10代を過ごし、ようやく理容の専門学校に入学すると、1年後には美容専門学校の通信課程を並行して受講し始めたそうです。
 
「土日はサロンで研修生として働いていましたので、休みはありませんでした。ただ、そのおかげで技術の上達スピードは上がり、研修生の身分ながらお客さまの施術を任せてもらえるようになりました」(海口さん)
 
専門学校に入学してから怒涛の2年間を駆け抜けた海口さんは、理容師免許と美容師免許を取得し、ついに祖父が経営する店舗で勤務します。80歳を過ぎていた祖父の後継ぎを期待されて副社長という異例の役職で入社するも、海口さんは胡坐をかくことなく、ひとりのプレイヤーとして邁進。親子以上も年が離れている先輩のスタッフから信頼を得ていきました。
 
「おじいちゃんみたいな、みんなに愛される経営者になれるのではないか」。海口さんが手応えを微かに感じ始めた矢先、思わぬ出来事が起こります。
 
「おじいちゃんが亡くなってしばらくして、会社が倒産してしまったんです。2つの店舗は新会社に引き継がれ、養子に入っていた僕には数千万円の借金だけが残りました」(海口さん)
 
祖父がいなくなり、かわいがってくれていた先輩スタッフらが次々に退社すると、気づけば自分の居場所はなくなっていたそうです。
 
「年齢を理由に退社と同時に美容師を引退する先輩スタッフもいて、ハサミを譲り受けました。今でも大切に使っています」(海口さん)
 
先輩たちの形見ともいえるハサミと多額の借金を抱え、海口さんは大好きな祖父が創業した会社を去ることになりました。今も返済を続けているそうですが、引き落としではなく、毎月わざわざ振り込みに行くようにしているのは「このときの教訓を忘れたくないから」と唇を噛みます。海口さんの眼差しからは、経営者として会社を守り抜こうとする決意がひしひしと伝わってきました。

業界に先駆けて訪問理美容をスタート。失敗を糧に受け入れ態勢の整備へ

失意のどん底に落ちたものの、持ち前の前向きさが功を奏したのか、将来を悲観することはなく、むしろワクワクしていたと振り返ります。
 
「どうすれば一発逆転できるか考えていましたが、もちろん自分のサロンをつくる資金はありません。そこで思いついたのが、訪問理美容だったんです」(海口さん)

ちょうど祖父の店舗を訪れていた顧客の年齢層が高く、「大阪駅まで来るのがしんどい。家まで来てくれたらいいのに」との声をよく耳にしていたのもヒントになりました。
 
「当時、訪問理美容はまだまだ珍しかったんですよ。それに高齢化社会を見越して介護施設が増えている時期だったので、ニーズはあるのではないかと思いました」(海口さん)

2007年、大阪府豊中市で高齢者用訪問理美容サービス「ゆーず」をスタートすると、その予測は見事に的中。地道に病院や介護施設に営業活動を続けていくうち、徐々に評判は広がっていきました。

訪問理美容を始めた頃の海口さん

夕方のニュース番組で特集されると、翌日には問い合わせが殺到。「でも、大失敗だった」と、海口さんは苦笑いを浮かべました。

「正直、想定以上の反響で……。受け皿を用意していなかったため、せっかくのお問い合わせに対応できず、お断りしなければならなかったんです。そのうち大手が参入し、資金面でも人材面でも太刀打ちできず、市場は一気に奪われてしまいました」(海口さん)

しかしながら海口さんは、訪問理美容の社会的意義を日に日に痛感していたため、事業をやめることはしませんでした。「訪問理美容で救える人は、まだまだたくさんいるはず」。大阪府からは撤退するも、2012年に生まれ育った川西市に戻ってサロンを開業し、地域No.1に向かってまたしても再起を図りました。

「同じ失敗を繰り返さないため、訪問理美容に関する多様な要望にお応えできる受け入れ態勢を整えました」(海口さん)

ただ、まだまだ万全ではないのだとか。海口さんは、共に働く美容師を募っています。

「美容の仕事は素晴らしい」。辞めてしまった美容師が再び輝ける環境づくりに注力

訪問理美容のニーズは高まるばかり。「美容師が足りていない」と指摘する海口さんが目をつけたのは、何かしらの理由で辞めてしまった美容師たちです。

「美容師の離職率は3年で8割ともいわれています。美容師の仕事がイヤになったのなら仕方ありませんが、収入や職場の人間関係、ライフスタイルの変化などが理由でやむを得ず辞めてしまうのは、とてももったいないことだと思うんです」(海口さん)
 
そこで海口さんは美容師の働き方改革を掲げ、辞めてしまった美容師が再び輝ける環境づくりに注力するようになりました。
 
「例えば訪問理美容なら、空いている時間帯にスポットで働けるので、出産や育児などでブランクのある美容師さんの復帰の場としてうってつけです。しかも、訪問理美容は働きやすいだけでなく、美容師という仕事の本来の喜びを思い出させてくれます。というのも、髪をキレイにして差し上げると、ご本人だけでなく、ご家族や介護スタッフさんなど周囲にいる人たち全員が笑顔になり、感謝してもらえるんです。美容師の仕事の原点と僕は感じています」(海口さん)
 
訪問理美容では、結果的に「人生最後のカット」になるケースも少なくありません。挽回する次の機会が確約されていないからこそ、想像力を働かせながら常に全力を尽くすようにと、スタッフには徹底しているそうです。
 
また、髪質改善専門サロンを展開しているのも、美容師の復帰を後押しするためだといいます。
 
「髪質改善では、高度なカット技術は要求されません。お客さまの悩みをとことん聴き、マニュアルをもとに適切なケアを施せば、リピーターになってくれるはずです」(海口さん)

訪問理美容でも髪質改善でも、海口さんが美容師に求めるのは、たったひとつだけ。それは「目の前のお客さまに真摯に向き合うこと」です。

「働ける時間帯さえ空けてくれれば、こちらで予約は埋めます。『会社がバックアップするので、あなたは美容師の仕事に集中してください』とスタッフには伝えていて、顧客満足を優先できるように裁量権も与えています」(海口さん)

海口さんと美容師の面接風景

海口さん自ら面接を担当し、適性を見極めたうえで訪問理美容への従事か髪質改善専門ヘアサロンでの勤務を提案。中には新店舗を任される人もいますが、その人がより良く働ける場所を用意するのが自分の仕事と力を込めました。

「別に親切心だけでやっているわけではありません(笑)辞めてしまった美容師にフォーカスし、美容師不足という社会課題を解決できれば、僕の事業にも必ずプラスになると確信しているんです」(海口さん)

新ブランド「ALLICIANT(アリシアン)」を立ち上げた今、多角的な店舗展開と自社商品づくりを加速させていきたいと、海口さんは展望を語りました。

新ブランド「ALLICIANT(アリシアン)」

「まずは現実的に10店舗が目標ですが、ゆくゆくは100店舗を目指したい。100店舗って、なんかカッコいいでしょ(笑)そのためには、ALLICIANTを美容師や美容関係の仕事をする人たちが集まるブランドに育てていかないといけません」(海口さん)

海口さんのトレードマークは、上下白のコーディネート。「白のスーツを着ていたおじいちゃんの影響ですか?」と尋ねてみると、「もしかしたら頭の片隅に残っていたのかも」と笑いました。

「美容の仕事は素晴らしい」。美容師が美容師らしく輝ける世界をつくりたいとの真っすぐな想いは、小学生の頃から胸に秘めてきた信念の結晶なのかもしれません。

・株式会社ILUMINAR(イルミナル)
所在地:兵庫県川西市一庫3丁目1-6
事業内容:訪問理美容、髪質改善専門ヘアサロン・女性専用のアイラッシュ専門店運営
営業時間・定休日:店舗による

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