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【凡人が自伝を書いたら 95.追い詰められた人間】

地区長との会話は、僕の中では非常に有意義なものだった。

今まで、学生時代を含めて、何らかの組織には属していたが、サークルの会長やら、店長やら、小さい組織ではあるが、「トップ」のポジションにいることが多かった。

高校までは、部活や学校の活動等では常に「一般兵」だったため、運営側の気持ちなど考えたことは全く無かった。

そんなだから、「組織の中で生きる」みたいなことを深く考えたことはなかった。

そうしたこともあり、先日の地区長との会話は、そういうことについて考えさせられる良い機会になったのだ。


一方、明るい話題だけではなく、そこから、確かな事実として浮かび上がってきたこととしては、「社長の意向には、絶対に逆らえない。」そういうことである。

別に僕は「レジスタンス」でもなく、「左翼思考」でもない。「権力に逆らいたい病」でもない。(思春期は除かせていただきたい)

ただ、

「納得して、胸張って仕事なり、人生なりをやっていきたい。」

それだけの話だった。

「俺は反対なんだけどさ、、上司がやれっていうからさ。」

そういう類は嫌いだった。

かといって、

「不満があれば大声で騒いで、周りの大人たちが気を遣って解決してくれることを期待する。」

そんな「子供のような姿勢」もまた、嫌いだった。


「すいません!24時間営業は、やめません!」

意外に反感は買わなかった。

「やっぱ、うちが稼がないといけませんもんね。」

「店長が私たちのこと考えて、動いてくれただけでも十分です。」

「気を遣わせてしまって、逆にすみません。」

そんな声が多かった。

もちろん残念がる声もあったが、「店長が決めたことなら仕方ない。」そう言って理解してくれたようだった。


1週間ぶりにエリアマネジャーが店をおとづれた。

通常時を考えれば、これでもスパンとしては多い方だが、このところほとんど毎日顔を合わせていたので、何だか久しぶりのような気もした。

何だか、少しやつれたような、シワが増えたような、髪が薄くなったような、そんな印象を受けた。(はいすいません!)

聞けば、ここ1週間エリアの全店を回り、店舗の状態確認、人員体制の見直しや、売上向上策、コスト改善策なんかを、店長と話してきたようだ。

上司はいろんな理由があって、老けていた。

複数の店長が極度にやる気を失っていて、コスト改善なんかに全く前向きでない。「赤字垂れ流しが当たり前のこと」になっている状況。

エリアマネジャーより年上の店長もいて、そういう店長はあからさまに反抗もしてくるようだ。

シフトの多い少ないでスタッフ間の人間関係が悪くなる店舗や、スタッフと店長の関係が悪化している店舗。

エリアマネジャーに対して、「コロナを持ってこられると怖いから、店に来ないでください。」なんて言われることもあったようだ。

最後のは、わりと単純に「可哀想」だった。

もちろん指示であれば、電話やメールなんかでもできるが、店舗の状態改善なんかは、やはり現場・現物で見ないと、数値だけではどうしても「机上の空論」になってしまう。

一体どんだけ塞がれてるんだ、というほどの八方塞がり感。これは通行禁止なんてレベルでなく、シェルターに隔離されでもしされている感じ。

さらには、どんだけ挟まれてるんだ、というほどの板挟み感。これはもはやハンバーガーなんかではなく、「ホットサンド」のレベルである。

常人の神経ならとうの昔に気が狂っている。

髪の毛など、とうの昔に抜け落ちている。

10円なんてもんじゃなく、500円ハゲが5000円分くらいはできているに違いない。

手を合わせて拝みたくもなったが、さすがに殴られそうだったので、「上司がいつも飲んでいる微糖の缶コーヒー」を、店の裏の自販機で買い、そっと差し出した。

「おお、ありがとう。すまんな。」

うつ病の父を見ていたので、上司がそうでないことは何となくわかったが、それでも疲れている、参っていることはよく分かった。

若干「追い詰められている」ということは、言葉にせずともよく分かった。


つづく










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