【凡人が自伝を書いたら 1.誕生まで】
吾輩は「暇」である。
さあ、少しずつ人生を振り返っていこう。
〜〜〜
自伝を書く上で、両親のことはやはり外せない。
ただ、両親のことに気を取られてしまうと、『自伝』ならぬ、『他人伝』になってしまう。
しかも、両親のことを語る上では、祖父母のことは欠かせない。祖父母のことを語る上では、、、
そんな、『無限他人伝地獄』が待っている。
吾輩は「暇」である。
が、そこまで「暇」ではない。
両親の『出会い』くらいにしておこう。
カエルの子はカエル。
凡人の子は凡人。
ただ、出会いはなかなかのものだった。
〜〜〜
バンド内恋愛。
チャラい。
フラフラしたバンドマンが、女子大生を口説く。
チャラい。
これである。
バンドでドラムをしていた父が、同じバンドでキーボード担当だった、母とお付き合いし、結婚し、僕が誕生した。
ざっと書けば、これである。
〜〜〜
ご挨拶の日。
父はぐずぐずしていた。
亡くなった、母方の祖母(おばあちゃん)はキレていた。
「あんた!早う、告白しなさい!!怒」
これである。
チャラチャラしたバンドマンが娘と仲良くしていることで、怒られることは理解できるが、その逆だったから、これはなかなかの衝撃だったろう。
父は圧倒され、告白というか『自白』を強要され、めでたくお付き合いが始まった。(あっぱれ)
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数年経って、
父はまた、ぐずぐずしていた。
おばあちゃんは、またキレた。
「あんた!早よう、結婚しなさい!!激怒」
これである。
えげつない強制力である。
もちろん父の意に反している訳では無かったが、やはり衝撃だったろう。
しかも今回は『結婚』だから、大ごとである。
ただ、父は弱いので、反撃など絶対にできない。
体を乗っ取られたかのように土下座し、「娘さんを僕に下さい」と言わざるをえなかった。
こうして、めでたく両親は結婚した。(めでたしめでたし)
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おばあちゃんに感謝を。
僕は、『一枚の写真』に写った、おばあちゃんしか知らない。
生まれたての僕を抱えた、笑顔の一枚である。
おばあちゃんは僕が生まれてすぐに、病気で亡くなった。
その声も僕は知らない。
それでも感謝を。
きっとはっきりとした性格の、明るい女性だったろう。
会ってみたかった。
そんなことも思ったが、こればっかりは仕方ない。
きっと、僕に「おばあちゃん!」と呼んで欲しかったに違いない。
残念ながら、それは叶わなかった。
その代わりというわけではないが、今はただただ、感謝したい。
おばあちゃんの『強制力』が無ければ、もしかしたら両親は付き合うことはできなかったかもしれない。
付き合っても、ぐずぐずしている父に、母が愛想を尽かして別れていたかもしれない。そんなことたくさんあるのではないだろうか。
おかげで僕が生まれることができた。
もしかすると、単にぐずぐずしている腑抜けた父にイライラしてキレただけかもしれない。ビンタするような気持ちで言っていたのかもしれない。
ただ、僕にとっては紛れも無く、最も初めの『人生を変えた一言』だった。
おばあちゃん。そんな言葉をありがとう。
そんな感じで、僕はこの世に生まれて来ることができた。
つづく
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