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【凡人の対談 9.「凡人のコミュニケ術」(3):「理解」と「共感」は、全然別の話である。】

これは、とある凡人が、様々な人間から、彼の経験談や考え方を、根掘り葉掘り聞かれまくるという、しょうもない話である。

〜とある怪しげな一室〜

「それでは、凡人さん、お話を再開していきましょう。」

「はいよろしくおねがいします。」

「最後は、飲食店の凡人店長であるあなたが、これまでに身につけてきたコミュニケーション術の三つ目、『理解力』についてお伺いします。」

(そんなに無理やり、『凡人』って言わなくて良くないっすか!?)

「あ、はい。よろしくお願いします。」

「それでは、簡単にあなたのおっしゃる、『理解力』というものの意味について教えてください。」

「はい。まぁシンプルに、『相手の気持ちや考え、価値観、立場などを理解すること』ですかね。」

「確かに。シンプルというか、そのままですね。」

「期待外れですいません!!」

「大丈夫です。ちなみにそれは、よく言われる『共感力』みたいなものとは何が違うのですか?」

「はい。じゃあたとえば、あなたは『アフリカのマサイ族の少年』に『共感』できますか?」

「え?どうでしょう?分かりません。」

「たとえば、そのマサイ族の少年が、

『ねえねえ!僕、昔はあの『大きな岩』のところくらいまでしか、視えなかったんだけど、今では、『もっと遠くにある大きな木』の近くにいる動物のことまで視えるようになったんだよ!!』

なんて喜んで言われたとき、どう思いますか?」

「正直『へー。』と思います。まぁ『かわいい補正』で、『すごいわね。』と声をかけるとは思いますが。」

「実際考えるとかなり凄いことなのに、なんでそんなに反応薄いんですか?」

「そうですねぇ。その『凄さ』は分かりますが、『気持ち』はよく分からないからですね。実際に体験したことありませんから。」

「そうなんです!!」

「人は、『同じ体験』をしていないと、本来『共感』など、できるはずがないわけですよ。」

「なるほど。その理論はわかります。それでは、『人と人とは本来分かり合えないもの』ということですか?」

「いえ、そうではありません。その言葉通り、『分かり合う』ためには、『理解し合えれば』それで良いんです。何も『共感』なんてする必要ないんです。」

「飲食店で店長をやっていると、本当にいろんなバックグラウンドがある人々とともに仕事をする必要があります。だからといって、てんでバラバラでは、店が成り立ちませんし、何をやるにも大変です。」

「それは、どの組織も似たようなところがあるかも知れませんね。」

「そうですね。実際、僕も今まで、『親父がヤクザ』とか『中卒』とか、『シングルマザーの子供』とか、『施設育ち』とか、『ゲイ』とか、本当にいろんな人間達と働いて来ました。」

「そもそも、飲食店の主力は『主婦さん』です。20代の若造が、『主婦さんに共感する』なんて、ほぼ不可能です。」

「他にも、就活なんかで『会社のビジョンに共感しました!』みたいな話を聞きますが、あれは基本です。大体が『共感』ではなく、『賛同』です。」

「確かに。それはそうですね。」

「ただ、『理解』することは、わりとできるのです。」

「たとえば、さっきの『マサイ族の少年』の例でいえば、『以前より遠くが見えるようになって嬉しい』という気持ちには、1ミリも共感できませんが、

『あぁ、彼は、できなかったことが、できるようになったから嬉しいのだな。』

『これで自分も狩りで役に立てるかもしれない。そう思って、それが嬉しいのだな。』

そう理解できれば、その気持ちもわかります。」

「なるほど。『共感』できなくても『理解』できれば、十分分かり合える。そういうことですね。」

「はい!さすがの『理解力』っす!」

「その通りです。そして、仕事をする上で、もっと言えば、『人間関係を構築する』上では、それで十分なんです。」

「逆に、『なんでもわかっている気になる』とか、『共感できないから受け入れられない』とか、そっちの方がやばいです。」

「なるほど。それはそうですね。」

「はい。人の『価値観』は『その人の経験』の積み重ねで創り上げられます。全く同じ経験でもしてこない限り、わからないのが前提です。」

『違う』ことが前提で、『ほとんど共感できない』ことが前提です。だからしっかりと、話して、聞いて、『理解する』んです。」

「そのためには、以前話した、『傾聴力』『言語化力』の二つも必要になってきます。」

「なるほど。そのように繋がっているわけですね。」

「はい。そうです。最初にも言いましたが、一部の才能ある人間が持つ、『カリスマ性』とやらを持っていない限り、僕が話した『傾聴力』『言語化力』『理解力』の三つのうち、どれか一つでも欠けると、色んな問題が出て来てしまうように思います。」

「『傾聴力』が無ければ、相手から信頼されにくい。結果、『自分の話も聞いてもらえない。』」

「『言語化力』が無ければ、『全然上手く伝わらない。』」

「『理解力』が無ければ、そもそも、『共感できる人以外、受け入れられない。』

「このことを知っていれば、今自分の周りに広がっている『現象面』だけ見れば、大体、原因がわかるのですよ。」

「なるほど。それは面白いですね。」

「昔の僕もそうでしたし、周りの人間にもこのような人はたくさんいたのですが、現象面だけ見て、相手のせいにする人が多いんです。」

「と、言いますと?」

「たとえば、

『自分の話を聞いてくれない。』⇨『話を聞かないあいつが悪い。』

『全然伝わらない。』⇨『理解力が無いあいつが悪い。』

『あいつは受け入れられない。』⇨『受け入れられない人間性を持っているあいつが悪い。』

こんなふうにです。」

「どれも違います。

『話を聞かないあいつが悪い。』⇨違います。あなたの『傾聴力』が低いのです。すなわち、普段、全然相手の話を聞いてないのです。

『理解力のないあいつが悪い。』⇨違います。あなたの『言語化力』が低いのです。すなわち、あなたの表現に問題があるのです。

『受け入れられない人間性を持っているあいつが悪い。』⇨違います。あなたの『理解力』が低いのです。『共感できない』=『受け入れられない』ではありません。」

「なるほど。少し、上から目線なのは気になりましたが、お話の内容は理解できます。」

「はいすいませんでした!!そして、やっぱりさすがの理解力です!!!」(敬礼)

「わかりました。凡人さんなりに色々考えて、学ばれて来たのですね。それがよくわかりました。」

「ありがとうございます!!」

「本日のお時間は以上です。本日は少し長かったですが、ありがとうございました。また機会があれば、お声かけしますので、よろしくお願いします。」

「はい!ありがとうございました!」












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