即熱中症コンボ:減塩冷房ヒートアイランド
本記事では,熱中症は
(a) 暑さだけが原因でなく複数の条件が重なって発症するが,
(b) 血流量の減少による急性腎不全という病態で共通しており,
(c) 舌で良い塩梅に調整した生理食塩水の補給で予防できること,
を述べる.
1章 熱中症 総論
本章では,メディアで喧伝されている熱中症対策に対する問題提起を行う.
1. 1 熱中症
日本の夏は暑い.
熱中症や夏バテが喧伝され始める遥か昔から,暑気あたりや夏負け,中暑,霍乱,暍病など,暑熱障害(heat disorders)を表す言葉は多く存在する.
ここでは,広義の熱中症:暑熱障害の総称について述べる.
1. 2 対策
メディアでは,エアコンの効いた屋内で水を飲みジッとしていることが,あたかも熱中症予防の必要十分条件のごとく語られている.
しかし,エアコンが使えない状況ではどうすれば良いのだろう?
技術頼みの対策は便利だが,外界や想定外に対して無力である※.
したがって,「自分の身は自分で守る」術を身に付けるべきだ.
※その問題も技術で解決するのでは?との疑問に対する補足:
(a) 環境を人間の都合のいいように改変すれば,環境保護論者の言う「異常気象」は激化する.これはエネルギの平衡状態を保つ自然の摂理だから,技術と災害とはいたちごっことなる.
(b) 資本主義の観点からも同じ結論に至る.資本主義の根幹は「終わりの複数性」:拡大再生産である.もし完全無欠の技術によりゼロ災の社会が実現すれば,災害や医療に回されていた資本の拡大再生産は停止してしまう.これは資本主義の精神に反するため禁則事項です.したがって資本主義社会が続く限り,みぞうゆう(←なぜか変換できない)の自然災害は無くならないだろう.
さて,メディアの主張とは裏腹に,
子供たちは炎天下で元気に走り回り,
青年たちは蒸し風呂の館内で部活に励み,
ご老体は 夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 農作業をこなしている.
この事実は,次の重要な示唆を与える:
高温多湿環境でも溌剌と運動する者の生活様式には,日本の夏を健康に乗り切るための知恵が詰まっているはずだ.
そこで本記事では,体を丈夫にして暑さに慣れる方針の対策を考える.
2章 減塩
2.1 腎臓
腎臓(kidney)は,泌尿器系の器官である.
脊椎を挟んで左右一対あり,ヒトではソラマメ形をしている.
腎臓の働きは,主に次の2つとされている.
血液を濾過して,尿として老廃物や尿毒性の代謝終末産物を排泄する.
体液の恒常性(ホメオスタシス)の維持:生命の維持に必須な物質の濃度を一定に保つ.
漂流した人が水なしで3週間生きたり,砂漠で遭難した人が水も食塩もなしに4日生きたり,逆に水や食塩を過剰に摂取しても健康を保てたりするのは,腎臓の自動調節機能のおかげだ.
これら腎機能は生命維持に直結するため,速やかに作用する.
腎臓の機能上の単位をネフロン(nephron)といい,腎小体とそれに続く尿細管とからなる.
成人のネフロン数は,かなりの個人差があるが両腎で 200 万個とされる.
機能ネフロン数がこの 25% まで減少しても元気に活動できると考えられており,相当な予備能力があることになる.
ネフロンを構成する腎小体は,糸球体という毛細血管網のかたまりをボーマン嚢が包み込んだ小球である.
ネフロンにおいて血液は,輸入細動脈から流入し,糸球体毛細血管で濾過され,輸出細動脈から流出する.
糸球体毛細血管は,半透膜すなわち濾過フィルターのはたらきをして,血液を濾過して原尿を生成する.
このメカニズムは限外濾過と呼ばれ,Fig. 1 に示すように,静水圧差と膠質浸透圧差との差によって駆動される.
Fig. 1 に示した流束 Jv を単一ネフロン糸球体濾過量(snGFR)と考えれば,snGFR を全ネフロンについて積分することで,腎機能の指標として用いられている糸球体濾過量(GFR)が求まる.
この濾過では,人体に必要な物質まで取り除かれてしまう.
そこで,原尿をボーマン嚢から出る尿細管において,ナトリウムイオン Na+ やカリウムイオン K+ などの多くの物質を,恒常性の維持に必要なだけ血液中に再吸収する.
たとえば,体液の塩分濃度が高くなれば尿細管における Na+ 再吸収率を下げ,逆に塩分濃度が低くなれば Na+ 再吸収率を上げる.
したがって,塩分が足りない場合,再吸収にかかる負担は増加すると考える.
糸球体毛細血管は,微細な構造に高い内圧がかかっているため,血圧の上昇により破壊しやすいと考えられている.
したがって,高血圧は機能ネフロン数を減少させ腎機能の低下をまねくので血圧は下げるべきだと,メディアおよび御用学者は主張する.
しかし実際には,全身の血圧の変動がそのまま糸球体内圧の変化として現れることはない.
これは,自己調節(autoregulation)とよばれる機能による.
全身の血圧が上昇すると,自己調節によって輸入細動脈が収縮し,糸球体内圧が一定に保たれるため,GFR は変動しない.
ところが,全身の血圧が 70 mmHg まで低下してしまうと自己調節系は機能しなくなり, 40 mmHg 以下で GFR ≒ 0 となることが知られている.
したがって,低血圧なら健康だと考えるのは誤りである.
それどころか,糸球体限外濾過は圧力差によって駆動されるのだから,低血圧はむしろ snGFR を維持するための自己調節にかかる負担を増加させる可能性がある.
さらに低血圧が進行すれば,腎臓は原尿を生成できなくなり,急性腎不全(急性腎障害)に至る.
尿が半日出ていないようなら危険な状態とされ,血中に窒素生成物が蓄積してもはや恒常性を維持できなくなっている.
急性腎不全の主因は,血圧の急激な低下にともなう腎血流量の減少による,GFR の異常な減少だと考えられている.
具体的には,脱水や出血,ショックなどである.
症状は,尿量の減少やむくみ,めまい,吐き気,疲労感,集中力の低下、食欲不振,吐き気,全身の痒み,倦怠感,心拍数の上昇など,広範に現れる.
ここで興味深いのは,脱水という原因も,めまいなどの症状も,熱中症と似かよっている点だ.
暑くても塩分・水分のバランスが保たれていれば活動できるが,クーラーの効いた室内でも塩分・水分のバランスが崩れれば熱中症で倒れてしまう.
すなわち,熱中症の原因 = 暑さ という認識は誤りだ.
そして,塩分・水分の恒常性を保つ働きをしているのが腎臓なのである.
それでもメディアが熱中症エコーチェンバーのなかで急性腎不全に触れないのは,次のような一石三鳥だからだろう.
熱中症の注意喚起をし続けることで,メディアの報道が善意によるとの先入観を植え付ける.
「水分補給」を前面に出す一方で,高血圧の恐怖報道により塩分への抵抗感を覚えさせることで,誤った対策へとミスリードし,病院の儲けを担保する.
年々増える熱中症は地球温暖化が原因だと信じ込ませ,SDGs や昆虫食を受けいれさせる.
以上の理由から,私は熱中症を急性腎不全のひとつと考える.
したがって,熱中症の予防とは,脱水による血流量の減少を防いで腎機能を維持することとといえよう.
ただし,腎臓による恒常性の維持機能のため,水だけを大量に飲んでも腎臓の負担が増えるだけで,脱水は改善しない.
そこで,熱中症対策としては水分と塩分とをセットで補給する必要がある.
その最も簡単な手段が,生理食塩水だ.
2.2 生理食塩水
生理食塩水とは,ヒトの体液と浸透圧の等しい,塩化ナトリウム濃度が 0.9w/v% の塩水である.
薬事法では処方薬扱いだが,自分で簡単に調製できる.
9 g/L すなわち 4.5 g の塩を入れて計 500 mL の塩水をつくればよい.
生理食塩水をつくるときは,500 mL の容器に塩を小さじ1弱入れたのち,水を満杯にする.
私はいつも,ナルゲンボトルという並々に注ぐと 500 mL になる容器を使っている.
軽量かつ頑丈で,シェイクしても漏れず,パッキンもなく洗いやすく,アウトドアにも食品保存にも使えるという万能ボトルで,人生の中でもトップクラスのベストバイだ.
ただし,体液の塩分濃度はその時の体の状態によって変化するので,生理食塩水の濃度も一定ではない.
たとえば,食後は塩分濃度が高くなっているため,生理食塩水を飲むと辛い.
逆に,水を飲みすぎたり,野菜や果物を塩もつけずに食いまくったりすると,塩分濃度が低くなっているため生理食塩水がおいしく,あるいは薄く感じる.
では,ちょうどいい生理食塩水をつくるにはどうすればいいのか?
それができるのは,自分の舌だけだ.
そもそも味覚は体調により変化する.
お腹ぺこーらぺこぺこなら何を食ってもうまく,満腹ならどんな好物でもうまくない.
とくに塩味は体液の塩分濃度に敏感で,同じ味付けでも薄く感じたり濃く感じたりする.
塩を舐めて,塩辛いときは塩分過多で,甘いときは塩分不足だ.
スイカ🍉に塩をかけると甘くなるのは,スイカに水分とカリウムとが多く含まれるため,塩も一緒に摂取せよという舌からのサインだろう.
料理にケチをつける前に,まず自分の体液の状態を疑うべきだ.
「いい塩梅」という言葉がある.
塩と梅酢とで料理の味付けをしていたことが語源とされ,現在は味加減だけでなく物事のぐあい全般に使われている.
すなわち,日本食で最も重視されてきたのが塩味なのだ.
甘味や苦味などは所詮オプションであり,好き嫌いも分かれる.
ところが,塩味は生命維持に直結する味覚なので,塩が食べられないという人はまずいない.
塩が甘いうちは食べて問題ない.
塩を摂り過ぎれば塩辛くなって喉が渇くので,水を飲めばよい.
摂取する水分量もカリウム量も日によって変わり,汗のかきか方も人によってバラバラなのに,一律 で 1 日何 g とかいう基準を設けても意味がないのだ.
皮膚がまんべんなく濡れるサラサラの汗ならば,塩分の喪失は少ないため,熱中症の危険は少ない.
子供が炎天下でも元気な理由といえよう.
ところが,玉のような汗と称されるような大粒のベタベタな汗には塩分が多く含まれる.
塩分を失った体は,体液の塩分濃度を一定に保つために,循環血液量を減らさざるを得ない.
この状態でいくら水を飲んでも,腎臓は体液の塩分濃度を一定に保とうと尿量を増やすので,水は体を素通りするだけだ.
結局,血流量の減少にともなって GFR も低下し,急性腎不全に至って倒れてしまう.
これが水分補給だけでは脱水が防げない理由であり,熱中症の基本的な原理と考える.
対して生理食塩水は,体液の塩分濃度を変えないため,水と違って脱水状態においても体内に吸収できる.
その結果,循環血液量を増加させ,脱水状態から回復することができる.
したがって,熱中症になる前に生理食塩水を飲む(あるいは同等の塩分を食事により摂取する)ことにより,熱中症は予防できる.
実際,私は普段から生理食塩水で水分補給している.
前提として,私はオートファジーのため,16 時間断食として知られる,夕食から次の食事までの時間を 16 時間以上あける(翌日の昼食や夕食までカロリーを摂取しない)という食生活をしている.
その上,真夏でもエアコンをつけないので,熱中症まっしぐらのはずだ.
しかし,生理食塩水を飲んでいるので,真夏でも熱中症にはならなくなった.
コロナ前,1日3食で冷房も使っていた頃は何度も熱中症になっていたので,今の方が健康を維持できていることになる.
しかも高血圧どころかむしろ低めなぐらいだ.
塩分を摂ると高血圧になるというのは,とんだ大嘘である.
基本的に,食前の水分補給は生理食塩水に,食後や喉が渇いたときの水分補給は水にしていれば,脱水や塩分過多の心配はない.
熱中症対策に朝食やエアコンを語る人もいるが,けっきょくは脱水を防げるか否かだ.
そのためには,頭であれこれ考えるよりも舌で塩味を見るほうが確実なのである.
生理食塩水は,体液の塩分濃度を変えずに水分補給をするという他にも,様々な用途がある便利な液体だ.
体液と等張なので,水のように「しみる」ことがなく,目や鼻,傷口の洗浄に用いられる.
また,ワクチンの希釈や臨床試験にも生理食塩水が用いられている.
ワクチンや薬を服用したと思い込むだけで実際に良い影響が出てしまうプラセボ効果は,よく知られている.
一方で,ワクチンだと思い込むだけで副反応が出てしまうノセボ効果も実証されている.
これらは,頭で信じたことがそのまま体の変化として現れる上下型1種体癖に特有の現象だと考える.
上下型の濃い人ほど,ワクチンの副反応が強く現れるのではないかと思う.
ここで重要なのは,みんなで接種して人類を絶滅の危機から救ったと神話に語られる新コロワクチン様が,実際にはただの生理食塩水ないしは生食で希釈した栄養注射だった可能性も否定できないということだ.
だからこそ「ワクチンを打つな!」との主張は逆効果でしかなく,ワクチンを信じている人には本当にワクチンが必要なのである.
それが健康のためか覚醒のためかはさておき……
閑話休題,熱中症で倒れて病院に運ばれても,対症療法として生理食塩水を点滴されるだけだ.
それなら,あらかじめ生理食塩水を飲んでおけばよかろう.
しかし,メディアは塩分・水分補給だと言う一方で,高血圧予防のため減塩しろと言う.
この矛盾のため,頭でっかちな人たちは夏でも塩を摂ることに抵抗を感じて,水ばかり飲んで脱水になってしまう.
2.3 高血圧と降圧剤
腎臓に関する現代病(生活習慣病)として代表的なのが,高血圧や慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)だ.
現代医学の主張は次のとおり.
塩分を摂取すると体液量も増加するため血圧が上昇する.
この高血圧状態は,動脈硬化や CKD を引き起こす.
したがって,健康人においても塩分は控えるべきである.
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」では,推奨される1日の塩分量は男性で 7.5 g 未満,女性で 6.5 g 未満で,高血圧や CKD の重症化を予防するための塩分量は男女共に1日 6 g 未満としている.
WHO の基準はさらに厳しく,1日 5 g 未満だ.
下限値が設定されていないため,これを信じれば塩分は摂取しないほうが良いということになる.
もちろん,それは誤りだ.
塩化ナトリウムは生命の維持に必須の物質だが,生体内でつくられるわけではないので,汗や尿として排泄された分は飲食により補う必要がある.
Na+ と K+ とは,細胞内外で対となって浸透圧のバランスを保つ電解質であり,その濃度は腎臓によって厳密に管理されている.
このバランスにより,細胞内外での物質のやりとりが可能となる.
細胞外液は,水に塩化ナトリウムをはじめとする様々な物質が溶解/分散した液体である.
この 0.9w/v% の塩水は,生命誕生時の海水を体内に持ち込んだものと考えられており,内部環境とも呼ばれる.
全ての細胞において,ナトリウム-カリウムイオンポンプとよばれる膜貫通タンパク質がアデノシン三リン酸 ATP を消費して,細胞外液の主要な陽イオンである Na+ と,細胞内液の主要な陽イオンである K+ とのバランスを保っている.
カリウムは,野菜や果物に多く含まれる.
カフェインと同様に利尿作用があるが,これは塩味をつけずに食べた場合だ.
減塩だといって塩も振らずに野菜や果物を多く摂ると,水分量と K+ 濃度とが上がって Na+ 濃度が下がる.
そこで腎臓は恒常性を保つため,尿量を増やして K+ を排泄する.
すなわち GFR が増加するので,腎糸球体の濾過にかかる負荷は大きくなる.
したがって,CKD 患者に対しては塩分制限と同時にカリウム制限が課される.
しかし,野菜や果物には塩をつけて食べることで,このデメリットを回避できる.
野菜に塩味をつけると美味しく,果物に軽く塩を振るとより甘くなるのは,体がその恩恵を教えてくれているからだろう.
重要なのはカリウムや塩の量ではなく濃度なので,水分と K+ と Na+ とがバランスを保ちながら同時に増える分には,問題ない.
塩分が高血圧を招くという軍産医複合体の主張は,塩分の摂取量だけを切り取ったミスリードであり,ナトリウムとカリウムとのバランスを無視している.
腎機能が低下しているからといって塩分とカリウムとを制限して,ガンになるまで穀物とサプリメントでも食ってろとでも言うのだろうか?
そこで,高血圧患者?には降圧剤が処方される.
降圧剤治療は,一時的に血管を広げたり血流量を減らしたりして血圧を下げる対症療法だ.
1日で効果が切れるので,毎日飲み続ける必要がある.
それでも「降圧剤は科学的に安全性が証明されているから大丈夫だ」という.
そう信じるのは勝手だが,死ぬまでフェイクヘルスに高いお金を払い続けて,本当に大丈夫なのだろうか?
そもそも高血圧を病気として扱っていることがおかしい.
高血圧の基準値もだんだん引き下げられており,高血圧患者はどんどん増えている.
「原因は日本人の塩分摂りすぎだ」と断定されているにも関わらず日本人が長寿だというのなら,それはもはや高血圧ではなく中血圧,あるいは高血圧は体に悪いということ自体が嘘ではないのか.
味噌汁,梅干し,漬物,海藻,魚の塩焼き,醤油と,和食は塩味ばかりだ.
これは,夏の暑さや冬の寒さを乗り切るうえで理にかなっている.
夏の暑さに対しては,これまで述べてきたように,脱水を防いで腎機能を維持する.
冬の寒さに対しては,体液量の多さが保温性に直結するため,塩分は体温の維持に欠かせない.
現代人よりも直観にしたがって生きてきた先人の知恵といえよう.
このような減塩の対極にある食事をしていても,日本人は世界的に見てもかなり健康長寿だ.
加齢とともに体は弾性を失い,塑性体となって死に至る.
風邪をひくと弾性が回復するのだが,歳をとると風邪もひきにくくなってくる.
血管も,弾性があれば血流量の変動に対して柔軟に径を増減できるため,血圧も自動調節される.
ところが,弾性を失って硬化した血管は,血流量が増加しても径が広がりにくいため,血圧が上昇することになる.
加齢による動脈硬化は,老化にともなう自然の変化であり,避けるべきことではない.
それを薬でむりやり若作りすれば,そのしわ寄せは副作用として別の部分に現れる.
薬が望ましい作用を発揮すれば,作用反作用の法則と同様に,望ましくない副作用が必ずセットで生じる.
薬や治療に頼らず,自らの体に備わった自然の機能を最大限に発揮して,健康を維持して全力で生きるというのが野口整体だ.
この全生は,私のポリシーはね…水タイプポケモンで攻めて攻めて…攻めまくることよ!タツツツツツツツでもある.
3章 冷房
エアコンは,生理的作用を与えることを目的とした機械である.
本章では,冷房の生理的副作用について述べる.
3.1 適応
動物は,環境に適応して体の機能・形態を変えることで生存してきた.
ところが独り人間だけは,環境を自分に適応させることで生きている.
人間もまた自然の動物である以上,適応の能力を有していることには変わりない.
そのため改善された環境に住めば,自動的にその環境へ適応する.
睡眠薬を服していれば,だんだん用量を増やさねば眠れなくなる.
サプリメントを常食していれば,さらに精製されたエッセンスからでないと栄養を吸収できなくなる.
同様に,ズーッと冷房の効いた室内で過ごしていれば,その冷房の効いた環境に適応し,暑さへの耐性を失う.
しかも,涼しければ大丈夫だと油断して水分も塩分も摂らないので,外に出た途端に熱中症で倒れてしまうのも当然だ.
冬を思い出せば,エアコンによって除湿された室内では,汗をかかずとも呼気や皮膚から水分がどんどん失われて体が乾くのは自明である.
真夏に大災害が起こったとき,冷房に適応した人間の体は,電力不足の環境で生きられるのだろうか?
そんな状況に陥れば,人々は生命を維持するため川へと向かうはずだ.
いくら技術が進歩し,環境を改変ようと,我々は自然の摂理の制約の中で生きており,野生の動物としての本能からは逃れられない.
3.2 技術の進歩と体の萎縮
技術の進歩は,人間の生活環境を劇的に改善し,外界ではたちまち死んでしまうようなヘナヘナな体を持つ人間を繁殖させた.
改善は次の改善の必要を生み,それを果たせばまた次の改善が必要となる.
忙しいことこの上ない.まるで資本主義社会の縮図である.
「俺たちの若い頃は……」という年寄りの自分語りは老害として嫌われるが,実際,昔よりも人間が貧弱になっていることは事実だ.
全力を出し切ってぐっすり眠り,何を食べても栄養をどしどし吸収して旨く,風雨寒暑を物ともせぬ体を丈夫というのだから,環境改善によって生ずる変化は萎縮である.
体の実質が萎縮すれば,それまで何ともなかったものが有害と化す.
恵の雨も,爽やかな風も,燦々たる日光も,人間の敵となる.
さらに守り庇い補う技術が必要となり,改善すればいよいよ萎縮する.
しかし,人間の適応能力が衰えたのではない.
自らの有する適応能力によって萎縮に向かったのだ.
人間もまた自然の働きによって生きているのである.
3.3 汗の内攻
汗が出るような暑さが続く間は,汗の始末を考えなくて良い.
汗と共に疲れも抜ける.夏に働ける理由だ.
しかし,汗が出るが風は冷たいと言う時期になると,急に汗の始末が必要になる.
それは,出た汗が引っ込んでしまうからだ.
汗が引っ込むと,皮膚が鈍り,筋が硬くなる.
この汗の内攻は,夏風邪や下痢,神経痛,ダル重に化ける.
今や冷房のおかげで,このような秋の入口の心配を,7月からしなければならなくなった.
冷えによる不調は,朝起きて 3 min 脚湯し,擦るようによく拭けば治る.
脚湯の際は,水を1杯飲み,入浴温度 +2℃(42℃〜45℃)の湯に膝が隠れるまで浸ける.
足の第3-第4蹠骨間が狭まっており,押して過敏痛がある場合は,脚の冷えである.そこを押してから脚湯するとさらに効果がある.
汗をかいたら,背に涼風を長く受けないことが肝心である.
涼風でも,前から受ける分には警戒しないで良い.
湯上がりの汗は扇風機で乾かさず,冷房で冷える前に汗を拭くこと.
4章 ヒートアイランド
前章では,生理的な観点から,冷房の副作用について述べた.
本章では,機械的な観点から,冷房が環境に与える悪影響を考えよう.
冷房の仕組みを理解する上で,まず熱とは何かという疑問を解消しておく必要があるだろう.
4.1 冷凍サイクル
熱(heat)は温度差によって駆動されるエネルギ伝達形式である.
平衡状態を規定する量:状態量 の温度(temperature)やエネルギ(energy,独:Energie)とは区別される.
温度差があればどこでも熱は流れるが,温度差のないところに熱は存在しない.
熱力学(thermodynamics)では,熱を対象に,巨視的な立場から見た物体内部の状態変化を取り扱う.
Fig. 2 に示すような,サイクル(状態)変化を行う 閉じた系:外界との間に物質の出入りがない系 を考える.
この系は,〈周囲〉から受ける正味の仕事$${L}$$を消費して,低温熱源(低温の周囲)から熱$${Q_L}$$を汲み上げ,高温熱源に$${Q_H = L + Q_L}$$を与える.
このように,熱を低温側から高温側へと運ぶサイクル変化を冷凍サイクル(熱ポンプサイクル)という.
冷凍サイクルには,$${Q_L}$$と$${Q_H}$$とのどちらを出力として利用するかによって,次の2通りの表現がある.
$${Q_L}$$を利用して低温熱源の温度を下げる装置:冷凍機(refrigerator)
例)家庭用冷房,冷蔵庫$${Q_H}$$を利用して高温熱源の温度を上げる装置:ヒートポンプ(heat pump,熱ポンプ)
例)家庭用暖房,ヒートポンプ給湯器
エアコンにおいては,冷媒の流れ方向を逆転することで,冷房と暖房とを切り替えている.
〈周囲〉から見ると,低温熱源(屋内)に対して冷房を作用すれば,その反作用として高温熱源(屋外)には暖房が働く.
すなわち人間は,部屋を冷やす代わりに外界を暖め,その余分に暖まった外気をして「地球温暖化」を嘆き,さらにその「地球温暖化」のために熱中症が増えたと言って冷房を使っている.
見上げた知性である.
4.2 エントロピ
冷房の快適さの裏には,望まない妊娠排熱があった.
では,なぜ熱$${Q_H}$$を別のエネルギに変換することなく,高温熱源に捨ててしまうのだろうか?
その理由を理解するためには,熱力学の第2法則を知る必要がある.
これは,どんな状態変化が非可逆か・不可能かを規定した経験則であり,次の2種類の原理によって表現される.
(a) クラウジウスの原理
表現1:高温熱源から低温熱源へ熱が移動するのは非可逆である.
表現2:低温熱源から高温熱源へ熱が自身で移動するのは不可能である.
(b) トムソンの原理
表現1:仕事の全てを熱に変えるのは非可逆である.
表現2:熱の全てを仕事に変えるのは不可能である.
表現1と表現2とは全く同じことであり,(a) と (b) ともまた同等である.
熱力学の第2法則を数式で表現すれば,式 (1) となる.
$$
\begin{align}
\frac{\mathrm{d'}Q}{T^{(e)}} &\lesseqqgtr \mathrm{d}S, \\
\int_{1}^{2}\frac{\mathrm{d'}Q}{T^{(e)}} &\lesseqqgtr (S_2 - S_1). \tag{1}
\end{align}
$$
ここで,$${Q}$$は状態変化の間に周囲から系に流入した熱,$${T^{(e)}}$$は周囲の温度,$${S}$$はエントロピ(entropy)である;また,状態量であるエントロピの微小変化量を$${\mathrm{d}}$$で,エネルギに変換される量である熱の微小作用量を$${\mathrm{d'}}$$で表している.
式 (1) において,
$${<}$$が成立すれば,非可逆
$${=}$$が成立すれば,可逆
$${>}$$が成立すれば,不可能
な状態変化である.
断熱系における状態変化では,周囲と熱交換をしない:$${\mathrm{d'}Q=0}$$となるので,式 (1) は,
非可逆な状態変化のとき,$${\mathrm{d}S>0}$$
可逆な状態変化のとき,$${\mathrm{d}S=0}$$
となる.
自然界の状態変化は,すべて非可逆変化だと考えられている.
したがって,断熱系内の物質は,必ずエントロピの大きな平衡状態に向かって状態変化を行い,系が新しい平衡状態に落ち着いたときには,その系のエントロピは以前の平衡状態におけるエントロピより大きくなっている.
すなわち断熱系は,現在よりエントロピの小さな過去の状態には戻ることができない.
これをエントロピ増大の法則と称する.
ここで,(b) トムソンの原理 の表現2に立ち戻ると,熱の全てを仕事に変えるのが不可能である理由は,断熱系全体のエントロピが必ず増大するためだとわかる.
一方で,電気はエントロピ増大の制約を受けないため,その全てを仕事に変換することができる.
したがって,電気を熱に変換すると,エネルギの量は変わらないが(保存則),その価値が がくっと さがった!
種々のエネルギと比較して,熱は最も質が低いと言われる所以である.
熱になっても,熱源が高温のうちは再利用できるのだが,繰り返し利用するうちカスケード式に温度は下がっていく.
熱は高温側から低温側に移動するので,温度差が無くなれば利用価値を失う.
こうして,宇宙全体が絶対零度に近づいて温度勾配が 0 となり,エントロピが最大に達した宇宙の最終状態を熱的死(heat death)とよぶ.
"熱的死が宇宙の宿命ならば,その旅路こそが本質だ"
そんなわけで熱力学は,エンジンの効率評価だけでなく,エネルギ有効利用の方法論とも捉えられている.
しかし,それは資本主義のエゴにすぎない.
エントロピ増大の法則は,宇宙全体を断熱系と仮定した場合にのみ成立する.
一方で地球は,宇宙との間でエネルギと質量とのやりとりがある開いた系である.
地球だけのエネルギ収支を考えても,環境少女グレタ🤡のように非現実的な結論に至るだけだ.
全宇宙のエネルギ(若き天才物理学者:Max Laughan はこれを神と定義)にとって,「地球にやさしい」という謳い文句に何か意味があったのかな?
4.3 摩擦
エアコンは,ファンや圧縮機で回転運動を行う機械である.
機械の運動にともない,摺動部の表面では摩擦が生じ,運動エネルギの一部が熱として散逸する.
摩擦損失を抑えるために,機械系には潤滑剤や軸受といった機械要素が組み込まれる.
しかし,相対運動する2物体が流体膜で完全に離れていて,固体同士の接触がない流体潤滑でさえ,流体の粘度に依存した流体摩擦が生じる.
したがって,機械が運動すれば,必ず熱は流れる.
特に,機械の性能向上にともなう高速化は,摺動部の高温化を招くため,摩擦熱は大きな問題となる.
摩擦の制御によりエネルギ損失を抑制する方法論がトライボロジーである.
トライボロジーという言葉自体は,1966 年にJOST レポートで定義された.
しかし潤滑剤は,遅くとも紀元前 2400 年には古代エジプトで使用されていた様子が記録されている.
空気があるだけで摩擦が生じるのだから,機械の運動と摩擦とは切っても切り離せない.
しかし,潤滑剤や軸受により摩擦を減らすことは,摩擦熱だけでなく,騒音や振動といった不快の原因を抑えることにもつながる.
4.4 舗装と建造物
本章では,冷房の排熱について次のことを述べた.
$${Q_H = 0}$$となる冷凍サイクルが実現不可能なため,冷房を運転すれば必ず排熱が生じる.
断熱系においてエントロピは必ず増大するという制約により,排熱をエネルギとして再利用するのは困難である.
冷房を運転すれば回転運動が生じ,その摩擦により熱が流れる.
上記の理由から,冷房使用量の増加に応じて,外界への排熱も増加する.
それでも,(1) 蒸発潜熱(気化熱)として消費されたり,(2) 風で拡散したりすれば良いのだが,特に都市部では (1) 舗装と (2) 建造物とにより,このような自然現象が妨げられるため,気温が上昇しやすい.
これをヒートアイランドという.
この仕組みは下記のように説明されている.
このように,機械の排熱と人工被覆域(舗装と建造物)との相互作用により,都市部では気温が上昇しやすい.
植物に比べてアスファルトなどは蓄熱性が高いため,日中に熱を受け取って,夜間にこれを大気中に与える.
建物によって風のとおりも悪いため,熱帯夜が続くのも頷ける.
メディアはこれに「地球温暖化」という理屈をくっつけて,二酸化炭素の排出量を減らせば気温が下がると喧伝している.
しかしこれは,観測された平均気温の上昇と二酸化炭素濃度の上昇とをこじつけた仮説であって,本当に二酸化炭素のせいかは不明である.
“気候変動は現実であり、それと人類はほとんど関係ない。私たちは聖書の時代に生きている。このような出来事が起こる地質学的な理由は、磁北がかなり速く移動していることと関係があるのではないだろうか。”
しかも,二酸化炭素が持つとされている温室効果は,ヒートアイランドと比べて桁違いに小さい.
二酸化炭素の排出量を減らせば気温が下がるという〈常識〉は,世にも奇妙な物語だ.
田舎も他人事ではない.
野山はどんどんソーラーパネルへと置き換わり,野生動物たちは住処と食物とを求めて人里へおりてきている.
植物のもつ炭素固定という至高の能力を無視している時点で,二酸化炭素を減らす気など毛頭ない.
そうして民間が不毛な対策に追われている間に,「再生可能エネルギー」という耳触りのいい言葉を隠れ蓑に太陽光利権を享受している環境活動家がいる.
環境問題や SDGs は,資本主義のピラミッドを加速させる一方だ.
アスファルトなどの蓄熱材料によってヒートアイランド化が進むと,冷房で室温を下げようとして余計に周囲を暖めてしまう.
しかし,冬はこの逆になるのだから,このイタチごっこの結果が地球温暖化だというのは暴論だ.
太古より気象が大きく変動してきたからこそ現代の我々があるのに,なぜ地球温暖化は人間(しかも,社会を運営する大金持ちではなく,エネルギを浪費する余裕もない庶民)だけのせいだと断定できるのだろうか?
資本主義においては,資本を増やすことこそが善なのである.
さて,本記事では,熱中症対策から地球温暖化まで,多くの問題提起を行ってきた.
読者諸賢が,自身の体に興味を持ち,自由な思考(Free thought),思考の自由(Freedom of Thought)を取り戻すきっかけとなれば幸いだ.
夏本番はまだまだ先だが,いい塩梅の生理食塩水を飲んで,元気溌剌と過ごそう.
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