第弍話「梅干し、伝承」
梅雨明けし,今年も無事に梅干しができあがった.
本記事では,梅干しのつくりかたについて述べる.
前回:梅の花について.
0. 梅干し
古く中国から渡来したウメは,日本独自の保存食・陣中食として梅干しに加工されるようになったと考えられている.
遅くとも江戸時代には,現在と同じ製法が確立されていた.
ご飯の上に梅干しを乗せた日の丸弁当🇯🇵は,まさに日本を象徴する料理だ.
梅はクエン酸が豊富なため,とっても酸っぱい.
梅干しを食べたことがある人なら,見たり想像したりするだけでよだれが出てくるはずだ.
クエン酸は,重曹をかけることで中和され,酸味のない梅の炭酸ジュースになる.
夏なら,ブルーベリーやパイナップルでも同じことができる.
健康に気をつけている人やスッパイマンものが苦手な人は,クエン酸に重曹をかけてシュワシュワにして食べるといい.
梅干しのつくりかたは,調べればいくらでも出てくるが,地域や目的によって変わる.
下記に参考文献を示す.
梅干しづくりは,次の3ステップに大別される.
梅もぎ(梅雨入り後)
梅漬け(梅雨)
土用干し(梅雨明け後)
以下に,我が家の梅干しづくりの一連の流れを示す.
1. 梅もぎ
梅干しづくりは,まず梅をもぐことから始まる.
時期なら生の梅も売っていると思うが,梅干しにするのに高価なものは必要ないだろう.
梅雨入り後,梅の果実が緑から黄色に変わったら,梅もぎの好機到来!
梅もぎ→一晩浸水→梅漬け の流れを,2日のうちに滞りなく行う.
梅干しにする果実は,完熟して赤く色づいている必要はない.
完熟してやわらかくなりすぎると,梅漬けにしているうちに皮が破れてしまって,干すときに実が乾燥したり張り付いたりする.
したがって,黄色もしくは青梅のうちにもいでしまう.
青梅には,体内で分解して有毒の青酸塩を生ずるアミグダリンが含まれる.
「梅は食うとも核(さね)食うな中に天神寝てござる」ということわざがあるように,生梅の種には毒があるから食べてはいけない.
しかし,梅漬けにすることでアミグダリンは分解されるため,梅干しに毒性はない.
また,黄色くなった梅は生食できる.
もっとも,甘くないプラムといった感じなので,あまり一般的ではない.
もちろん好きな人もいるが.
2. 梅漬け
梅の準備ができたら,梅雨の間,梅をしおづけする.
用意したものは下記:
梅:20 kg
塩:1.9 kg
アルコール
ビニール袋
キッチンペーパー
漬物容器
落し蓋
重し
塩の分量は,梅の 10%〜20% とされる.
塩は少ないほど良いと信じてしまっている現代人も多いが,カビ防止のため減塩は厳禁だ.
そんなに減塩がしたければ,梅干しなど食べなくてよい.
特に夏は脱水が死に直結するので,健康診断の結果にしか現れない血圧を下げるために,命懸けで減塩するなどというバカなマネはよせ!
まず容器を焼酎などでアルコール消毒し,必要に応じてビニール袋を入れる.
次に,キッチンペーパーなどで梅の水気を拭き取り,塩と梅とを層状に交互に入れる.
塩は上に最も多くかける.
最後に,落し蓋をして重しをのせる.
うちでは水を入れたペットボトルで代用したが,漬物石があるならその方がいいだろう.
はじめは密閉せず,通気性のある紙などで口を覆って縛る.
何日かして,白梅酢が上がってきたら,上下の梅を入れ替える.
梅が浮かない程度に重しを軽くし,容器に蓋をして冷暗所に保管する.
梅が浮いていたり塩が少なかったりすると,この間にカビが発生してしまう.
梅を鮮やかな赤に色付けたければ,白梅酢が完全に上がる頃に赤紫蘇を入れる.
サムネの左右で色が違うのは,左がウメ本来の黄色で,右は赤紫蘇によって赤く染色しているためだ.
蓋をしたら,梅雨が明けるまでそのまま漬けおく.
3. 土用干し
梅雨前線の北上にともなう梅雨明けは,文字どおり梅を干す合図だ.
もちろん,梅雨明け宣言が出るなり直ちに干さなければならないわけではなく,にほんばれが4日つづく日を狙う必要がある.
去年はスッキリしない梅雨明けで,干している間に雨に降られてしまった.
一方,今年は梅雨明けのかなり前から晴れっぱなしで,梅干しについては心配無用だった.
今年の梅雨は晴れ間が多かったが,6月の平均降水量は平年以上だったようだ.
干すとなったら,梅酢から梅をとり出してザルに並べる.
もちろん梅酢も廃棄物ではないので,無駄にしないよう,よく水気を切ってから干そう.
うちでは網戸をザルとして利用している.
梅は三日三晩,たまにひっくり返しながら干し続ける.
朝は夜露で濡れてしまうが,晴れなら夜間に取り込まなくてもよい.
ただし,雨が降ったらすぐに取り込んだり覆ったりできるようにしておく.
今年はかんかん照りだったので,梅も塩をふいて乾いた.
しっとりしていても,日光消毒された高塩分濃度の梅干しが食べられなくなることはまずない.
土用干しによって,驚異的な保存性を獲得した梅干しは,倉庫や床下にしまっておけば,まず腐らない.
だんだん黒変していき,ついには塩の結晶にのまれた無惨な姿になってしまうが,何十年前,残っていれば百年以上前の梅干しだって食べられる.
上の液体は,梅漬けの副産物である白梅酢だ.
赤紫蘇で漬けたら,鮮やかなピンク色の赤梅酢ができる.
梅酢は超高塩分濃度の原液なので,カルピスのように水で薄めて飲んだり,調味料として使ったりする.
梅酢(梅干し)+ 重曹 + 水 でいい塩梅に調製した炭酸ジュースは,熱中症対策の生理食塩水としても優秀だ.
梅酢が同時にできるという点でも,梅干しを手づくりする価値がある.
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