盗んだバイクで走り出せない

言われてみると“羽目を外す”と呼ばれることをしたことがない

ニュースでも知り合いでも身近な友人でも
人は最も簡単に羽目を外すので、これは考えているほど難しいことではなく自分にももしかしたら出来ることなのではないかという風に考えたことがある

そんな訳でアムステルダムで開催されるアホみたいに大きな2000人規模のインターナショナルハロウィンパーティーに行くことにしてみた

人がごった返していて、結局会場に入れたのは
午前1時20分のことだった

並んでいる間、
オーバードーズになった若者を担ぐセキュリティの警察と数回すれ違った
それは私にとってかなりショッキングな光景であったが周りの友人は特別驚くこともなく、あ〜やってんな〜くらいの視線で一瞬目をやる程度であった

やっと会場に入る
なんとなくそんな予感はしていたがあっという間に友達とは逸れてしまった
まあ仕方がない
シラフのままで居られるような場所ではなかったので、私はとりあえずお酒を買った

少しずつ飲むつもりだったがあまりの人間の数
このまま手に持っていたら誰かとぶつかって零すなと思ったのでさっと飲み干した

ホテルでどうぞ!なことが当たり前に繰り広げられるこの会場でわたしは10分に一度ちゃんとパスポートがあるかどうかを確認していたほど冷静であった

あまりの優等生ぶりに少し疲れを覚えた

案の定周りと同じ温度で会場にいられるような私ではなかったのでひとりで帰ろうかと試みたが終電はとうに過ぎていた

バスはあれども独りで帰るなんてしていい夜ではないことくらい流石の私も理解できる治安であった

どうすっかな〜とぼーっとしながらふと考える

自分からパーティーに来たくせにそこにいる人たちを冷めた目で見るなんてこの場合、モラルがないのは私の方ではないか…?

という訳で
申し込まれたのならそのランダムガイとワルツもどきな踊りをしてみたりした

こういう時は日頃のストレス全部忘れて楽しんじゃう
というのはヒトの自然なメカニズムになっているものだと思っていたのに

その間すら私の中のもう一人の私が副音声で中継していた
(この男の人は数時間後には私の顔も覚えていないんだな)
(そうか、話に詰まったらこうやってくるっと回転させて時間を稼ぐのか〜)

結局ぬるっとそのフロアを抜けテキトーな場所で友人たちが帰る気になるのを待っていた、帰宅したのは朝の5時過ぎだった

結論から言うと
全然楽しくなかった
いや、わたしは楽しめる人ではなかった
そして良い経験であった

AM6:08 スキンケアだけして(偉過ぎ)ベッドに篭りネットフリックスで風立ちぬを観る

*ヨーロッパのネットフリックスはジブリ見放題

まるでついさっきまであのパーティーに居た自分を誤魔化すかのようで、恥ずかしいと思った

恥ずかしいと思ってしまったことにも恥ずかしいと思った

鼓膜を虐めるような騒音か、野良猫のくしゃみすら届いてくる程の静寂か

その二択しかない生活に

わたしは少し、吐き気がしていた


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