きわみ

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最近の記事

日食の春

日の入りまでのあと数分 なんでもいいから文を書いてみようと思う 外にでたときまだオレンジ色が残っているなら良い カネコアヤノの抱擁を聴いていて 変に苦しくなった 裸足で走る人の横でおしゃれな靴紐を探しているような 心臓が薄く全身に波打つ またゆっくり走ろうと思う

    • 大事にしてると思ってた

      気に入っているゆえにあまり着ない服 わたしのクローゼットにはそういうものがいくつかある、理由は自分でもよく分からない。 もう随分前に札幌の古着屋さんで一目惚れして買ったジャケット、そのお店がもう閉店していることを知った。 少しだけ寂しい その場でタグを切ってもらって得意げに羽織りそのまま食べに行ったスープカレー パソコンが苦手な人が作ったのだと分かるようなチープなメニュー表だった、悔しいくらい美味しかったその店の名前ももう覚えていない。 少しだけ寂しい サンフラ

      • "音楽を聴かない"をする

        昨日一昨日とキャンプに行っていて電波の届かないところで時間を過ごした。すごく良かった。 "スマホを見ない"は定期的にしたくなるし、必要だと思って自主的にするのだけど、この二日間は音楽も聴かなかった。 日常生活ではその場を立ち去るときはまずイヤホンを挿す、というくらい隙間なく何かを聴いている。音楽が好きだから、が前提にあるとは言え、時に無意識?惰性?なんかしら聴こーでとりあえず再生ボタンを、みたいなのがだいぶあるのかも、とキャンプにきて気づいた。 湖の岸辺に波が届いて 風

        • PERFECT DAYSで思い出したこと

          PERFECT DAYS (2023) カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞 観た、とても良かった。久しぶりに出会えた感じ。役所さん、、あっぱれ。 映画の感想を書こうとnoteを開いたけれど、思い出した話があるので今日はそのお話しにしようかな。 祖父の葬式に出席して、初めて骨上げを経験したとき。 *骨上げ: 火葬後に遺族で遺骨を拾い、骨壷に収めること 人にはすごく沢山の骨があるからほとんどの遺骨は係の方が説明を加えながら綺麗に壺に収めてくださった。 "亡くなった方の骨を

          わたしの3.11

          あの時わたしは確か小学3年生で教室の一番後ろの席に座っていた。ちょうど帰りの会の時間だった。水槽の水が大きく揺れて、クラスで飼っていためだかが外へ出てしまったのですごく慌てた。 家は小学校から徒歩5分のところにあるタワーマンションで、地上から建物が横に波打つのが分かった。そのままジェンガのように壊れてしまうのではないかと思った。 登校班、同じマンションに住む子たちと迎えに来れる大人に囲まれての集団下校だったと思う。 当たり前にエレベーターは停止していたのでみんなでロビー

          わたしの3.11

          じゃない方のりんご

          随分前にりんごを買った 絵文字のりんごみたいなりんごを選んだ 🍎本当にこういうの 結局あまり甘くなかったのでジャムにした アメリカのりんごは甘くないなあと思った それから何となくあまりりんごを買わなくなっていた いつも買うキャベツは軽さと芯の形を確認して 安いと必ず買うアボカドは表面の凹凸とサイズを確認して 選抜をくぐり抜けた子をお迎えする この間、なんか食べたくなって久しぶりにりんごを買った 赤というよりはピンクで、ピンクというには黄色い面積が多いマーブル模様、そ

          じゃない方のりんご

          ロールキャベツの余裕

          お花屋さんに行くだとか祖父母に連絡をするとか可愛い靴下を買うとかロールキャベツを作るとか、そういうことって心に余裕がないとできないことだな 湯がいて綺麗なみどりになったキャベツの葉でお肉を包みながら考えていた でも、うーーん、なんか、そうなのかな 珈琲を飲むのにお豆から挽いているけど ドライフラワーを飾っているけど 今日はロールキャベツを作るけど これってもしかして、焦らないための演出なんだろうか 余裕があるからするというより、余裕を持てるように自分を落ち着かせてい

          ロールキャベツの余裕

          偶に出会えるような人

          心理学専攻していたけどなんかあんましっくりこなくてさ。退学してからはこの古着屋で働き始めて新しい古着買い付けに行ったり海外の古着屋に売ったり、旅も好きだから時間あれば出るね、そんな感じかな 逆光の中、わたしに向けてそう話す店員のシルエットを前に あ、偶に出会えるタイプの人だ、偶にしか出会えないタイプの人だ と思った。Tシャツラックを漁る手を止めてその人と向き合って話す体制をとる。 開けてみないとやってるのかやってないのか分からないような入り口をしている古着屋だけれどあ

          偶に出会えるような人

          シッティングバレーを知って

          いつも行くジムではシッティングバレーのアスリートチームが練習試合をしていることがある 今調べてみて初めてそれをシッティングバレーと呼ぶことを知った 文字通り、座ったままお尻を床につけて戦うバレーのこと 一階が体育館、二階はトレーニング器具やランニングスペースになっていて、吹き抜けなので上からそのシッティングバレーの試合を覗けたりする 先天的に車椅子で生活をしている人 後天的に足が不自由になった人 どんな過去があって今ここで試合をしている彼らがいるのだろうと ジムでバイト

          シッティングバレーを知って

          なんだか好きなことば

          まつ毛 よそ見 木陰 助手席 そばかす 雨宿り 白い靴下 風 栞 こぐま座 心模様 いただきます 希望的観測 あとがき 耳たぶ 猫背 ピンクソルト 心なしか 香ばしい お便り 菜種油 おやすみ お迎え 畳 悟る ピーナツバター

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          産んでごめん

          産んでごめんと言われたことがある わたしは中学2年生だっただろうか 姉が親と大喧嘩してた時に、父親の口から 母はびっくりしていた わたしもびっくりして固まってしまった 姉はどこか冷静だった むしろ彼女からすれば望んでいた言葉だったのかもしれない 勝手に産んで生きさせられていることに酷く苦しんでいたから 声を荒げずに言われた 勢いで言ってしまったようには感じられなかった あの頃、父の人生全てを考えられるほどの想像力はなかったけれど 彼自身生まれてこなければよかったと思うこ

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          生きてるって思うとき

          寝ぐせを見つける 石鹸の匂い 満月まであともう少し、カレーパンくらいの膨らみの月 絡まるイヤホン ふわふわの産毛 飲み途中の珈琲、マグカップに残ってく地層 フードの袖にあるシミ 車の助手席、太陽が眩しい バレーボールで作った右膝のあざ 料理した後お鍋を水につけておいてくれる人の背中 お腹がぐーぐー鳴る 足の爪があんまり上手に切れない 夏にキンキンに冷やして飲んでいた麦茶の素が棚から顔を出す 右ポッケに入っている何かのレシート コンバースの靴紐がもう

          生きてるって思うとき

          汗ばんでオリオン座

          冬にかく汗は運動した印なので少し誇らしい気持ちになる こめかみにジワりと残る汗を肩で拭いながらジムを出る その頃にはもう星が綺麗に見える時間で 自発的にかく汗は気持ちが良いなあ、と冬の星座を見上げて思う 少し冷たい風を心地良く受け入れる素肌 しっかり春を迎える前に こんな夜を繰り返してみるのも良いかもしれない

          汗ばんでオリオン座

          好きなパンの話をしよう

          パンは世界中に馴染みのある食べ物だと思っているかもしれないけど 日本人はこの上なく充実したパンライフを送っていることを少し自覚したほうがいい、少々キレ気味での執筆です 明太フランス 塩パン ちぎりパン あんぱん メロンパン ミルクパン チョコチップパン 菓子パン クリームパン カレーパン ふわふわの食パン 卵サンド パッと浮かぶだけでこんなにも、アメリカでは食べられないパンが存在しています しらすバター海苔食パン 卵黄醤油食パン 明太マヨ食パン いちご練乳食パン おば

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          吹き抜けが包む

          中高からの親友は吹き抜けが気持ち良い一軒家に住んでいて そこに遊びに行くのが大好きだった 私生活は地下鉄が多かったけれど 彼女の家に遊びに行くときは徐々に路面電車に移ってゆく。それは私にとって休日を知らせる景色で、手に入れたばかりのAirPodsでもノイズキャンセルをしないで電車の音を聞いていたくなった。 大体、夕方頃にお邪魔してわたしの手土産を家族で食べてまったりして、夕食をご馳走になる、おかわりをする。 シャワーを浴びたら彼女の部屋に布団を敷いて、たわいない話をして

          吹き抜けが包む

          遠くて小さい映画館

          mellowっていう田中圭主演の映画があって 公開当時に観に行った、4年前くらいかな 確か高校を卒業する直前とか 上映館を調べて時間に間に合う範囲で一番遠い映画館を選んだ 1時間40分くらいかかるところだったと思う 初めて降りる駅 聞き馴染みのない名前のショッピングモール 地元ではあまり見ないマイナーなコンビニ スーパーの前にずらーっと並ぶ自転車 そういう"誰かにとっての日常"を横目で眺めながら 小さな駅から小さな映画館まで歩いた すごく好きな映画だった でもは

          遠くて小さい映画館