見出し画像

【第1回】常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 ~自己流の限界を超えるプロジェクト成功のカギとは~

第一章 なぜプロジェクトは失敗するのか?

日本の情報開発システム導入プロジェクトの成功率は上がっています。「日経コンピュータ」の報告によると、15年前の2003年から調査をはじめ、2008年と2018年にもそれぞれ実施しています。3回の調査により、15年間でプロジェクトの成功率がどう推移したのか、失敗の理由は何か、といったことが明らかになりました。
プロジェクトの成功率は、2003年:26.7%、2008年:31.1%、2018年:52.8%と上がっていますが、約半数のプロジェクトは失敗しているともいえます。失敗の理由は15年前も現在も同じです。成功させる企業が増えている一方、プロジェクトの進め方について何も改善できず、15年前から変わらない理由で失敗する企業があります。
プロジェクトが失敗する理由は、さまざまですが、いずれもやるべきことができていない、マネジメントができていないことが多いのです。
プロジェクトは、人間の集合体による活動です。人間の集合体である以上、対人関係がうまくいかなければ、プロジェクトは失敗します。

1-1.プロジェクトとは

『プロジェクト』それは人類の夢「音楽を外に持ち出したい」「大人でもテレビゲームを楽しみたい」「大画面テレビで映画鑑賞をしたい」「ペットのような愛犬玩具が欲しい」
ソニーのエンジニアは、そんな夢を商品として、「ウォークマン」「プレイステーション」「ブラビア」「AIBO(アイボ)」を生み出しました。

プロジェクトとは、「世の中にないものを期限内に創造する活動」といわれています。言い換えれば、今までにやったことのないことを計画・実行して、期限までに目標を達成することで、唯一無二のものを創り出す夢のある活動です。
プロジェクトは、「計画」と訳される場合があります。「アポロ計画」約50年前に人類初の月への有人宇宙飛行を成功させました。「アルテミス計画」現在進行中で、最初の女性月面着陸をミッションとしたプロジェクトです。日本では、「超電導リニア中央新幹線計画」最高速度500キロメートルで東京・名古屋間を40分で結ぶ、夢の超特急です。

1-2.プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの目標を達成するために、ヒト、モノ、カネ、時間、情報などの資源を適切にコントロールすることです。企業の資源には限りがあります。これらの資源は制約条件となり、効率的かつ効果的に使用しなければ、プロジェクトは破綻してしまいます。
これらの資源をマネジメントするためのツールや技法は、世の中にたくさんあります。自分のプロジェクトに合ったツールや技法を駆使してマネジメントすることが重要です。

プロジェクトがうまくいかないことを「デスマーチ」という場合があります。デスマーチとは、過酷な労働を強い、通常の勤務状態では成功する可能性がとても低いプロジェクトの状況をさします。日本では、「死の行軍」「死の彷徨」と表現します。その原因は、プロジェクトが適切にマネジメントされていないからです。

1-3.プロジェクトマネジメントの難しさ

プロジェクトは、やったことのないことを実行するわけですから、計画どおりに進むとは限りません。むしろ、計画どおりには進まないと考えたほうがよいでしょう。前が見えない、立ちはだかる壁、不確実性の塊(かたまり)といっても過言ではありません。したがって、失敗するプロジェクトも少なくありません。
プロジェクトが失敗した場合の影響はきわめて大きく、特に大規模なプロジェクトになると、プロジェクトに関係する人や会社は経済的・社会的に大きな損失を被ることになります。

プロジェクマネジメントの知識や経験があっても、プロジェクトがうまくマネジメントできなかった、マネジメントに失敗した、そんな経験はありませんか。
プロジェクトマネジメントの難しさは、不確実性にあります。今までにやったことのないことを、期限までに目標を達成させなければなりません。やってみないとわからないことに挑戦することになります。闇雲にやってもうまくいくはずがありません。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
孫氏の兵法です。「敵」を「プロジェクト」、「己」を「自身のプロジェクトに向き合う姿勢」と考えた場合、プロジェクトとは何か、プロジェクトをマネジメントするとは、どういうことなのかを十分理解したうえで、さらに自分のプロジェクトマネジメント力を認識していなければ、目標を達成することはできません。プロジェクトは炎上し、失敗する確率が高まります。

1-4.独自に学んだやり方に限界を感じる

企業においては、プロジェクトが発足すると、事業部長や部長などプロジェクト・スポンサーがプロジェクト・マネジャーを任命します。
プロジェクト・マネジャーは、エンジニアの経験が豊富で、そろそろマネジャーができるだろうと上司に認められた人が任命されます。

たとえば、エンジニアとして入社したAさんは、30代後半になると経験も豊富で職場でも活躍し、上司から呼び出され、「来年は、会社の将来を左右する重要なプロジェクトが発足する。プロジェクト・マネジャーをやってくれないか。優秀な君にお願いしたい。よろしく頼むよ」とこんな感じでしょうか。
Aさんはエンジニアとしては、優秀で成果も残してきましたが、マネジメントとなると、基本的な教育は受けたことがありません。今までメンバーとして参画し、プロジェクトの進め方を見てきただけで、独自で学んだ方法で進めるしかありません。

できるプロジェクト・マネジャーになろうとすると、プロジェクトマネジメントについて、インターネットで調べたり、書籍を読んだりして勉強します。すると、世界標準のPMBOK(ピンボック)という書籍やPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格があることを知ります。PMBOKを中心にプロジェクトマネジメントを勉強し、1年後にはPMPの資格を取得します。

その後、予定どおりプロジェクト・マネジャーに任命されます。しかし、プロジェクトは、計画どおりには進まず、次から次へと問題が発生し、「もぐらたたき状態」となります。プロジェクトは「デスマーチ(死の行進)」に陥るのです。

1-5.こんなプロジェクト・マネジャーには、ついていきたくない

プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトの目標を達成するために組織から選出されたプロジェクトの実行責任者です。プロジェクトが成功するか、失敗するかは、プロジェクト・マネジャーの肩にかかっているといっても過言ではありません。
目標達成に使命を感じ、自分の役割をまっとうしようとします。プロジェクト体制図では、頂点に位置します。すべての指揮命令系統の責任があります。張り切りすぎて、次のような行動をとってしまう場合があります。

1.何でもかんでも、すべて自分で判断を下し、指示しないと気が済まない。
2.メンバーより自分がすべてにおいて優れていると思い、メンバーの意見を聞かない。
3.メンバーを信用せず、常に厳しく接し、一方的に自分の主張を押し付ける。
4.凝り固まったプライドから、自分の非を認めようとせず絶対に謝らない。
5.メンバーが行った作業でも、あたかも自分の功績であるように上に報告する。
6.ミスやトラブルが起こった場合は、責任は全部メンバーのせいにする。
7.メンバーの悩み事や相談事には消極的だが、自分が困ったときには助けを求める。
8.イライラや怒り、不機嫌さが、すぐに態度にでる。
9.約束を守らない。その反面、メンバーに対しては、約束は必ず守るように強制する。

このようなプロジェクト・マネジャーでは、メンバーはやる気がなくなってしまいます。

1-6.知識や経験だけでは難しい、重要なのは人間力

プロジェクト・マネジャーに必要なスキルには、建設業、製造業、サービス業など、その適用分野の専門知識や経験が必要です。さらにプロジェクトマネジメントにおいては、次の3つのスキルが必要です。

1つめは、知識力です。プロジェクトをマネジメントするための考え方や方法などをどれだけ知っているかです。

2つめは、実践力です。プロジェクトマネジメントの知識を実践で応用する能力です。

3つめは、人間力です。プロジェクトマネジメントに関連する作業を行う際の行動特性です。

知識や経験に加えて人間力を身につけることで、できるプロジェクト・マネジャーとして周りから信頼を勝ち取り、プロジェクトを成功へ導くことができます。

次回につづく

著者プロフィール

小山透

プロジェクトマネジメントをわかりやすく伝えるエバンジェリスト(伝道師)。ソニー一筋40年以上勤務。2011年、米国プロジェクトマネジメント協会認定のPMP(Project Management Professional)資格を取得し、半導体製品開発プロジェクトのPMO(Project Management Office)を担当する。また、米国プロジェクトマネジメント協会の日本支部では、プロジェクト・マネジャーに必要な知識やスキルとともに『人間力』についても10年以上研究を続けている。2012年からプロジェクトマネジメントの研修を体系的に構築。プロジェクトマネジメントの研修講師として、6,000名以上を教えている。

*   *   *

LINE公式アカウントでも、新刊情報、お買い得情報、noteに投稿している第一章全文や書き下ろしコラムの紹介、イベント・セミナーに使えるクーポンなど、生活や仕事に役立つ情報をお届けしていきますので、ぜひ「友だち追加」をしてください!

↓↓「友だち追加」はこちらからお願いします↓↓

https://lin.ee/kP0bgQk

QRコードからはこちらをスキャンしてください!

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?