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『人生を変える働き方転換術 しんどい働き方を理想の働きがいに変える』第一章・無料全文公開

書籍『人生を変える働き方転換術 ~しんどい働き方を理想の働きがいに変える~』より、第一章「働き方改革が進みつつある」を発売前に特別で無料全文公開!
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政府が進める働き方改革

●働き方改革関連法案が施行されるまで

現在、働き方改革のことが盛んに言われています。私が就職した1986年と比べると随分変わったものだと感慨深いものがあります。当時は働き方のことが議論されることなどなく、平日の残業や休日出勤を問わず、長時間働くのが美徳だとされ、誰もそのことに疑問を持っていませんでした。

新人の私も、特に上司から残業命令を受けたわけではなく、残業するのは当たり前で、定時で帰るのは特殊な事情があるときだけと考えていました。仕事量や人員配置も、残業が前提で組まれていました。いつの間にか、土曜日や祝日は出勤するものという考えになっていました。

政府は、このような日本独特の働き方を変えようと考えて、安倍内閣の2016年9月には働き方改革実現会議が設置されます。これまで、個人の生活を犠牲にし、残業代が払われなくても黙々と働く多くの社員に支えられて来た日本の産業界は、政府のこのような動きに警戒し、そして反発する動きが目立ってきます。安倍首相もこのような動きに配慮せざるを得ず、一連の動きが止まってしまったのです。

ところが、2015年12月に電通での長時間労働などを苦にして自殺した高橋まつりさんの労災が、2016年9月、三田労働基準監督署によって認定されます。2017年1月に石井直社長は引責辞任し、電通は労働基準法違反の罪で起訴され、同年10月に罰金50万円の有罪判決が言い渡されます。

このことで世の中の流れが一気に変わります。無理な残業をさせて社員を死に追いやったため、大企業の社長が辞任するという事態にまで発展し、他の企業も見て見ぬ振りをすることができなくなったのです。

2017年1月には、株式会社ワーク・ライフバランスの呼び掛けに応じ、多くの大企業が「労働時間革命宣言企業」に名を連ね、長時間労働に頼る会社運営は不適切であるという考えを公にします(小室淑恵『働き方改革』/毎日新聞出版)。

このような流れの中で、2017年3月には働き方改革実行計画が作成され、「罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠」ということが明確に述べられます。2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、日本の働き方も少しずつ変わろうとしています。


●昭和の働き方からの転換

従来の不適切な働き方を改善するために働き方改革が始まったように見えます。しかしそれよりも、日本社会が、従来の働き方をそのまま続けて行くことができなくなってきたという事情があります。

昭和時代の会社員には、個人の生活よりも会社優先、仕事優先という人が多くいました。平日は残業して、その後は飲み会、休日もゴルフや社員旅行で、お父さんが休日にいない家庭も珍しくありませんでした。このような働き方が成り立っていたのは、仕事の内容ややり方がある程度決まっていて、新人は先輩や上司から、均質な製品を大量に生産し、確実に売る方法を学べば良かったからです。真面目にこつこつ働いていさえすれば、給与は順調に上がり、昇進も約束されていました。一生働ける場が確保されていたのです。

しかし、時代は変化しています。もはや通り一遍のものでは売れません。消費者はさまざまな価値観を持つようになり、多種多様な商品を作ることが必要になります。それぞれの製品の賞味期限は短く、何が売れるのか、どうしたら売れるのか、以前なら上司が正解を持っていたのですが、今は誰も分かりません。

そして、日本は少子高齢化の社会に変化しています。従属人口(14歳以下、65歳以上の人口)を15歳~64歳の人口で割ったものを従属人口指数といいます。これは1992年頃に最小値を示した後、単調に増加する一方です。この値が大きくなると、現役で働いている国民の負担が大きくなるのです。

一人の高齢者を何人の現役世代で支えるかがいろいろな例えで表現されます。1965年は9.1人で胴上げ型と呼ばれ、非常に余裕がありました。その後、2012年には一人の高齢者を現役世代2.4人が支える騎馬戦型になります。今後少子高齢化がさらに進み、ついには肩車型になると予想されています。

このような状態で、次のような昭和時代の働き方を続けることができないのは明らかです。

①男性は長時間労働、女性は専業主婦
②場所も時間も内容も均一な働き方
③職場の和を重視する生産性が低い働き方

3つの特徴は互いに関連し合っていますが、みんなが揃って同じ場所で、長時間一緒に働いているというものです。

昭和時代の働き方から抜け出し、新たな時代の要求を満たすための働き方として、生産性を上げて効率的な働き方をする、男性だけではなく、女性、高齢者、外国人の力も活用する、1日7時間でなくても働ける時間だけ働く、会社に出勤しなくても自宅などで働くなどの多様な働き方が始まり出したのです。


●働き方改革を阻むもの

2020年2月頃から始まったコロナ禍の影響で、従来と同じ働き方ができなくなりました。在宅勤務、ネットワークを使った打ち合わせなど、1年前と比べて働き方が激変しました。コロナ禍自体は不幸なことですが、これを機に働き方を変えることができるという点では、一つの好機でもあります。

日本では顧客を訪問するということが、熱心さ、顧客を大切にしていることの表われと考えられています。書類提出だけであれば郵送やメールで済みますが、持参するということがしばしば行なわれています。しかし、このようなこともできなくなりました。それとともに、実際に対面しなくてもできることがたくさんある、移動する必要が必ずしもないことに多くの人たちが気づいたのです。

人材派遣のパソナグループのように、都心に事務所を置く必要がないと感じて、淡路島に本社機能を順次移すと決めた会社があります。お菓子メーカーのカルビーは、単身赴任を見直す方針を決めました。AIG損害保険は、転勤が多い保険業界の中では珍しく、原則として転勤を廃止しました。単身赴任だけではなく、転勤自体の必要性を問いかけたものです。

単身赴任も転勤も、本人、家族ともに精神的、経済的負担を強いられる場合がある制度ですが、これまでは、会社が決めたことは絶対というように考えられてきました。カルビーやAIG保険の決定は、今後他の会社の考え方にも影響し、徐々に広がって行くでしょう。

このような流れの中で、働き方改革を推進してきたはずの国の働き方に、残念な部分がまだまだあることが分かります。株式会社ワーク・ライフバランスのプレスリリース『コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査』(2020年8月3日)に生々しい実態が表現されています。このプレスリリースによると、4割の国家公務員が、月100時間を超える残業を行っており、200時間、300時間を超える職員もいるのです。

国会議員とのやり取りがいまだに対面を基本としていて、同じことを違う議員に別々に説明せざるを得ない、議員を訪問しても長時間待たされる、資料の送付もいまだにファックスが主という慣行なども、公務員の勤務時間を増やしている要因です。

業務のオンライン化、ペーパーレス化は省庁によってかなり開きがあり、環境省、経産省ではかなり進んでおり、3位以下を大きく引き離しているのが実態です。環境省でオンライン化が進んだのは、小泉環境大臣が育休を取得した際に、オンライン化を強力に推し進めたという背景があります。

オンライン化を活用した働き方改革は、十分実施可能な状況にありながら、まだまだ上に立つ人たちが従来の考えに固執して実現しない現場があることがよく分かります。今後はデジタル庁ができてデジタル化が進み、無駄な仕事のやり方を変えて行くと思われますので、期待して見守っていきたいものです。


●働き方改革で忘れてはならないもの

働き方改革で忘れてはならないのは、働いているのが人だということです。人は心があるために、いろいろなことを考えたり悩んだりします。コンピュータや機械のように、24時間働くことはできません。「24時間戦えますか?」という健康飲料のCMが昔ありましたが、今の時代ではあり得ないですね。

働き方改革の目的の一つに効率化があります。また、従来のように決まったことをして成果を上げるのではなく、高い価値の成果を上げる必要があります。しかし、これは口で言うほど簡単ではありません。個人でできることもありますが、基本的に会社として、部署として取り組むものです。新しい機器を導入したり、仕組みを変えたり、関係する社員同士が知恵を出し合ったりして工夫をすることにより、効率化が達成でき、価値の高い成果を上げることができるのです。無駄を削ろうとする余り、個人個人の余裕がなくなり、残業してはいけないから昼休みもまともに取れないような働き方をするようになっては本末転倒で、働き方改革にはなりません。

政府が示した働き方改革はほんの入口に過ぎません。今後どのような働き方改革を行なうかは、それぞれの会社、働く個人個人によって違います。働き方改革の具体像は、皆さん自身が作り上げて行くものです。皆さんがこれからどのように働き方を変えて行けば良いのか、一緒に考えていきましょう。

 自分で進める働き方改革

●個人事業主の意識で働く

私が就職した30年以上前と違って、国も会社も、働く人たちに対して随分配慮をしてくれています。もっとも、会社は社員に対して配慮しているように見えなければ、今後存続していくことが難しいという現実があるのも事実です。

2019年4月には、年5日以上の有給休暇の取得が義務化されました。これが守られなかった場合には、社員1人当たり30万円以下の罰金を会社が支払うことになります。このことによって有給休暇を取る人が増えたのであれば、結果的には良いことかもしれません。しかし、会社が社員に活き活き働いてもらうために有給休暇を奨励するのではなく、罰金を払うのが嫌で、あるいは社員に有給休暇も取らせないひどい会社だと世間から思われないために、社員に有給休暇を取りなさいと指示しているような様子を想像してしまいます。

言うまでもなく、休みを取るというのは、会社の仕事とは違う個人的な活動をするためです。そのようなことについて会社が指示をする、会社が指示をせざるを得ないというのはどこかおかしな感じがします。

働く側の意識改革も必要です。休みの取り方くらい自分で決めるということが、当たり前になってほしいものです。これは小さなことのように見えるかもしれません。しかし、自分で主体的に選択するという意味で、働き方にも密接に関係するのです。休みの取り方と同様、同じ働くなら、国や会社が決めたように働くのではなく、自分で決めたように働く要素が多いほうが幸せだと思いませんか。

会社に勤めていれば、その会社の売り上げが悪くても、一部の社員がさぼっていても、毎月給料が支給されます。毎日大した仕事もせず、おしゃべりをしたり、ぼーっと机の前に座っていたりしているとします。上司に叱られるかもしれません。それでも勤め続けることはできます。

もし社員ではなく、個人事業主として会社から仕事をもらっている立場だとすると、会社の売り上げが悪いときは仕事がありません。自分の出した成果の質が悪いときは、次回から声が掛からないという厳しい状況になります。皆さんが、会社を経営しているとしたら、そのようなことは当然だと納得されるでしょう。

国や会社が進めている働き方改革というのは、働く人たちを保護する仕組みです。一方で、働く人たちも、保護されているだけではなく、自分たちの意志で主体的に働くということを考える必要があるのです。


●一つひとつの仕事の意味を考える

会社ではいろいろな仕事が行なわれています。組織が大きくなればなるほど、仕事の内容は複雑化し、何のためにやっている仕事なのか不明確な仕事も増えてくることがあります。

2020年9月に開催された働き方EXPOで、住友生命保険の橋本雅博社長の講演を聴く機会がありました。橋本社長が、社員から報告を受ける際に、「この仕事は何のためにやっているのですか」と質問した際、仕事の意味を説明できる人は少なく、「引き継がれたからやっています」という回答が多いとのことです。もちろんその仕事を始めたときは、やる必要や意味があったのでしょう。ただ、時間の経過とともに意味がなくなることもあります。橋本社長は、「そのような仕事は、まずは止める。必要なら復活させれば良い」とおっしゃっています。

このように、普段やっている仕事の意味を改めて問い直したとき、本当に意味のある仕事かどうかが明確になります。もし、皆さんが個人事業主であれば、仕事に掛ける時間も支出もなるべく少なくしようと工夫するはずです。もう少し分かりやすく言えば、今の月給と同じ金額をもらい、働く日も休みも自由に選択でき、1か月のうちに決められた成果を提出すれば良いと言われたら、できる限り無駄をそぎ落とそうと工夫すると思うのです。成果を出すのに無関係なことは、なるべくしないようにするはずです。

それが、会社という組織になってしまうと、本当に必要な仕事なのかどうかが曖昧になり、単に以前からやっているからという理由で継続されがちです。自分が担当のときにやめてしまうというような、あえて目立ったこともしたくないという考えもあるでしょう。
もし、会社で働いている人たちが仕事の意味を明確にすることなく、単に以前からの習慣で仕事をしているとしたら、大勢で大きな無駄をしていることになります。

皆さんの普段の仕事を見渡すと、これは必要なのか、と思う仕事が必ずあります。皆さんの判断でやめることができる仕事に関しては、すぐに止めても問題ありません。皆さんにそれをやめる権限がないために、すぐにどうこうできないことも多いでしょう。その場合も諦めることはありません。この仕事は無駄ではないか、と考えたことを忘れないようにしておき、同僚と意見交換したり、上司に提案したりすることが考えられます。また、皆さんの権限が大きくなるまで待ってから実行するということもできます。

やむを得ずやり続けなければならない場合も、「この仕事は無駄だけれど、いろいろなしがらみや理由でやらざるを得なくてやっている。せめて、短時間に終わるように工夫してやろう」と明確に意識してやってほしいものです。変に悟ってしまって、「自分一人が変なことを考えても会社は変わらないから、決まったことを決まったようにやろう」と思いながら働いていると、それが普通になって、毎日の仕事に対して無関心になっていくことにつながります。


●仕事のやりがい、喜び

無駄な仕事をやめることについて述べました。これは自分がやっている仕事に対する関心を高めることにもつながります。そもそも、私たちはなぜ働くのでしょうか。仕事を通じて、どのような喜びを得たいと思っているのでしょうか。

東京大学名誉教授の地球物理学者で、科学雑誌『Newton』(ニュートンプレス)の編集長も務めた故竹内均先生は、仕事を選ぶときの条件として、①好きなこと、②それで食べていけること、③世の中の役に立つこと、という3つを挙げています。竹内先生は、大学、出版社いずれでも、腹一杯好きな仕事をしてきました。自分の価値観に従い、幸せに働いて来られた方の一人です。

皆さんも、ご自分が仕事に求める条件を書き出してみてください。そして、それが今の仕事で満たされているのかどうか考えてほしいのです。もし満たされていないとしたらなぜなのか、どうしたら満たされるようになるのか、よく考えて、行動してほしいのです。

私自身のことを考えてみると、学生の頃は、地球上で起こっているさまざまな自然現象に関心を持って地球物理学を勉強し、大学院では、海洋物理学という海の中で起こっている自然現象(黒潮、高潮、津波、波浪など)を研究する部門に進学しました。修士論文では、海の中に、発電所の温排水を放出した場合に、温排水がどのように拡散するかを調べる実験をやっていました。これは、人間活動の一つである漁業と密接に関連したものです。しかし、当時は、あくまで自然現象に関心があって、研究と人との関わりについては、ほとんど考えたことがありませんでした。

就職したのは財団法人日本気象協会です。気象協会はテレビでの天気予表で有名ですが、天気予報以外にもいろいろな調査業務も行なっています。1年目に担当した仕事の一つに、富山県の道路の冬季の凍結予測システムを開発するというものがありました。富山県を含む北陸地方では、冬の降雪、道路の凍結というのは、日々の生活に密接に関連します。このような仕事を通じて、自然現象そのものも面白いけれど、自然現象と人間の生活が深く関連した仕事をする意義というものを段々理解していったのです。当時の上司が、「我々のやっているのは単なる気象学ではなく、気象を通じて世の中の役に立つことだ」とおっしゃっていたことを今でも覚えています。
皆さん一人ひとり、仕事に求めるもの、仕事をすることの喜びは違うので、それが何なのか、改めてじっくり考えてください。これが、働き方改革の第一歩です。働き方改革は、国や会社にやってもらうものではなく、最後は自分の責任で行なうものです。

満足度の高い会社

仕事のやりがい、喜びは、自分で見出すのが理想です。もし、会社がそれを後押ししてくれるのであれば、やる気がなお高まるというものです。ここでは、社員満足度の高い会社をいくつかご紹介し、その秘密に迫ります。

●未来工業株式会社

電気・ガス設備資材の製造・販売を行なっている未来工業株式会社(岐阜県)の創業者である故山田昭男さんは、未来工業を紹介する多くの本を書かれています。その中の1冊である『日本一社員がしあわせな会社のヘンな〝きまり〟』(ぱる出版)で、「社員を幸せにするから社員は頑張ってくれる、会社は儲かる」と強調しておられます。

未来工業では、徹底した節電や、残業禁止などにより経費削減を行ない、それで得られた利益は社員に「餅」として還元しています。餅がモチベーションになるので、さらに各自が工夫して努力するようになるのですね。会社と社員との間に、信頼感に基づく意思疎通の好循環が存在しているように感じます。未来工業の社員の満足度が高い理由は、以下のように数々あります。


■「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)禁止
多くの会社で、最も大事だと言われている「ホウレンソウ」が禁止されています。上司から指示されてやるよりは、自分で考えて行動するほうが、社員の満足度が高くなるからです。全国の営業所も、社員が勝手に作ったという信じられない話もあるようです。


■失敗し放題
失敗は100回してもいい。ただし、同じ失敗を二度繰り返したらだめという考え方です。今の世の中は失敗に対しての寛容さが失われているように感じます。学校でも職場でも減点主義です。そのため、短期的に成功を収め続けないといけないという思いにとらわれ、ストレスになっている人が多いように見えます。

未来工業では、失敗し放題で、社員は安心していろいろなことに挑戦できるという加点主義が取られています。ただし、2回同じ失敗をすると、それは本人の責任とみなされ、降格になるという決まりがあります。肝心な場面ではけじめをつけるということでしょう。


■休日は年間140日、年末年始は20連休
未来工業は非常に休みが多い会社です。あまりに頻繁に休みを取ることで、お客さんに怒られたこともあります。それでも何十年も継続し、結果的にお客さんには逃げられなかったとのことです。

最新の状況をjobQ(https://job-q.me/articles/1638 2021年4月19日更新)で確認したところ、5月の連休は10日程度、夏季10日程度、年末年始20日程度、年間休日135日です。


■どんな提案でも、提出したらそれだけで500円支給される提案制度
提案を出すだけで500円支給されるというのは驚きです。さらに、内容が良ければ最高3万円支給されるとのことです。この表彰制度には、多数提案賞もあり、年間に20件以上申請すれば5千円、200件以上申請すれば15万円が追加支給されるというおまけまでついてきます。

このように未来工業の制度を見ていると、社員に大きな自由と権限を与えていることが分かります。自由と権限を与えられると、かえって無責任な行動もできないわけで、社員は十分に考え抜いた結果、行動するのでしょう。このような環境が、自立・自律した社員を作り、やる気と工夫につながり、結果として、安定した業績を上げているのです。


●株式会社LIFULL

日本最大級の不動産・住宅の情報サイト「ライフルホームズ」を運営している株式会社LIFULL(株式会社ネクストから2017年4月に名称変更)は、2017年3月に、リンクアンドモチベーション社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で第1位に選ばれた他、GPTW(Great Place to Work Institute Japan)が世界50か国から選ぶ「働きがいのある会社」ベストカンパニーに7年連続で選出されるなど、最も働きがいのある会社の一つです。

同社執行役員で、人事の責任者である羽田幸広さんは、『日本一働きたい会社のつくりかた』(PHP)で、LIFULLが働きがいのある会社になった秘密を紹介されています。羽田さんがLIFULLに入社される前に在籍していた会社では、社員のことを考えず、会社の利益だけを重視したやり方や、成果を上げるために必死で頑張った社員がひどい扱いを受けて退職していくことに、常々疑問を感じていたようです。そして、2005年にLIFULLに移籍後、人事担当になったものの、それまで人事の経験がなかった羽田さんは、とても単純に、「自分が社員ならどんな環境で働きたいか」を考えて、以下のことを大事にしてきました。

・自分がやってもらって嬉しいことをやり、やられたら嫌なことは控える
・やらされ仕事ではなく、自分の意志で仕事ができる環境作り
・一緒にいたいと思う人と働く
・会社に貢献した人が報われる

羽田さんは、このような会社を作って行くために、2008年1月には、「日本一働きたい会社プロジェクト」を開始します。当時323名の社員のうち、80名が自分の仕事をやりながらこのプロジェクトに参加したということから、羽田さんの力もさることながら、社員の皆さんの会社を変えたいという思いが相当強かったことが分かります。

このプロジェクトでは、キャリアデザイン、キャリアディベロプメント、キャリアエントリー、評価の4テーマについて議論がなされています。ここには、役員と人事以外に有志の社員が加わっていたのです。一般の社員が、会社の運営に関わる内容に自由に参加できたというのは、私には非常な驚きで、新鮮でもあります。

一人ひとりの社員が、自分たちが会社を動かしているんだと感じたら、会社とは一部の経営者だけのものではなく、まさに自分たちのものと感じられるのでしょう。社員一人ひとりが会社を経営しているような気持になるのかもしれません。

一人ひとりの社員が会社経営に参加できるということは、社員が大切にされているということです。私は2020年9月に開催された働き方EXPO2020で、羽田さんの講演を聴きました。その中で最も印象に残った言葉は、「会社が社員を大切にすれば、社員は会社を大切にする」というものです。

人間同士の関係ならば、このことは当然のこととして、皆さんよく理解されているでしょう。それが社員対会社となると、必ずしもそうはなっていません。会社は社員に給与を払っているので、社員よりも強い立場にあります。「会社は会社の方針が最優先で、そのために社員を大切にできない場合があってもやむを得ない。それが嫌な社員は辞めればいいんだ」とあからさまに言わないまでも、そのように考えている会社はまだまだ多くあります。

ところで、会社とは実態のないもので、実際は人が会社を経営しています。会社と社員との関係とは、経営者と社員の関係、すなわち、人間同士の関係なのです。羽田さんの言葉を言い換えれば、「経営者が社員を大切にすれば社員は会社を大切にする」となりますし、さらに言い換えれば、「上司が部下を大切にし、社員同士が互いを大切にし合えば、みんなが会社を大切にする」ということになります。

羽田さんが素朴にお考えになったことが、一人ひとりの心を動かし、やる気を引き出して、LIFULLが「働きがいのある会社」になったのですから、人は誰でも、適切な環境で働けたら、大きな力を発揮することができるのだなと感じます。


●働きがいのある会社
働きがいのある会社とは、どのような会社でしょうか。ONE TEAM Labでは、①経営理念のシェア、②カルチャーが根づいていること、③良好なコミュニケーション、④社員の「やりたい!」をサポートする環境を挙げています(https://media.unipos.me/greatjob 2021年5月6日更新)。

経営理念のシェアは、指示・命令ではありません。経営者が社員に語り掛けることによって、思いを伝えることによって実現するものです。経営者がこんな風に仕事をしたい、そしてそんな風に思っているのはなぜなのか、その先にどんなものが見えるのかというビジョンを語ることで、社員は経営者との垣根を超えて、経営者の考えを理解しやすくなるのです。

カルチャーが根づいているとは、会社らしさがキーワードで表現されていて、社員一人ひとりが、判断したり行動したりする際の指針となるようなものです。Googleのカルチャーは、「エンパワーメント&インディペンデンス」ですが、このキーワードが社員の中に深く浸透して行くと、周りの人たちもみんなこのキーワードに従って行動しているという安心感を持てるので、勇気を持って挑戦したり、判断したりすることができるのです。

良好なコミュニケーションが良い影響を及ぼすことは言うまでもありません。岸見一郎さんと古賀史健さんの『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)にも書かれているように、アドラー心理学では、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と言っています。

良好なコミュニケーションが行なわれると、職場が安心できる場所になり、自分が職場に受け入れてもらえているという感覚を持つことができます。それだけで多くの悩みやストレスがなくなるので、ストレスでエネルギーを浪費することなく、多くのエネルギーを仕事に注ぐことができるのです。

社員の「やりたい!」を支援すると、挑戦する社員が増えます。社員の中には、今現在担当している仕事をこなすだけでは飽き足らず、それ以外のことに挑戦したいと思っている人もたくさんいます。しかし、担当の職務以外のことを許さない社風や、失敗を嫌う社風があったりすると、今担当している仕事を淡々とこなしておけば良いという、大過なく過ごす社員が増えることが容易に予想されます。少々失敗しても構わないという雰囲気があれば、社員は伸び伸びと楽しく働けるのです。少々失敗することもあるでしょうが、それよりも得るもののほうが多いのです。

働きがいのある会社の4つの条件として、①経営理念のシェア、②カルチャーが根づいていること、③良好なコミュニケーション、④社員の「やりたい!」をサポートする環境を挙げました。これらは別々のものではなく、互いに影響し合って、良い循環を作り出しています。当然ながら、これらの条件が満たされていないと、悪い循環が生まれてしまいます。先述した未来工業やLIFULLの良い点は、これらの条件と共通していることに気付かれるはずです。

あしたの人事Onlineによると、新卒社員が3年以内に離職する割合は30%以上です(https://www.ashita-team.com/jinji-online/category1/10314 2020年7月3日更新)。最近の若い社員は弱くなっているという意見もよく聞きますが、会社が前述の4つの条件を満たしているかどうか、今一度見直してみても良いのではないでしょうか。会社と新卒者が互いに時間を掛けて採用が決まり、さらに時間を掛けて研修を行なった挙げ句、新卒社員が会社に対して悪い印象をもって辞めていくというのは、非常に大きな無駄です。


●有名作家の働き方

ここまでは会社での働き方、働いている社員の満足度について書いてきました。次に、有名作家の働き方についてご紹介します。会社員が、会社という枠の中で、義務を果たさねばならないのに比べて、作家はとても自由な仕事のように見えます。いつ働くかも自由、何を書くかも自由です。
昭和の時代には、作家というのは夜遅くまで飲み歩いて、夜中に原稿を書き、昼頃起き出してくるというような、どちらかと言えば不健康な印象を私は持っていました。しかし、現在の有名作家の働き方は少し違うようです。ここではみずみずしい感覚で良い作品を次々に生み出している角田光代さんと、新しい著作を出版すると、この人が書いたというだけで爆発的に売れる村上春樹さんを取り上げます。

角田さんの仕事の仕方は、現在お住まいの杉並区の公式情報サイト、すぎなみ倶楽部(https://www.suginamigaku.org/2019/02/kakuta-mitsuyo.html 2019年4月1日)に紹介されています。ご自宅から徒歩17分の仕事場に歩いて通われている角田さんの仕事時間は9時~17時。30歳のとき会社員の彼氏と付き合っていて、その彼氏と会うために、平日の夜と休日は仕事をしたくなかったから、この働き方を始めたとのことで、この習慣が今でも続いているのです。仕事が忙しくてどうしても終わらないときは、夕方遅くまでやるのではなく、朝早めに家を出るそうです。このようなお話を伺うと、作家というより、まさに会社員のような、いや、本物の会社員以上のような感じがします。残業は一切しないで、やむを得ないときは早出をするというあたり、確固たる信念を感じます。

作家には2種類のタイプがあると角田さんはおっしゃいます。書くべきことが次から次へと降ってくる芸術家タイプと、机の前に座って淡々と書き続ける職人タイプです。ご自分のことは職人タイプとおっしゃっています。

人生や人間関係について、怖い面、汚い面も含めて、なかなか気づかないような視点、気づきたくない視点から抉り出したような作品をたくさん生み出している角田さんは、当然芸術家タイプと思っていました。ご自分では職人とおっしゃり、16時半を過ぎると何も出てこなくなり、夜や休日はまったく別のことをして楽しんでいる、きわめて健康的な作家さんです。

では、村上春樹さんの働き方はどうでしょうか。Livedoor NEWSの記事(https://news.livedoor.com/article/detail/14612239/ 2018年4月21日)には、「昔の小説家と正反対すぎで目からウロコ」という題名がついています。

村上さんは毎日朝4時頃に起きてすぐパソコンの前に座り、4~5時間、ひたすら執筆します。この原稿の量は、かならず10枚程度と決めています。筆が進まなくても書き切り、逆に多く書けそうでもピタッとやめるそうです。1日の仕事はここまでですから、普通の会社員が仕事を始める9時頃には、もう仕事を終えているのです。

仕事を終えた後は、走るか泳ぐかの運動を1時間程度やったあと、本を読んだり、音楽を聴いたりする生活を楽しみ、毎日繰り返しているそうです。規則正し過ぎる毎日ですよね。

私が驚いたのは、「筆が進まなくても書き切る」ということ。普通の人は、どのような仕事にしても、仕事が止まってしまう時間があるのですが、村上さんは、とにかく書いておられるのですね。書けないときでも書くというのは、長年の作家生活の中で身につけたやり方なのでしょう。「集中力は、僕の人生で一番幸福をもたらしてくれるものの一つですね。集中できない人って、そんなに幸せではないでしょう」と村上さんはおっしゃっています。

角田さんと村上さんの仕事に仕方に共通するのは、規則正しく働くことを習慣化する、そのときの調子によらず集中して働く、これをひたすら継続するということでしょう。

会社員も大いに真似できそうな気がします。大作家だからそんな風に働けるのだという声も聞こえてきそうですが、大作家もそんなに特別なことをしているのではなく、自分が最も仕事の成果を上げられるやり方を自分で見つけ出して、毎日愚直に働いているというのが実情ですね。そして、仕事を効率良く終わらせたあとは、好きなことをして人生を楽しんでいるのです。

 あなたにとって理想の働き方とは

●給与が高いと満足できるのか

アメリカの心理学者F・ハーズバーグは、「どうやって従業員のモチベーションを上げるか?」(1968)という論文で、働くことの満足度に影響するものに、衛生要因と動機づけ要因の2つがあるという2要因理論を提唱しています。前者の衛生要因とは、働く上での不満足に関連したもので、職務環境、給与、社内の人間関係などです。後者の動機づけ要因とは、仕事内容、仕事の意義、責任、個人の成長などです。前者は働きやすさ、後者はやりがいと言い換えることができます。

ハーズバーグは、衛生要因の改善は、従業員の不満足を減少させるが、満足度を高めるのは動機づけ要因の充足であると言っています(木村周『キャリアコンサルティング 理論と実際』/一般財団法人 雇用問題研究会)。給与が少ないと不満に思うけれども、高いからといって、それだけでは満足感は得られないということです。
このことは、2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授の調査からも読み取ることができます。ディートン教授によると、年収が7.5万ドル(2021年6月時点で、約820万円)までは年収が上がるに従い幸福度が上昇しますが、それ以降は年収が増えても幸福度はあまり変わらないそうです(UPU:https://upu.bk.mufg.jp/detail/398 2020年3月23日)。

内閣府が2019年に実施した「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)」では、年収が3千万円を超えると、逆に幸福度が下がるという結果も出ています。年収3千万円というのは、ほとんどの国民には縁がない数字です。それでも年収が高くなると幸福度が下がるというのは衝撃的な結果です。恐らく、たくさん稼いでいるという満足感よりも、今の年収を維持できるのかという心配が勝り、そのために幸福度を下げているのでしょう。

ワインの値段と味について述べた人のお話を聞いたことがあります。1本500円のワインと、5万円のワインを比べた場合、5万円のワインのほうが当然おいしいと思われます。しかし、100倍おいしいかというと、そんなことはないでしょう。安物のワインでもおいしく飲めるという人のほうが幸せかもしれません。
高級な料理を普段から食べている白金の奥さまたちに、高級牛肉と大衆牛肉を料理して食べ比べてもらって、どちらが高級牛肉かを当ててもらうという企画をテレビでやっていました。「ここのお店のお肉は普段からよくいただいていますから」と自信ありげな奥さまが、大衆牛肉を食べて、こちらのほうがおいしいと言っている場面が放送されていました。間違えた人がかなりいたというのも面白い結果です。

それほど高い旅館でなくても、日頃の忙しさから解放されて、月を見ながら露天風呂にでも浸かったとき、多くの人は幸せな気持ちになるのではないでしょうか。このようなことを考えると、働くことの満足度は、収入だけではないということがお分かりになるでしょう。

働き方について考えるとき、以前ある経営者とお会いしたときのことをよく思い出します。在任中、会社の経営状態は良く、以前よりも高額の賞与を社員に支払えたことを得意に思って、にこにこされていました。ただ、その社長はかなりワンマンで、社員の言うことを聞くどころか、しばしば怒鳴りつける場面があると、他の人から聞いたことがありました。お話する中で、「社員の言うことは普段からよく聞いていますよ。それよりも、あれだけ給料をもらっていれば誰も文句を言わないですよ」と笑っておられたことが印象に残っています。その経営者は、高い給与を払いさえすれば、人は喜んで働くものだと信じていたようです。


●働くことは苦しいこと?

働くことはお金のためだけではないということに、多くの人は気づいています。では、私たちは何のために働くのでしょうか。仕事を通じて、私たちは学んだり、成長したりする機会を持ちます。多くの人と出会うことによって、人との接し方を学びます。困難に直面して、対処方法を学びます。仕事をしていると、喜びを感じることがある反面、しんどいことにもたくさん出会うのです。

ここで勘違いしてほしくないのですが、「働くときに苦しい目にあったほうが良い、しんどい目にあったほうが良い」ということは、必ずしも正しくありません。私たちは、苦しい場面やしんどい経験を通じて、自分を成長させることができる場合も多くあります。それは、その経験から貴重な教訓を得たのであって、苦しい思いをする、しんどいことに出合うこと自体が、貴重なわけではないのです。
「しんどい思いをする、苦しい思いをすること」が、すなわち「働くこと、成果を出すこと」だと思っている人が、従来はかなりいました。残業時間が多いと、その社員は熱心だとみなされたのです。段取りが悪い、準備が不足しているがために残業になったとしたら、その残業は熱心さとは正反対のことになるのです。

ジャパネットタカタの2代目社長・髙田旭人さんは、『ジャパネットの経営』(日経BP)の中で、「楽して成果を上げる」とおっしゃっています。

費用対効果(B/C)という考え方があります。BはBenefit(効果、便益)で、CはCost(費用)です。費用対効果を高めるとは、お金や手間を掛けずに良い成果を得るということで、若者がよく使う「コスパ(コスト・パフォーマンス)が良い」と同じ考え方です。

髙田社長がおっしゃるのもまったく同じことで、「汗水たらして、苦しい思いをして働く」という従来の価値観とは反対で、無駄にしんどい思いをしないようにという考えです。何もこれは仕事をさぼれと言っているのではなく、工夫したり仕組みを変えたりして、無駄を省きましょうと言い換えることができます。従来通り、決まりきったやり方で仕事をするのではなく、頭を使って、工夫して働くことが奨励されているのです。

先述した住友生命の橋本社長のお話も、やめることができる仕事を見つけることによって、Cを小さくする工夫だといえます。


●あなたにとって理想の働き方とは

働く上でお金が第一ではないし、無駄に頑張って根性を鍛えれば良いというものではないということは分かったでしょう。では、どのような働き方が理想の働き方なのでしょうか。 完全週休2日で有給休暇も割と自由、仕事も慣れたのでそれほど難しくなく、給与もまずまずという会社なら、とりあえず居心地がいいということになるかもしれません。ただ、そこにこれから先10年、20年いたいでしょうか。感じ方は人によるので、一般的な話はできませんが、私ならすぐに飽きてしまいそうです。

退職前は、退職したら旅行だ、ゴルフだと楽しみにしていたのに、旅行にも好きに行って良いし、ゴルフも自由にやって良いという環境になったら、そんなに遊んでばかりいても面白くないというのと似ています。

では、どんな風に働けたら楽しいのか、これはなかなか難しい問題で、腕を組んでじっと考えていても何も浮かびません。私は、とにかくやってみることだと思っています。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」と言う通り、何でもやってみないと、自分はそれが好きか嫌いかなんて分かりません。

今の世の中は、ネットで簡単に大量の情報が手に入るので、何でも分かったような気になります。しかし、まだまだ分からないことはたくさんあるのです。昔と比べて、今の人の頭がそんなに良くなったという必然性もありません。逆に情報が多過ぎて、一つひとつの情報に付き合っていたら、時間も体力ももたないので、分かった気になるのが当たり前になっていて、自分が感じたり、考えたりすることが随分少なくなっているように、私には思えます。

理想の働き方、いやもっと広く、理想の生き方を知るには、色々なことをやってみるのが良いでしょう。そして自分がどう感じるかを確認し、楽しければもっと広げてみる、深めてみる、楽しくなければ、なぜ楽しくなかったのかを考えて、別の楽しそうなことを探す。ということを地道に繰り返していくのが一番です。

私は40代で転職し、「自分の意志で行動すれば自分が考えたことが実現できる」と確信しました。その後、整理収納アドバイザーやコーチング、キャリアコンサルタントの資格取得、講師としての活動、いろいろな講座の受講、本の出版、博士課程の入学と博士号取得、テレビドラマやCMの出演など、初めてのことをたくさんやってきました。その一方で、やってみたけれどあまり関心を持てずに続かなかったこともあります。しかし、それが無駄とは考えていません。多くのことをやってみた結果、自分に合うものが見つかったので、全てのことに意味があるのです。

いろいろと新しいことをやってみるというのは、面倒臭いし、少しくらい不満があっても、今と同じことをやり続けていたほうが楽だし、居心地が良いのも事実です。それで本当にいいのか、ご自分によく聞いてみてください。自分と対話をする時間を持つことは、とても大切なのです。


●働き方だけではなく働きがい

業種にもよりますが、従来の日本の会社では、社員に対して多くのことをお膳立てしてあげて、社員にはある程度決まったことを間違いないようにやってもらうという場面が、多くありました。多くの労働者が、時間をかけて、同じように仕事をするという方法で仕事が回っていたのです。それは、物を作ればそこそこ売れるという保証があったからです。

先述したように、今や、こうすれば必ず売れるという答えがなく、仕事も複雑化しています。一方で、少子高齢化による労働力不足が目立ち、働き過ぎに対する批判も高まっています。政府や企業の進めている「働き方改革」は、労働者を保護する制度ではありますが、仕事の効率化も要求しています。効率化というのは、会社にとってはいいことですが、機器の導入や仕組みを整えることなしに、単に社員に効率化を求めるとしたら、社員にはかなり厳しく、場合によっては働き方改革の趣旨に反することもあるでしょう。

このように、現在進みつつある働き方改革は、おおむね良い制度ではあるものの、あまりに効率を重視し過ぎると、働く主体が「人間」であるということを忘れがちになります。機械やコンピューターなら24時間365日働いても文句を言わずに、正確な成果を出し続けますが、我々人間はそうはいきません。私も若い頃は、自分の心身の疲れを無視した無茶な働き方をしていました。しかし、最近では無茶な働き方をすると、体も心が疲れてみじめな気持ちになり、中長期的には効率がかえって落ちることが分かっているため、疲れたときには無理して働かないようにしています。

では、働き方改革に足りないものは何でしょうか。それは働きがい改革です。働いていると、喜びを感じたり悩んだりします。たとえ悩みがあったとしても、働く喜びがあれば、働きがいを感じることはできるでしょう。働く喜びを増やすために何ができるのか、そして、自分の理想とする働き方を実現するにはどうしたら良いのか、次章以後で考えていきたいと思います。

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第一章はここまで!
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著者プロフィール

仲井 圭二

建設コンサルタント会社勤務/博士(工学)/気象予報士/国家資格キャリアコンサルタント/銀座コーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ/整理収納アドバイザー

1961年、大阪市生まれ。建設コンサルタント会社の社員として勤務しながら、資格を活かして、キャリアコンサルタント、コーチ、講師の活動を行う。40代前半で転職した頃、周囲の人と自分を比較して、若い頃の職業選択が間違っていたのではないかと非常に悩む。また、働くことがとてもしんどいことだという思いにとらわれる。
その後、コーチングやキャリアカウンセリングを学び、自分を知ることにより、若い頃の選択は間違っていなかったとの思いに至り、かつての自分と同じように、活き活きと働けていない人、不器用だけれど頑張っている人を支援しようと決意する。世の中に、笑顔で働く人を増やすことを自らの使命と感じ、今は働くことがしんどくても、働くことは必ず楽しくなるということを多くの人に伝えたいという思いで活動している。

東京大学大学院理学系研究科・地球物理学専門課程修了。九州大学大学院海洋システム工学専攻博士課程 単位修得退学。

連絡先 keiji09141961@gmail.com

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