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『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』第1章・無料全文公開

1月25日発売の書籍『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』から、第1章「プロジェクトの成功と失敗」を全文公開!

1.なぜプロジェクトは失敗するのか

専門誌『日経コンピュータ』(日経BP)の報告によると、日本の情報システム開発・導入プロジェクトの成功率は上がっています。15年前の2003年から調査をはじめ、2008年と2018年にも実施しています。3回の調査により、15年間でプロジェクトの成功率がどう推移したのか、失敗の理由は何か、といったことが明らかになりました。

プロジェクトの成功率は、2003年で26.7%、2008年で31.1%、2018年で52.8%と上がっていますが、約半数は失敗しているともいえます。

アジャイル開発の導入やPMO(Project Management Office)組織を設置するなど、プロジェクトの成功確率を高める施策を実施してきたことにより、成功する企業が増えている一方、プロジェクトの進め方について何も改善できず失敗する企業があることも事実です。

この調査結果では、失敗する理由は15年前も現在も同じであると分析しています。プロジェクトの成果物に満足を得られなかったいちばんの理由は「要件定義が不十分」、コストを順守できなかったいちばんの理由は「追加の開発作業が発生」、スケジュールを順守できなかったいちばんの理由は「システムの仕様変更が相次いだ」でした。

プロジェクトが失敗した場合の影響はきわめて大きく、とくに大規模なプロジェクトになると、関係する人や会社は経済的・社会的に大きな損失を被ることになります。失敗する要因はさまざまですが、いずれもやるべきことができていない、プロジェクトに対するマネジメントが不適切だからです。マネジメントの重要性を理解し、ツールや技法を実践で活用できるようにしなければなりません。

さらに、プロジェクトは人間の集合体による活動です。人間の集合体である以上、対人関係が円滑にいかなければ失敗します。

2.プロジェクトの定義

プロジェクトとは、なんでしょうか。
プロジェクトをひとことで言いあらわすと、「人類の夢」です。「音楽を外にもち出したい」「大人でもテレビゲームを楽しみたい」「大画面のテレビで映画鑑賞をしたい」「ペットのような愛犬玩具が欲しい」ソニーのエンジニアは、そのような夢を商品として開発し「WALKMAN(ウォークマン)」「PlayStation(プレイステーション)」「BRAVIA(ブラビア)」「AIBO(アイボ)」を生み出してきました。

プロジェクトとは「世の中にないものを期限内に創造する活動」です。言い換えれば、今までにやったことのないことを計画・実行し、期限までに目標を達成することです。つまり、唯一無二のものを創り出す夢のある活動であるといえます。

プロジェクトは、日本語で「計画」と訳される場合があります。「アポロ計画」は50年以上前に人類初の有人月面着陸を成功させました。アメリカ航空宇宙局(NASA)による人類初の月への有人宇宙飛行計画です。1961年から1972年にかけて実施され、有人月面着陸に全6回成功しました。アポロ計画のうちとくに月面着陸は、人類が初めて有人宇宙船により地球以外の天体に到達した事業です。宇宙開発史において画期的な出来事であっただけではなく、人類史における科学技術の偉大な業績として今もしばしば引用されます。

アポロ計画から50年、現在は「アルテミス計画」が進行中です。最初の女性月面着陸をミッションとしたプロジェクトです。「アルテミス」は「アポロ」の双子の妹で、月の女神とされています。アルテミス計画には日本も参加しており、「OMOTENASHI」は今回の打ち上げで唯一、月面着陸を目指す探査機です。

日本においては「超電導リニア中央新幹線計画」があります。最高速度500キロメートルで、東京―名古屋間を40分で結ぶ、夢の超特急の実現に向けたプロジェクトです。

一方で、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)プロジェクトのように失敗プロジェクトもあります。「YS-11」のプロペラ機から約50年、噴射式のターボファンエンジン搭載の機体として完全な日本国産の旅客機プロジェクトがスタートしました。しかし、2019年6月13日、三菱航空機は開発中のリージョナルジェット機をMitsubishi Space Jet(三菱スペースジェット)と改称することを発表したのです。2020年5月22日、開発費の半減や量産機の生産中止など、開発計画が大幅に見直されることが報道されました。一部報道では、人員削減や量産機の製造中断、米国の開発拠点閉鎖、将来的な開発中止も視野に含めた大幅な見直しであるとされています。同年6月15日、スペースジェットの開発体制を大幅に縮小することを明らかにしました。そして、6度の納入延期を経て、2023年2月7日に開発が中止。

このようにプロジェクトという名のもとに、人類の夢をさまざまなかたちで実現してきました。規模の大小にかかわらず、今後もプロジェクトという形態の業務は増える傾向にあります。

プロジェクトに関しては、アメリカのPMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)が発行する書籍、PMBOKⓇガイド『A Guide to the Project Management Body of Knowledge』(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)で明確に定義されています。

プロジェクトとは、「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性のある業務」です。つまり、独自性と有期性があり、やってみないとわからないことが多いため、段階的に詳細化して進めるといった特徴があります。

独自性とは、なんらかの識別できる点で、プロダクト、サービス、所産としてユニークな成果物を創造することです。

有期性とは、どのプロジェクトにも明確なはじまりと終わりがあることです。

段階的詳細化とは、プロジェクトは、はじめからすべてがわかっているわけではありません。プロジェクトが進むにつれて、徐々にわかってくることがあります。その段階で詳細に計画をして進めます。

プロジェクトは仕事の進め方のひとつの形態です。対応する形態としては、定常業務があり、ルーチンワークともいいます。なんらかの製品を開発する業務がプロジェクトであり、それを量産化して販売するのは定常業務となります。

3.プロジェクトマネジメントの定義

ではプロジェクトマネジメントとは、なんでしょうか。

これについても、PMBOKⓇガイドで明確に定義しています。

プロジェクトマネジメントとは、「プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、スキル、ツールと技法をプロジェクト活動へ適用すること」です。つまり、プロジェクトの目標を達成するために、ヒト、モノ、カネ、時間、情報などの資源を適切にコントロールすることです。企業の資源には限りがあります。これらの資源は制約条件となり、効率的かつ効果的に使用しなければ、プロジェクトは破綻したり、炎上したりします。

これらの資源をマネジメントするためのツールや技法は世の中に多くあり、自分のプロジェクトに合ったツールや技法を駆使してマネジメントすることが重要です。

PMBOKⓇガイドには、世界中でよい実務慣行と一般に認められているプロジェクトマネジメントの知識を体系化しています。プロジェクトマネジメントに関する知識を10個のエリアに分類して整理したものです。日本の製造業で従来使われてきたQ・C・D(Q:品質、C:コスト、D:納期)に「スコープ」「資源」「コミュニケーション」「リスク」「調達」「ステークホルダー」の6つの分類を加え、それらをトータルにマネジメントする「統合」を含めた10個の知識エリアで構成されています。

さらに、それぞれの知識エリアごとに「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」の5個のプロセス群があります。10個の知識エリアと5個のプロセス群でマネジメントする必要があるのです。

プロジェクトが破綻、また炎上することを「デスマーチ」といいます。プロジェクトが死に向かう過酷な状況で、長時間の残業や徹夜、休日出勤の常態化をさします。プロジェクト・メンバーに極端な負荷、過重労働を強い、通常の勤務状態では成功する可能性が非常に低いプロジェクトのことです。その発生要因は、プロジェクトマネジメントが不適切であるとされています。

「デスマーチ」という言葉は、本来はコンピュータプログラマーのアンドリュー・ケーニッヒ氏によって1995年に示されました。コンピュータシステムのアンチパターンのうち、プロジェクトマネジメント上の問題点のひとつとして示された言葉です。

その後、この言葉はエドワード・ヨードン氏の『デスマーチ 第2版ソフトウェア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか』(日経BP)によって広まりました。エドワード・ヨードン氏はアメリカのコンピュータ・コンサルタントで、構造化プログラミングにおけるソフトウェア開発手法の先駆者として知られています。

現在はソフトウェア産業に限らず、一般的なプロジェクトでも使われるようになりました。とくに納期などが破綻寸前で、関係者の負荷が膨大になったプロジェクトの状況を表現するのに使われています。

デスマーチを日本では「死の行軍」と表現します。代表的な事例は、新田次郎氏の『八甲田山死の彷徨』(新潮文庫)です。八甲田雪中行軍遭難事件であり、登山史における世界最大級の山岳遭難事故といわれています。1902年(明治35年)1月、日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう途中で遭難しました。訓練への参加者210名中199名が死亡するという日本の冬季軍事訓練において、最も多くの死傷者を出した事故として今も語り継がれています。

映画化もされ、この作品はプロジェクトマネジメントの業界では、何十年も前から教材として採用されています。事前課題としてDVDを視聴し、弘前歩兵第三十一連隊徳島大尉・中隊長(高倉健)のチームは、全員が生きて帰ってきたため成功プロジェクト、青森歩兵第五連隊神田大尉・中隊長(北大路欣也)のチームは、199名が死亡した失敗プロジェクトとして、成功と失敗の要因を考えるグループ・ディスカッションです。このワークを通して、プロジェクトマネジメントの重要性を学ぶことができます。

4.プロジェクトマネジメントの難しさ

プロジェクトは、なぜ破綻したり、炎上したりするのでしょうか。

プロジェクト・マネジャーやプロジェクトマネジメント研修の受講者からは、プロジェクトの運営において次のような問題が挙げられます。

●プロジェクトが大規模で、社外や組織間の役割分担、進め方に混乱が生じている
●仕様やスケジュール変更が多く、何が最新の要求かわからない
●変更要求がすぐに計画へ反映できていない
●進捗報告においては、担当者によってムラがある
●プライオリティの高い業務が飛び込んでくるため、人員やスケジュールの調整が思うようにできない
●問題が発生してからの対応に常になっている

プロジェクトは、やったことのないことを計画して実行するわけですから、計画どおりに進むとは限りません。むしろ計画どおりには進まないと考えたほうがよいでしょう。次から次へと壁が立ちはだかり、前が見えない状態で、不確実性の塊といっても過言ではありません。したがって、失敗するプロジェクトも少なくありません。

プロジェクトマネジメントの知識や経験があっても、思うようにマネジメントできず破綻したり、炎上したりした経験はありませんか。

プロジェクトマネジメントの難しさは不確実性にあります。今までにやったことのないことを、期限までに目標を達成させなければなりません。やってみないとわからないことに挑戦することになります。闇雲にやっても期待どおりにいくはずがありません。

孫氏の兵法に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という格言があります。「敵」を「プロジェクト」とし、「己」を「自身のプロジェクトに向き合う姿勢」に置き換えて考えます。プロジェクトとは何か、プロジェクトをマネジメントするとはどういうことなのかを理解したうえで、さらに自分のプロジェクトマネジメントのスキルがどの程度なのかを認識していなければ、目標を達成できません。プロジェクトは炎上し、失敗する確率が高まります。

人生には3つの坂があるといわれています。上り坂と下り坂、そして「まさか」です。その「まさか」は常に予測できないものです。何が、いつ、どのようなかたちで起こるのか、事前にはわかりません。起きたときは私たちの想像を超えたかたちで起こるのが、私たちが今生きている不確実性の時代の特徴なのです。そのような「まさか」のことを、サブプライム危機を早くから警告し続けていたことで有名になったアメリカの思想家ナシーム・ニコラス・タレブ氏は、「ブラックスワン」と呼びました。

「白鳥は白い」という事実をどれだけ集めたとしても、たった一羽の「黒い白鳥」が見つかっただけで、「白鳥は白いもの」といった常識は一瞬にして崩れ去るからです。常識というのは一見すると堅牢に見えるものの、実はいとも簡単に壊れてしまうガラスのようなものなのです。サブプライム危機や東日本大震災は、まさに「ブラックスワン」そのものだったといえるでしょう。

プロジェクトの不確実性は、ある程度予測できます。それがリスク・マネジメントです。プロジェクトの成果物は唯一無二ですが、それを生み出すプロセスは過去に経験していることが多いからです。したがって、どのようなリスクがあるかは、プロジェクトのスタート段階で予測できるはず。リスク・マネジメントを怠ると、次から次へと問題が発生し、「もぐら叩き状態」に陥ることになります。

プロジェクトには必ずリスクが伴います。プロジェクトにおけるリスクとは、不確実性のことです。リスク・マネジメントとは、すべてのリスクをゼロにするべく試みることではありません。いくつかの絶対に発生してはいけないリスクについては、ゼロにするべく計画を立て、対応策を実施しますが、すべてのリスクをゼロにすることは、コスト面からも実務面からも現実的ではありません。したがって、リスクには優先順位を付け、順位の高いものから重点を置いて対処する必要があります。時には軽微なリスクであれば受け容れる判断も必要となるでしょう。

プロジェクトマネジメントの難しさが理解できれば、それを克服すればよいのです。将棋や囲碁の世界には、常勝のための基本となる「定石」があります。プロジェクトにも成功に導くためのマネジメントの定石があるのです。その真髄をこの本で体感していただければと思います。

5.限界を感じる自己流の進め方

なぜ今までの「経験と感と度胸」だけでは、プロジェクトを思うように進められないのでしょうか。

企業においては、プロジェクトが発足すると、事業部長や部長などのプロジェクト・スポンサーがプロジェクト・マネジャーを任命します。

プロジェクト・マネジャーは、エンジニアの経験が豊富で、そろそろマネジャーができそうと上司に認められた人が任命されます。

たとえばエンジニアとして入社したAさんは、30代後半になると経験も豊富で職場でも活躍し、上司から呼び出され「来年は、会社の将来を左右する重要なプロジェクトが発足する。プロジェクト・マネジャーをやってくれないか。優秀なきみにお願いしたい。よろしく頼むよ」と、こんな感じでしょうか。

Aさんはエンジニアとして優秀で成果も残してきましたが、マネジメントとなると基本的な教育は受けたことがありません。今までメンバーとして参画し、プロジェクトの進め方を見てきただけで、独自で学んだ方法で進めるしかありません。

これが失敗の原因となります。これまでは、メンバーとして自分の考える進め方や方法で思うような成果が出ていたとしても、プロジェクト・マネジャーの立場で運営しようとすると、プロジェクトは計画どおりに進まないものです。ひとつの問題を解決しても次から次へと問題が発生し、「もぐら叩き状態」となります。その後プロジェクトは「デスマーチ(死の行進)」に陥るのです。

プロジェクトは炎上し、メンバーからは不信感が募り、自分には何が足りないのか悩みはじめます。心身ともに疲弊し、うつ病という最悪の状態に陥るケースもあり得ます。自己流の進め方や方法では限界があることに気づかされるのです。マネジメントスキルは別と考えたほうがよいでしょう。

「自己流のプロジェクト・マネジャー」は、自分の強みを中心に、伸ばせる範囲に手を伸ばしていく傾向にあります。とくにエンジニアからマネジャーに任命された場合は、エンジニアリングに関心が偏り、マネジメントが疎かになる傾向にあるでしょう。それに対して「できるプロジェクト・マネジャー」は、プロジェクトマネジメントの全体像を理解したうえで、自分がやるべき仕事を把握するとともに、自分ひとりでは手に負えない仕事をチーム・メンバーとともに解決します。さらに、自分の強みを生かし、弱みとなる部分は得意な人を巻き込んでパフォーマンスを最大化するのです。

できるプロジェクト・マネジャーになろうとすると、プロジェクトマネジメントについてインターネットで調べたり、書籍を読んだりして勉強します。すると、世界標準のPMBOKⓇガイドという書籍やPMPⓇ(Project Management Professional)の資格があることを知るのです。PMBOKⓇガイドを中心にプロジェクトマネジメントを勉強し、1年後にはPMPⓇの資格を取得します。

たとえばソニーのプロジェクトマネジメント研修の受講者からは、次のような感想が寄せられています。

●プロジェクトマネジメントを体系的に学べた
●自分のこれまでの仕事の進め方で不足している部分を見つけられた
●他人の考え方や意見を聞くことができた
●今までの経験や我流でしていたが、まず基礎から体系的に学べた
●プロジェクトマネジメントに関して言葉は聞いたことがあったが、体系的に理解できた。プロジェクト活動以外にも、業務に有効活用できる。

日本にも古くからプロジェクトマネジメントの考え方があります。それは「段取り」です。段取りとは、事が期待どおりになるように、前もって計画的に準備することです。語源は「段取り八分仕事二分」からきています。いい仕事をするためには、段取りが非常に重要です。

似た言葉として「転ばぬ先の杖」「備えあれば憂いなし」がありますが、いずれもリスクに対応する言葉として使用されます。このように、プロジェクトは不確実性の塊に対する挑戦のようなものです。しっかりと事前に準備しておくことが重要になります。

できるプロジェクト・マネジャーは、自身の現在のプロジェクトマネジメントスキルを理解し、体系的に学び、全体像を理解したうえで実践しています。

6.プロジェクト・マネジャーの反面教師

あなたのまわりに、次のようなプロジェクト・マネジャーはいませんか。また、あなたは、このようなマネジャーになっていませんか。

プロジェクト・マネジャーは、プロジェクトの目標を達成するために組織から選出された実行責任者です。成功するか、失敗するかは、プロジェクト・マネジャーの肩にかかっているといっても過言ではありません。目標達成に使命を感じ、自分の役割をまっとうしようとします。プロジェクト体制図では、頂点に位置し、すべての指揮命令系統の責任があり、張り切りすぎて次のような行動をとってしまう場合があります。

《すべて自分が指示しないと気が済まない》
なんでもかんでもすべて自分で判断を下し、自分の思うとおりにならないと気が済まない人

《自分がいちばん優れていると思い込む》
メンバーより自分がすべてにおいて優れていると思い、まわりの意見を聞かない人

《一方的に自分の主張を押しつける》
メンバーを信用せず、常に厳しく接し、一方的に自分の主張を押しつける人

《自分の非を認めず絶対に謝らない》
凝り固まったプライドから自分の非を認めようとせず、絶対に謝らない人

《メンバーの成果を横取りする》
メンバーが行なった作業でも、あたかも自分の功績であるように上長に報告する人

《ミスやトラブルをメンバーのせいにする》
ミスやトラブルが起こったとき、その責任をすべてメンバーのせいにする人

《自分が困ったときには助けを求める》
メンバーの悩みごとや相談ごとには消極的で耳を傾けようとしませんが、いざ自分が困ったときは助けを求める人

《不機嫌さが態度に出る》
仕事がうまくいかなと、イライラして怒りだしたり、髪の毛をかきむしったりして、不機嫌さがすぐに態度に出る人

《約束を守らない》
プロジェクトまたはチーム内でルールを決めたとしても、自分はそれを守らず、その反面、メンバーに対しては約束を必ず守るように強制する人


このようなプロジェクト・マネジャーでは、メンバーはやる気がなくなってしまい、反感をもち、非協力的になってしまいます。このようなプロジェクト・マネジャーを「反面教師」として、あなたはこのような行動をとらないように注意しましょう。

30年ほど前、私が「PlayStation」用の画像LSIを生産するための半導体製造装置の調達業務を担当していた上司は、何件か当てはまるような行動をとっていたため、反面教師として私はこのような行動をとらないように気をつけていました。

反面教師とは、反省の材料となるような人や事例をさします。中国共産党中央委員会主席の毛沢東氏により発案された言葉です。

日本の似たようなことわざに、「人のふり見て我がふり直せ」「他山の石」「人を以って鑑となす」「前者の覆るは後者の戒め」などがあり、日本でも一般にはその意味で慣用される語句になっています。この中でもとくに「他山の石」はよく使われます。これは、「他人の誤った行ないを自分の戒めとする」という意味のことわざです。自分の修養に役立たせる、それを使って自分を磨くといった意味があります。

まわりに悪いお手本があれば、それをチャンスととらえ、自分のとるべき行動を考えましょう。

7.知識や経験だけでは難しい、重要なのは人間力

知識や経験が豊富なのに、なぜかプロジェクトが思うように進まない経験はありませんか。

プロジェクト・マネジャーは、建設業、製造業、サービス業など、その業界の専門知識や経験のある人が任命されます。さらにプロジェクトマネジメントにおいては、「知識力」「実践力」「人間力」の3つのスキルが必要です。

知識力は、プロジェクトをマネジメントするための考え方やツール、技法に関して、どれだけ知っているかです。獲得する手段としては次のような方法があります。

●社内外のプロジェクトトマネジメント基礎研修を受講する
●PMBOKⓇガイド第6版を読んで理解する
●PMPⓇ資格試験にチャレンジするために勉強する
●プロジェクトトマネジメント関連の書籍を読んで理解する
●プロジェクトトマネジメント関連のウェブサイトを検索する

実践力は、学んだプロジェクトマネジメントの知識を実践で応用する能力です。

獲得する手段としては次のような方法があります。

●社内外のプロジェクトマネジメント実践研修を受講する
●ワークショップ形式やPBL(Project Based Learning)形式の体験型学習に参加する
●経験のあるプロジェクト・マネジャーやPMOと一緒にプロジェクトを遂行する
●自分の業務をプロジェクトとして実践する
●ワーキング・グループを立ち上げ、プロジェクトとして実践する

人間力は、プロジェクトマネジメントに関連する作業を行なう際の行動特性です。獲得する手段としては次のような方法があります。

●リーダーシップ、ファシリテーション、コミュニケーション、メンターなど、テーマ別の研修を受講する
●著名人の講演やセミナーを聴講する
●自己啓発本などを読んで理解する
●学んだことを実践で使ってみる
●できていないことを内省し、繰り返し実践する

知識力や実践力は、社会人としてある程度経験を積めば蓄積できるものですが、人間力を身につけることはなかなか難しいことです。しかしプロジェクト活動は、人間の集合体による活動であることを肝に銘じる必要があります。

なぜ今「人間力」が求められるのでしょうか。その理由は、社会やビジネス環境が複雑化し、人と人とのつながりがますます重要になっているためです。コミュニケーション力やリーダーシップ力をもつ人材が企業の成長や変革に不可欠な存在となっており、人間力を高める重要性が増しているといえるでしょう。

グローバル化が進む中で、多様な文化や価値観をもつ人々との関係構築が求められます。人間力をもった人材は、相手の立場や文化に配慮し、柔軟かつ適切な対応をすることができるのです。

AI(人工知能)やロボットによる自動化が進む中で、プロジェクト業務の重要性が高まっています。プロジェクト業務には、創造性や問題解決能力が求められるため、人間力をもった人材は、自ら考え、創造的な解決策を導き出せるのです。

現代のビジネス環境では、単なる命令や指示だけではなく、共感やコミュニケーションを通じたリーダーシップが求められます。人間力をもったリーダーは部下やメンバーの信頼を得て、チームを目標達成に導くことができるのです。

人間力とは何かを考えてみましょう。内閣府が2003年にまとめた『人間力戦略研究会報告書』によると、「社会を構成し運営するとともに、自立したひとりの人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義されています。プロジェクトマネジメントにおける定義は、「プロジェクトをマネジメントする個人の能力に影響を与えるその人の行動、態度、中核となる個人の特質」です。

知識や経験に加えて「人間力」を身につけることで、できるプロジェクト・マネジャーとしてまわりから信頼を勝ち取り、プロジェクトを成功へ導くことができます。

図1は、プロジェクトマネジメントに必要な3つのスキルです。とくに人間力が重要です。

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第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて1月25日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』

■ペーパーバック版(紙)

■Kindle版(電子書籍)

■書籍情報

プロジェクト・マネジャーが、プロジェクトを絶対に成功させるための行動や振る舞いの指南書

プロジェクト、それは「人類の夢」である。
「音楽を外に持ち出したい」「おとなもTVゲームを楽しみたい」「もっと大きな画面で自宅で映画鑑賞したい」「ペットのような愛犬玩具が欲しい」人間は人生を豊かにする願望があり、テクノロジーで夢を現実のものとしてきた。

そんな人類の夢であるプロジェクトを任されたプロジェクト・マネジャーは、独学でプロジェクトマネジメントを学び、見様見真似で実践するが、必ずどこかで限界を感じてくる。

なぜこの方法では思うように進まないのだろうか。なぜメンバーは期待通りに動いてくれないのだろうか。

囲碁や将棋の世界には、常勝のための「定石」があり、何事にも基本的な進め方や方法がある。

基礎を学び応用できなければプロジェクトを成功に導くことは困難である。
知識、ツールや技法を学んで、自身のプロジェクトに応用するが、それでも思うように進まない。なぜだろうと、もがき・苦しむことになる。

本書はプロジェクト・マネジャーが、プロジェクトを絶対に成功させるための行動や振る舞いの指南書である。

今までの「経験と感と度胸」といった俗人的なスキルだけでは、プロジェクトの失敗の確率が高くなる。プロジェクトは人間の集合体の活動といえる。
プロジェクトマネジメントを正しく理解し、さらに「できるプロジェクト・マネジャー」としての行動や振る舞いを身につける必要がある。

プロジェクト成功の鍵は「人間力」、磨く極意がここにある。

【目次】

第1章 プロジェクトの成功と失敗
第2章 必ず成功に導くマネジメントの鍵とは
第3章 9つの要諦でプロジェクトの壁を乗り越える
第4章 人間力を磨くコツ

【購入特典】

プロマネ心得31か条

■著者プロフィール

小山 透

プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト
ソニー一筋45年以上勤務、プロジェクトマネジメントをわかりやすく伝えるエバンジェリストを使命とする。
1978年神奈川県の厚木工場に入社し、業務用カメラやVTRの品質管理を担当、その後プレイステーション用半導体工場や液晶ディスプレイの複数の生産工場立上プロジェクトに参画する。
2011年PMP資格を取得、半導体製品開発プロジェクトのPMO業務に従事、および2012年からは社内プロジェクトマネジメント研修体系を構築するとともに講師を務める。受講者は6,000名以上、好評を博している。
PMI日本支部では、プロジェクト・マネジャーに必要な『人間力』に関して10年以上研究している。

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