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(連載59)縫製の基準をブチこわす荒くれ者:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2008年-2012年頃

本編は、前回の「リメイク・ブランド:5569」の続きのようなものです。



縫製業界の荒くれ者とは、乱暴に縫製作業をこなす人
。。。。。。。。。荒くれ辞典より


荒くれ者は、パッションで縫い物を行います。

荒くれ者は、縫い出したら、途中でやめません。

荒くれ者は、細かいところは気にしないです。

荒くれ者は、技術よりも、心を込める事を優先します。

荒くれ者は、縫った後のことは考えません。

荒くれ者は、他人の目を気にしません。

荒くれ者は、自分の信念で針を操作します。

荒くれ者に「失敗」という概念はありません。

荒くれ者は、縫製を一つの儀式だと考えています。

荒くれ者は、脳内に流れるグルーブ感を信じます。

荒くれ者は、縫い目の美しさより新鮮さにこだわります。

荒くれ者は、現状に満足してないチャレンジャーです。

なので、荒くれ者は、縫製の概念を徹底的にブチ壊します!

荒くれ者は、世界を変えるのは自分しかいないと思っています。

荒くれ者は、ノートのフォロワーの数字など気にしません。

でも荒くれ者は、そこそこ社交的です。

荒くれ者は、安いワインが好きで、毎日、飲みます。

荒くれ者は、そのワインといっしょに柿の種を食べます。

さて! もう、皆さん、お分かりでしょう??


その荒くれ者とは、

もちろん、アタクシで~す!!

しゃき〜〜ん!!


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そして、

この荒くれ者って、

縫うのがクッソ下手なやつ

の事ですわ。苦笑

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私の青春時代にさかのぼりますけど。

高校を卒業し、将来どうしようか?と、いろんな学校にいったんですが、すべて中退。。。トホホな学生で、その中でも、唯一卒業できた学校が、新宿の「文化服装学園」というところでした。

幼い頃から服は好きでしたし、時は70年代後半。パリよりもニューヨークがイケてる時代。アンディ・ウォーホルのインタビュー・マガジンや スタジオ54のディスコが全盛。文化服装学園は、その名のとおり服の学校ですから、派手な人もたくさんいて、そんなチャラチャラしたファッションの世界に足をふみいれたようで、とても楽しかったのですが、

「縫う」とかいう、超ジミーーい、な作業もあって、これが無茶苦茶、苦手でした。

宿題でポケットやファスナー付けなどの「部分縫い」ってものをやらされるんですが、全部、クラスメートにやってもらってました。しかし、それが、いつの間にか先生にバレてて、「あなたは縫製者には向いてない」と、きっぱり言われました。別に先生から言われなくても、そんなん自分でも、十分わかっとったわ。。。。



それから、あっという間に40年経った、、、、(早っ。わずか3行!)


ウチらの年齢になると、そんな記憶は、遠いの昔の事で、ほとんど忘れるわけですよ。爆笑

私が今言いたいのは、ここから、大事です。

20代、30代の方!はたまた、40代、50代の方にメッセージですが。

苦手な事は誰にでもある!

そんな事は気にすんな!!

って事ですよ!!

自分に向いてる事、自分が得意な事!

それだけに集中する!!


人生、残りわずかになった今こそ、

この言葉をワカモノに残したいと思います!


パチパチパチパチパチパチ

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ご清聴ありがとうございました。

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ま、ともかくですね、40年前は縫うのが超絶苦手だったこの私が、自分でミシンを踏んで、古着のリメイクで、マネタイズ、生活できるようになったわけです。

これは、なぜかというと、リメイクは単なる修正ですから、制作するのに技術があまりいらないんです。ファスナーをつけたり、ボタンをつけたり、袖をつけたり、袖口の始末をしたりなど、できないところは、すっ飛ばす!事ができるからです。

それに加え、私は荒くれ者ならではの、自分のやりかたを考案したんです。

それは哲学的に申しますと、縫うとは何か?

〜と言う根本原理に立ち戻った。

衣服とは二つの平面(生地)がくっついて、立体になる。つまり服って、平面のどこかがくっついてれば、着れるんです。

で、そのくっつくっていうのは、別にくっついてたら、なんだって、いいわけですよ〜〜。それが曲がってようが、表面がひきつってようが、関係ないのです。

それで、私は「ジグザグ縫い」を採用しました。

これです。行ったり来たりするやつ。


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まるで3歩進んで2歩下がる私の人生のような縫製方法!!

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前回のピーコートでお見せした時に、プロの方はもう、すぐにわかったと思いますが、ともかく私はジグザクを多用しました。タグもなにもかも、ジグザグで縫いました。

ちょっと比較したところをお見せしますと。これが普通の縫い方。肩からそでに袖にかけて。

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ジグザグでやるとこうなります。

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ジグザグは曲がっても、あんまりわからない。

でも、しっかりと、頑丈に縫製されるんです。

しかも、生地がつって、ぐちゃぐちゃになっても、キャラが出て、なんか憎めません。苦笑

荒くれ者にピッタンコ!!


これは、音楽をやっている方からすれば、パンクな縫製方法とも言えます。

一旦、ミシンを踏んだらその勢いで、最初からおわりまで、駆け抜けます。っていうか、縫い抜けます。

ちょっとくらい縫い目がまがろうが、関係ありません。

まがってても、人間が縫ってるんだから、当然です!


また、日本の伝統的に言えば、踏ん切りのいい

「ってやんで〜」な 江戸っ子縫製!

ダメならダメ。いいならいい。もう、いちいち細かい事を言うのは、野暮というもの。

針が飛んだら、飛んだで、何が悪い?

上からもう一回縫えばいいだけ。

ミシン目で、生地がたくれてしまったら、

それはそれで、表面の表情が豊かになる。

これこそ、玄人にしかわからない「粋」というものです!!


ただし、一見、めちゃくちゃに縫ってるように見えるこの方法でも、服のシルエット=パターンに影響がないこと、そして、素材選びには、ものすごく時間をかける。これは言うまでもありません!

最低これがあっての、荒くれ者として、名乗る資格があるというもの!

縫製が下手くそだからこそ、それ以外は、ハイクオリティ、高品質にこだわるべきである。(荒くれ委員会、会長 ルンナより)


このジグザグ縫製方法は、運良く、いろんな人に気に入ってもらって、私のリメイク・ブランドの5569のトレードマークとまで、なったのでした。そして、2008年からビジネスはどんどん軌道にのっていった。

しかし。

前にも申しておりましたが、このリメイクの仕事がうまくいけば、いくほど、他の事もやらなくちゃ、、、と思う。

なぜならば、自分はコマーシャルアートの才能はないとわかっていたからです。この回顧録の最初の方でも詳しく書きましたが、私は80年代の東京で、コマーシャルアートの世界にどっぷり。ものすごい量の仕事をやって、そして、わかったのは、自分はいわゆるデザイナーとしてやっていくには、アイデアの引き出しが少なすぎる、という事だったんです。

なので、同じ過ちはしたくない。

この荒くれ者の感性で、縫製もろくにできない私でも、リメイクの仕事でうまくいったのは、

たまたま時代がフィットしただけの事。

それがわかっていました。


もともとファッション・ビジネスとは、資本主義社会の中でどんどん消費されてゆくものを作り続ける。たとえそれがリメイク=リサイクルの服でも、結局はファッション・ビジネスの枠組みの中のものです。

ある意味、古着をトレンディに修正するという分野は、当時は十分にファッション・ビジネスのアウトサイダーでしたが。汗

ただ、洋服は「着るアート」だと、たくさんのデザイナーやクリエーターが申しておりますし、ワタクシも、同感ではありますが、ここで、再確認しておかないといけないのは、アートとビジネスは別モノって事です。

自分が作ったものが全部売れた!という事実に調子こいて、ファッション・デザイナーの才能があるんだ!なんて勘違いしないように。そして、ビジネスに追われて、肝心のやりたい事を見失わないように、、、、と。

意識的にファッション・ビジネスとある程度の距離を置き、コマーシャル・アートとファイン・アートの中間というポジションをしっかりキープする事が大事だと思いました。

だから、リメイクの仕事がうまくいけばいくほど、バンド活動やパフォーマンスも同じくらいに爆進し続けた。

自分はパリピー(パーティーピーポー)畑の出身のだったので、その特性を活かして、ド派手に自分の荒くれソーイングを実演し、縫製の基準をブチこわしたとこを、一般の人々に見せびらかしたくなったんです。

その話は、次回に!!

でわっ!

L*









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