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【読書】今村夏子著『とんこつQ&A』


あらすじ

真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。

大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)

姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)

人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!

「講談社BOOK倶楽部」より

感想(ネタバレ有)

「とんこつQ&A」

一言で表すなら、「ゆるこわ」。

すごく簡単な言葉で描かれていて、実際ひらがなが多いように感じた。その分、終盤の怖さが際立った。

正直、結末は「どういうこと?笑」という奇妙さもあるのだが、その理解できなさそのものが怖い。

「嘘の道」

「消えていなくなる」。伏線の回収が一番綺麗だったように思う。

「良夫婦」

読みながら、勝手にもっと怖い展開を覚悟していた。

もちろん夫婦どちらの行動に対しても、「おいおい、それは…」と突っ込みたくなる。ただ、緊急事態となった時に「なんとかする」という言い方をする場面はよくあるので、日常の延長にあると言えなくはない。

そのことが怖かった。

「冷たい大根の煮物」

4作の中で唯一、怖くなかった。笑

芝山さんのことをどう捉えるかは、人によって違うかもしれない。

金額が10万円とか100万円なら悪者に映るだろうが、1万円だったら自分なら笑い話にできるレベル。

芝山さんの、料理を作ることに徹しているドライさが良い。居なくなるまで愛想良く振舞われていたら、裏切られた感は強かったかもしれない。

また、噂を鵜呑みにせず、自分で接して人を見極める「わたし」のスタンスに好感を持った。

芝山さんとのことをきっかけに、「わたし」が料理を楽しめるようになったのも、本著の締めとしては前向きで良かった。

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