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【要約③】男性危機ーメンズクライシス?国際社会の男性政策に学ぶ(著:伊藤公雄 他)

今日は、男性危機(メンズクライシス)?より、第3章「男性対象ジェンダー政策の国際的動向」です。

これまでに1章「『男性主導社会の終わり』を前に」、2章「危機に直面する男たち」を要約しており、下記のマガジンでまとめています。


男性にとってのジェンダー平等

  • ジェンダー政策における男性の「発見」
    長らくジェンダー平等政策において男性はその対象ではなかったが、2000年代以降、ジェンダー平等には男性が変わることが必要であると認識されるようになった。同時に、男性性という既存の社会規範により男性も苦しんでいることから、男性にも女性と同様にジェンダー平等が必要であることが認識されるようになった。

  • ジェンダー平等は男性を必要とする/ 男性はジェンダー平等を必要とする
    ジェンダー問題は女性問題と同一視されてきたが、実際には男性不在の社会においてジェンダー問題は解決しない。ジェンダー平等は男性の変化とそれに向けたアクションがあってこそ実現する
    一方で、既存の社会規範の中で、男性はある種の特権を得ることと引き換えに、長時間労働や男性的なふるまいを強制されてきた。ジェンダー平等が実現すれば、男性はより質の高い社会生活を送り人間性を取り戻すことが出来るだろう。

  • 男性内の多様性
    男性の中にも差異や不平等がある。インターセクショナリティの観点が益々重要になっている。

国連とEUのジェンダー政策における男性への焦点化

  • 国連のジェンダー政策
    国連のジェンダー政策において男性が登場したのは1995年以降である。2000年以降には男性や少年がジェンダー平等の主体となるように、その役割を規定し始めている。

  • EUのジェンダー政策
    基本的に国連に足並みを揃えている。「ケアする男性性を育む」という観点で各種政策を展開している。

国際NGOによる活動の展開

  • ホワイトリボンキャンペーン(WRC)
    2000年代以降カナダで始まった。DVなどをしない、一般的な男性をキャンペーンの対象とした。差別的な社会構造に声を上げる責任に対しる認識を広げるためである。

  • メンエンゲイジ・アライアンス
    「男であること」の意味を転換させることを目的としている。即ち既存の男性的な社会規範から、尊敬と平等に基づく基づく関係の構築を目指す男性像への転換。

ケアする男性

  • ケアリング・マスキュリニティ
    稼ぎ手役割を中心とする従来の男性像に変わり、伝統的に女性の役割とされてきたケアに積極的に関わり、ジェンダー平等に寄与するポジティブな男性像として定義される

  • ケアする父親
    国際的なジェンダー平等政策において、ケアはほぼ例外なく育児に限定されている。一方で日本では、看護や介護も含めた広義のケアとして認識されている。

  • ケア概念の拡張
    国際的なジェンダー平等政策におけるケアの文脈は、育児限定から広義のケアへと拡張される必要がある。それは、日常生活における身近な他者へのケア、製造業からサービス産業への転換によるケア労働市場の拡大という観点でのケア労働、男性が自らの心身をケアする観点でのセルフケアである。

ジェンダー政策の対象としての男性

  • 男性がジェンダー平等政策の対象となった背景
     ・女性の地位向上には男性の参画が必要だから
     ・男性に権益を集中させる社会構造の「支配のコスト」の大きさ(不健康、人間性の喪失など)

  • 政策の特徴
     ・男性性の研究の結果を踏まえ、多様な男性の意見に配慮している
     ・男性に変化の動機付けを与える実用主義的なアプローチ、ポジティブなトーンの採用




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