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博士がゆく 第21話「寒いと実験がうまくいかない⑤」

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それでは本編をどうぞ。
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前回のつづきから)

「普通のSDS-PAGEバッファーにはDTT(Dithiothreitol)という還元剤が入っているよね?このDTTがタンパク質のジスルフィド結合を切ることでタンパク質の3次構造がほどけて直鎖上になるんだ」

博士(ひろし)もDTTが入っているのは知っている。SDS-PAGEバッファーから漂う魚の腐った匂いの正体だ。

「ひろし君はタンパク質複合体を検出したいのにDTTを含んだSDS-PAGEバッファーを使ってもいいのかな?」

「たしかに。ある程度タンパク質の3次構造は保っておいた方が俺の実験にはあっている気がする。でも実家に帰る前はこのバッファーでうまくいってたんだぞ?」

「本当に実家に帰る前と同じSDS-PAGEバッファーを使っているかい?」

そう言われて博士はラベルを確認する。どうやら同期の学生が、博士が帰省中に新しく作ってくれたようだ。

「誰かが新しく作ってくれているなら、きっとDTTもフレッシュなんだね。DTTは強力な還元剤だから、その分酸化されやすく、失活しやすい」

「おそらく、帰省前にひろし君がつかっていたSDS-PAGEバッファーのDTTは失活していたのかもしれないね」

「そうか。じゃあ単純にDTTを抜いたSDS-PAGEバッファーを作って見ればうまくいくかもしれないのか?」

「そうだね。それかNative-PAGEバッファーを作ってみるのもいいかもしれないよ」

「SDSも含まれてないから、よりタンパク質の3次構造を保った状態で電気泳動を行うことができるね」

さっそく博士は「Native-PAGEバッファー 組成」とGoogleで検索してみた。一番上に出てきた組成を参考にして作ってみなくてはならない。

「わかった。どっちも試してみる」

「今日もありがとな」

「お安いごようさ!」

そういうと細胞くんはもぞもぞと生理食塩水の風呂からはい出た。

「そろそろ他の研究室でも実験に悩んでいる学生がいる気がするから、僕はもう行くね」

「ああ。寒いから気をつけていけよ」

「次の研究室についたら早速インキュベーターに入らなくちゃならないね」

「生理食塩水も持っていくか?」

「次のラボでは50℃じゃなくて37℃のインキュベーターに入るから大丈夫さ」

「あ!!!」

急に細胞くんが博士の背後に指(?)を指して大きな声を出した。

「ん?」

細胞くんが指さした方向を博士は見るが、特に変わったところはない。

「何もないじゃないか」

振り返ってみると、細胞くんはすでにそこにはいなかった。

「去り際を見られたくないのか?」

博士はふと不思議に思ったが、そんなことよりも早く実験に取りかかりたい。先ほど見つけたNative-PAGEバッファーの組成を印刷するために、博士は自分のデスクへと向かった。

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