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自律自転な人を育て 未来組織図を埋める:Galapagos Supporters Book⑨(後編)

シリーズAで累計13億円の資金を調達したAIR Designのガラパゴス。
そこには株主や顧問、社外取締役という形でガラパゴスを支える、たくさんの支援者の存在があります。
ガラパゴス・サポーターズブックでは、そのような外部の支援者と、ガラパゴス代表・中平の対談を通して、ガラパゴスとAIR Designの魅力をお伝えしていきます。

本記事は、シリーズ第九弾・中尾マネジメント研究所の中尾さんとの対談記事の後編です。前編については、以下よりご笑覧ください。

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相性まで可視化する人材マネジメント

中平:中尾塾で学んだことがもう1つ、「相性」についてなんです。よく中尾さんは上司や仕事の相性を見極めようと仰いますよね。僕も自社のマネジメントについて考える際に重要視している要素なのですが、やはりリクルートでのご経験によるものでしょうか。

中尾:リクルートテクノロジーズにいた時の話なんですけどね。例えばエンジニア採用って大変じゃないですか。

中平:それはもう、大変です。

中尾:大変な思いで採用した人が辞めるのが一番痛いわけで。テクノロジーズのエンジニアってすごく離職率低いんです。当時一桁台の前半というありえない数字なんですよ。

中平:一般的には流動性高いですもんね。エンジニアって。

中尾:そうそう、で、過去の事例などから辞める理由を調べてみたら、結局上司とプロジェクト。つまり相性と仕事内容なんです。それなら異動すればいいわけで、やることは簡単じゃないですか。「上司と揉めた」とか評判がたてば居心地悪くなりそうだけど、当時プロジェクトベースで人をアサインしていて、毎月のように人事異動があったので別に誰も気に留めないんですよ。500人くらいの組織で、毎月10人20人異動しているから、なんとなく「誰か動いてたよね」とかその程度なんです。

中平:当たり前のようにやってしまうわけですね。

中尾:この手の話をすると、「メンバーのワガママに付き合うのか?」って言う人がいるんだけど、「いやいや、働いている一人一人のことを本気で考えているだけで、どうしてワガママとかそういう話になるんだ?」と思いますね。

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中平:それは仰る通りですね。ちなみに相性の良し悪しってどのように可視化というか、判断していたんですか。

中尾:いろんなやり方がありますが、例えばリクルートは360度サーベイが大好きなんです。よくあるパターンのひとつとして、部下やメンバーから「仕事に関しては信用していますが、人として嫌です」って言われたりするわけですよ。優秀でなければポジションとして上席にはあがってないから仕事面は問題ないとして、「人として」の部分は当時の中尾塾に入れてちゃんと教える、ということをしてましたね。

中平:なるほど。他に、例えばメンバーの相性などを含め人材マネジメントについて検討する会議体があるとか?

中尾:半年に1回、「能力開発委員会」という場を設けていました。1番の能力開発は異動、つまり新しいミッションを与えるって話なんだけど、それをサポートする上司やメンバーは誰かを確認するんです。「相性が悪い」という話が出てきた際には、具体的なファクトをヒアリングして対応していました。

中平:定性的に見て相性悪そうって関係性に対して定量的なファクトを押さえて異動を考える、これを半年に1回は必ずやると。いまの時代にめちゃくちゃ合ってる考え方ですよね。ガラパゴスはそのあたり完全に自己流なので、組織についてリクルートのノウハウを学ばせてもらえる中尾塾に感謝しています。

運命の一冊が結んだ縁と、未来のための余白

中平:他にも、中尾さんに本当に感謝していることがありまして。中尾塾で運命の一冊、遠藤さんの「現場論」(ローランドベルガー前会長遠藤氏の著書:現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践)を知ったんです。読んだ時、下手したら泣いてたかもしれないです。40歳手前で読んだからこそ響いたと思うんですけど、「これはすごい、絶対本人に会わないとダメだ」って、心の底から思いました。それで、「もしかして遠藤さんとお知り合いですか...?」と中尾さんに聞いたんですよね。

▲遠藤さんと中平の対談記事。組織運営の哲学が示されています。

中尾:そうそう(笑)僕も遠藤さんは大好きで。「見える化」って言葉を実際につくった人ですよね。彼が会長だったローランドベルガー社にリクルートテクノロジーズのコンサルティングをお願いしたことがあって、その時No.2の方と仕事していたんです。そんなご縁もあったので中平さんから依頼されて少しガラパゴスのことを頭出ししてみたら、遠藤さんご本人に紹介してくださったんですよ。

中平:薄い線をしっかりつないでいただいて(笑)僕にとっては雲の上というか、アイドルみたいな存在でしたから。お伺いした方がいいですよね、って中尾さんに相談したら「会社を見たい」と仰っていただいて。

中尾:やっぱり「現場論」ですね。

中平:そう!オフィスへお越しになるというので、どうしよう、何を話そう、とにかく感謝を伝えようと。「感動しました、本当に感動しました」と。中尾さんにもご同席いただきましたよね。

中尾:説明資料の1枚目がものすごくチャーミングだと思いましたよね。あれで遠藤さんも「助けてやろう」と思ったんじゃないですかね。

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▲当時の説明資料。シンプルな一文に中平の想いが溢れています。

中尾:遠藤さんがいらっしゃる前にちょっとだけ見せてくれましたよね。このページがあるか無いかで全然違ってたと思いますよ。

中平:すごく考えたんですよ。何か一言、とすごく考えた結果、ストレートに言うしかない。「応援してください」って。遠藤さんは愛犬家なので、「犬みたいなもんです」って(笑)でも「僕らの支援を楽しんでいただけるだけの、圧倒的な成長をお約束します」と伝えて。そこから1年以上、毎月顧問として「いいんですか」っていうくらい学びをたくさん頂いてます。

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中尾:デンソーさんも一緒に行きましたもんね。

中平:あの工場見学は本当に、日本の製造業の強さを実感させてくれました。インセンティブなしで改善できることがやはり日本人の強さなんだと。

中尾:そうですね。面白かったのが、「なぜイノベーションを起こし続けれられるのか」という質問に対して、「時間の余裕があるから」というような回答をされたという話。

中平:そうそう、部長クラスの方だったと思うんですが、「生み出す時間があるからですね」って仰っていて。

中尾:Googleの20%ルールと同じですね。

中平:余白ですよね。自分自身にも問いかけなきゃいけない。こんなにスケジュール詰め込んでていいのか、テレカンばっかりでいいのかとか。

中尾:未来のことを考える時間を捻出するのは、みんなどこかでぶつかるテーマですよね。今の事だけで良いんだったら、別にそんな時間いらないんだけど、それだけだと自転車操業で行き詰まるから。

中平:毎週のグループコーチングで、「中平くん未来のこと考える時間取れてる?」と、2~3ヶ月に一回言ってくださるのが、すごくありがたいんですよ。

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未来の組織図を描き、マネジメントを育てる

中尾:テクノロジーズの時、僕自身元々エンジニアでもなくパラシュートの社長だったんですよ。でもリクルートグループのITをどうするか描くのが自分しかいないから、いつも未来のことを考えていました。

中平:すごいですよね。まさにマネジメントマネージャーというか。

中尾:スーモカウンターのビジネスを伸ばして良い感じだった時にテクノロジーズの社長に任命されたんですよ。「リクルートグループはITで勝つから」と言われて、最初意味がよくわからなかったんですけど(笑)

中平:非エンジニアがエンジニア組織のトップにいきなり入ったら、信頼関係を築くの大変ですよね。

中尾:大変でしたね。人間ドックで胃潰瘍になった痕がありましたから。まあ自然治癒してたんですけど(笑)前任の社長が素晴らしい人で、デジタルマーケへの理解も深く、マネジメントや社内政治も強かったから、引き継ぐことへの不安はありました。でも分社化されて間もないこともあり、戦略も明確になっていない状態だったので。「ITで勝つ」ということの定義をして、その実現が最も重要なイシューとはっきり決めたことがよかったのかなと思います。

中平:「組織からの期待」と「本人の要望」がずれることもある気がするんです。例えばエンジニアの場合社員がマネジメントより専門職として技術を磨くことを望むとか。そういう場合はどうされていましたか?

中尾:優秀なIT人材をたくさん集めることでしかイシューが解決・実現できないから、結局3年間で400名ぐらい採用して550名くらいの組織になったんですけど、そうなるとどうしてもミドルが必要で。中平さんにも以前伝えましたが、半年後、一年後の組織図を作ると、中間管理職人材が全然いないことがわかるんです。

中平:このままじゃ足りないと。

中尾:そう。そこで管理職人材を育てるためにスーモカウンターでやっていた「中尾塾」を再びやるわけです。エンジニアって、技術への興味はもちろん、学ぶこと自体好きな人が多いから。「マネジメントはスキルだから、身に着ければできる」「お前以外にできそうなやついないじゃん、頼むわ」って丁寧に声をかけてました。

中平:本当にそれですよね。「マネジメントはスキルである」ということを学ぶのが好きなエンジニアに伝えるという合理的な話に加えて、最後は情理も必要。

中尾:そう。「頼む。君にしかできないやん」って。

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中平:中尾さんの教え通り、数年後を見据えて「未来の組織図」を作ってみると、本当に組織や人材イメージの解像度が上がるんですよね。

中尾:「このポジションに就く人がいない」とか見えてきます。中途で採用しようとしてもカルチャーフィットを考えると、適任者はすぐには見つからない。早めに育てていく必要はありますよね。

中平:まさにガラパゴスが今130人で、3年後に500人を目指すフェーズなんです。「マネジメントはスキルである」という考え方をガラパゴスらしく科学して、学びながら探求しようと「ガラパゴスマネジメントスタイル」を作りました。僕、いまマネジメントがすごく楽しいんです。40年で初めて学んでいるので。このフェーズだからこそ、楽しめると思っています。

ーー最後に中尾さんからガラパゴスに興味を持ってくださっている方にメッセージをお願いします。

中尾:僕はすごくガラパゴスのファンなんです。なぜって、革命を起こそうとしているんですよ。デザインの業界に対して、プラットフォーム・ノウハウ・データを提供することで生産性と賃金を一気に上げようとしている。かつ、再現可能な「型」のモデルを作っているので安定性・持続性もある。これは日本だけじゃなくて、世界中のデザイナーに共通する話ですし、国も業種も横展開できる可能性があると思います。日々変化していくと思うので、そういう環境に面白さを感じられる人はフィットするんじゃないですかね。それこそリクルートで活躍できるような人は、ガラパゴスで確実に活躍できると思います。あと、創業メンバーの3人が本当に仲良さそうなんですよ。良いサービスを作っても経営層の関係が悪いと続かないですから。ガラパゴスはそこに大きな信頼関係があるのが伝わります。

中平:元リクルートの方で、直接の連絡が憚られる方は中尾さん経由でも構いません(笑)お待ちしております!

ーー中尾さん、ありがとうございました!最後まで読んでいただいた皆様、ぜひご連絡お待ちしております。

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▲常に全力で経営者と向き合う中尾さん。多くの卒業生が輝ける組織づくりに邁進しています。

▲中尾さんの新著。G-POPマネジメントをはじめ中尾塾のメソッドが詰まった一冊です。

ガラパゴスでは、デザイン産業革命に取り組むメンバーを募集中です!

(文責:武石綾子・髙橋勲)