4社経験してわかった。知らないと損する、デザインレビューの本当のメリット
はじめに
グロービス学び放題でデザイナーをしている前嶋です。
早速ですが、みなさんのチームでは「デザイナー同士でレビュー」をやってますか?
エンジニアやPMとはやってるけど、デザイナー同士でやってない。 そんな方も多いんじゃないでしょうか。
→そもそもデザイナーって人数が少ないですよね。
わたしは今まで4社でデザイナーをやってきました。 役割としては、デザイナーだけでなくマネージャーとして、採用や教育にも携わってきました。
過去3社での経歴は以下の通りです。
制作会社でデザイン本部(約100名)の責任者
ヤフーO2O領域のデザイン責任者
アンドパッドのデザイン部門長
それぞれの組織でデザインレビューのやり方を、
求められるカタチに合わせて変えてきました。
その変遷と現在進行系で、
グロービスでどんなデザインレビューをやっているかをシェアします。
デザイナー同士でレビューをしたい。
レビューしてるけどいまいちうまくいってない
レビューの時間をうまく活用できてない
レビューのメリットをあまり感じられない
そんなチームに少しでもお役に立てるとうれしいです。
制作会社時代のデザインレビュー
まず最初に制作会社時代のレビュ–についてです。
制作会社の時にはチームリーダーが、
デザインの品質に責任をもっていました。
※リーダーのOKがでないと、先方確認やリリースができない。
一言でいうと「関所」ですw(以下リーダー関所方式)
メンバーのメリットは、品質面で安心感を感じること。
→いわゆるダブルチェック
一方、デメリットはズバリ「面倒臭い」ことです。
レビューの結果次第で、
想定外にデザインの修正が必要になることもあります。
→特にデザインの引き出しがない新人にとっては、ボールをすぐに返せないことが多い。
そのため、作業時間の見積もりがしづらいのが辛いところでした。
納期がギリギリであればあるほど、想定外のタスクが増えてしんどいです。 その結果、残業や徹夜でギリギリ完成することもしばしば。
その後リーダーになり、レビューする立場になると、中途半端な品質でクライアントに見せられない。 そんなプレッシャーの中でレビューをしていました。
制作会社におけるデザインのプライオリティは高いです。 お客さんの信用を落としかねないので、レビューは時に1時間位かけてやってました。
制作会社時代のデザインレビューは、主に「見た目」のレビューがメインでした。
※UXも見てはいましたが、深くは見れてなかった。
→理由は後述
リーダー関所方式のレビューのメリットは2つ。
デザインの品質が一定以上保てる
リーダー・メンバー両者のスキルアップ
前者の品質はチームに未経験のデザイナーがいても、一定の品質が保てます。
後者はフィードバックによりメンバーが成長します。
フィードバックする側も受ける側も双方が成長するわけです。
リーダー関所方式のデメリットは、リーダーのスキルに依存することです。
そもそもスキルが低ければ品質は安定しません。
また、1人の人間が判断するので、好き嫌いはどうしてもでる。
わたしも気をつけてはいましたが、
人間なので気づかないうちにやらかしてたはずです。
また、前述したとおり、UXについては深くレビューできませんでした。
事業会社の中の人に比べると、どうしても事業に対する解像度が低い。
これは一次情報に触れられないという点が大きかったです。
→基本的に発注者を介して情報をインプットしなければならないため。
また制作会社で働く機会があれば、
複数人で意見を出し合いながらレビューします。
レビューは1人に見せるより、
複数人でやるほうが多面的な視点で見れるので良いです。
ヤフー時代のデザインレビュー
2社目はヤフーです。
私が関わっていたのは、「ヤフートラベル」と「ヤフー飲食店予約→現在はサービス終了」でした。
ヤフーでわたしは、レビューのやり方を変えます。
なぜかといえば、 ヤフーに転職して感じたことは「(デザインに求められている)ゴールが違う」と感じたからです。
→トラベルも飲食も予約がゴールでした。
制作会社はサイトを納品することがゴール。
でもヤフーは、サイトを使って売上を上げていくことがゴールです。
事業会社であるヤフーは、サイトを活用してビジネスを展開することが目的です。
デザインはあくまで「手段」にすぎません。
そこでレビューの観点を変えました。
「デザインの見た目」ではなく、いかにユーザーにわかりやすく、 購買する敷居を低くするか?という観点に変わりました。
そして何より、事業のKGIやKPIを達成できるか?という観点でもレビューすることにしました。
→当時はCVRが数値目標
つまり、ヤフーのレビューは「数値にいかに貢献するか?」という観点を一番大切にレビューをしてました。
部門には約15名のデザイナーが所属。
領域はそれぞれ異なりますが、全員トラベルや飲食のデザイン担当です。
そのため、ドメイン知識は制作会社と比較しても当然高く、
UXを考慮したレビューにも時間をかけることができました。
例えば「Aから流入しててリピーター向けの施策なら・・」とか、点ではなく線(導線)を踏まえて、UXをより深く考えることができました。 この流入経路であれば、ユーザーはこんな前提でこのページに来ている。 であればこっちのほうが・・といった具合です。
同じプロダクトを担当するチームの場合。
ドメイン知識が高い。そのため短時間で深いレビューができます。 よって、品質UPに議論を集中させやすいのが一番のメリットでした。
デメリットは少ないです。
が、あえてあげると・・忖度なしの意見が出にくかったです。
担当外のプロダクトであれば、無邪気に意見ができます。
でも自分が担当するプロダクトとなると、つい遠慮するメンバーが多かったです。
アンドパッド時代のデザインレビュー
3社目はアンドパッドです。
アンドパッドは建設の現場監督や、職人さんが使うサービスを作っています。施工管理や、チャット、発注、精算周りなど多岐にわたる。
ヤフーと同じく事業会社でしたが、違う点が2点ありました。
業界特性の深い理解や、専門的な知識が求められる。
メンバーはそれぞれ別プロダクトを担当している。
建設業界の特性や現場監督・職人さんに対する深い理解が求められます。
※決してヤフーが専門性を求められないというわけではないです。
ユーザー(現場監督さんや職人さんなど)になれないので解像度アップに苦労するという意味です。
また、担当者によって担当するプロダクトが違います。
この専門性の高さと担当するプロダクトが違うことによる苦労もありました。
ヤフーの自分のチームは同じプロダクトを担当していました。
そのため「前提」の共有は簡単でした。
一方、アンドパッドはレビュー時に前提を揃えるのに時間がかかります。 「前提条件の共有」で、予定していたレビュー時間を使い果たすこともありました。
背景を理解できれば、きちんとレビューができにも関わらず、情報共有に時間がかかってしまう。
そのため、ヤフーの時ほど短い時間で、
芯をくったレビューができないのが悩みでした。
この問題は、Slackで前提となる情報を事前に共有することで解消しました。
レビューには前提を確認して臨む。とはいえ、わからないこともあるので、それはレビュー時にサクッと確認。後半でデザインのレビューにしっかり時間を使う。そんな感じでやっていました。
アンドパッドでのレビューのメリットは、他のデザイナーがやってることが共有できることでした。
担当プロダクトが違うため、レビューの場で「こんな機能開発してるんだ」と初めて知ることができます。
一方、デメリットは前述のとおり、前提条件の理解に時間がかかることでした。
とくにアンドパッドは、専門性の高いドメイン知識が求められるため、時間がかかりました。
グロービスにおけるデザイナーズレビュー
そして、お待たせいたしました。
本題のグロービスのデザインレビューです。
グロービスのデザインチーム体制について
私が所属する「受講者体験開発チーム」のデザイナーは4名(うち1名は育児休暇中)
グロービス学び放題というサービスのデザインを担当しています。
アプリとWeb(PC/SP)があります。
※1月には業務委託さんが1名増えて5名体制の予定。
→グロービス社内には20名以上のデザイナーがいます。
開発のすすめ方
スクラムでチームに分かれて開発をしています。
デザイナーは各スクラムにはいり、POやエンジニアとチームで動きます。
特にPOとデザイナーは二人三脚です。 ふわっとした要件をPOと壁打ちしながら、少しずつデザインに落とし込みます。
当然ここでもデザインレビューはします。 でもわたしたちは「デザイナー同士のレビュー」も実施しています。
グロービスではレビューの目的を下記3つを定めています。
デザイン作業の進捗確認
デザインに漏れや矛盾の検知
デザインパターンの多様性担保
でも実際やってみると、品質向上だけがメリットではないと感じます。
それは、「デザイナーはみんな孤独だ」ということです。
グロービスのデザイナーはフルリモートで働くメンバーが多いです。
これは他の職種も一緒です。デザイナーは人数が少ないんです。
エンジニアなどと違って、相談する相手もなかなか少ない。
デザインツールはFigmaを使っており、Slackでコミュニケーション。 Miroでアイデアを形にしつつ、POとデザイナーがやり取りして プロダクトをつくっていきます。
デザイン作業の進捗確認
他のデザイナーが何やってるか知らないってあるあるじゃないですか? これはデザイナーズレビューで一発解決です。 お互いの作業が確認できますし、必要に応じてリソースの相談もできます。
各デザイナーは別のスクラムに参加しています。
そのため普段はお互いの進捗が把握しづらい。
デザインレビューでどんな作業をやっているかは一目瞭然です。
デザインの漏れや矛盾の検知
デザイナーズレビューで一番価値があるのが、 漏れや矛盾のチェックです。
デザインのあしらいのチェック。 「こうすればわかりやすくなるのでは?」「なぜこうなっている?」など、デザイナー観点で議論をします。
議論を通じてデザインのブラッシュアップをしていきます。
加えて悩み事があれば、みんなで相談しがら議論しています。
デザインのガイドラインの相談など、コミュニケーションが増えることでお互いの悩み事を相談することも増えました。
やはり感じるのはデザイナーってみんな孤独で悩んでるんです。
デザインパターンの多様性の担保するため
グロービスではデザインのコンポーネント管理をしています。
これらの範囲内でデザインをするか、新規パーツを作るか。 これもみんなで判断したほうが早いです。 特に新人さんがいる場合、ベテランも含めて議論するほうが早い。
デザインパターンの認識もメンバーそれぞれ違います。メンバーがサポートしあい、「その要件ならこのデザインがいいんじゃない?」と議論してます。
心理的安全性の確保について
レビュー時には「心理的安全性」を大切にしています。
わたしたちのレビュー対象は人ではなくデザインです。
過去にネガティブなレビューで、「人格を否定された」と勘違いしてしまうメンバーがいました。
→グロービスの話ではありません。 →当時はコミュニケーションをとって問題は解消しました。
レビュー時の注意事項(一例)
頭ごなしに否定しない
お互いにリスペクトしあう
レビュー対象は人ではなくデザイン
レビュー観点をすり合わせる
KPIを主眼に置くと・・
デザインの統一感を主眼におくと・・など
これらに気をつけて、時々振り返り改善することが大事です。
幸いグロービスのデザイナーはみんな優しいので、心理的安全性は担保できています。
→デザイナーはみんな優しいですよね。
デザイナーの意見の強さについて
ヤフー時代に、デザイナーとプロダクト責任者の意見。 どちらが優先されるのか?という議論がをしたことがあります。
今振り返ってみるとこれは「どっちでもいいですw」
レビューはそれぞれの立場で仮説を出し合う場。 もちろん数字的な根拠があれば従うのが一番です。 ただし数字がいつもあるとは限りません。
1人の意見から選ぶのではなく、選択肢が増えることがレビューの一番のメリットです。
結論として、今ある材料でベストであると合意形成をする。 そうであれば意見が誰から出ても関係はありません。
チーム横断でデザイン相談会を実施
グロービスではチーム外のメンバーともレビューをしています。
それが「デザイン相談会」です。
これも最大の目的は「デザイナーが悩みを相談できる場、つまり話し合える場の提供」です。
先日、Figmaのコンポーネント管理であるメンバーが悩んでいました。
そこで、みんなで意見交換。みんなのやり方を聞きながら、
そのメンバーは「相談してよかった」と喜んでくれました。
やっぱりデザイナーは少ないので孤独なんですよね。
みなさん1人で戦ってますw
だからこそ、みんなが対話して相談できる場所はとても大事です。
一方でデメリットもあります。
プロダクトが違うと前提となる知識が足りません。 そのために深い議論をするのに時間がかかります。
ただし、これにはアンドパッドの経験も踏まえて 2つ解決策があります。
1つは事前に情報をシェアしておくこと。
2つめは「議論を一点集中させる」ことです。
前提の共有していると、必ず議論は横道にそれます。
議論が発散しそうになったら、「そもそも何を解決すればいいんだっけ?」と問いかけて議論の対象を戻します。
レビューの起案者には必ず「相談したいこと」があります。相談したいことを明確にして、必要な前提条件を端的にインプットしてもらう。そうすることで、レビューに時間を使うことができます。
まとめ
グロービス以外にも過去の経験も踏まえて「デザイナー同士でやるレビュー」について書いてみました。
レビューの一般的なメリットは「デザインの品質向上」です。
1人で悶々とかんがえるより、みんなで意見を出し合えばよりブラッシュアップできます。
また、事業会社か制作会社か。担当プロダクトが一緒か別か。状況に応じてメリットやデメリットも違ってきます。※下記参照
でも、「デザイナー同士でやるレビュー」1番のメリットは「デザイナーが孤独にならないこと」です。
とくにデザイナーは人数が少ないので、1人で動くのは厳しい戦いです。
一緒に高め合い、助け合い、支え合いながら切磋琢磨できることが大切になります。
グロービスはこれからもチームでともに成長できるデザインチームをめざしていきます。
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