「できなくてもいいよ」は子どもを認める言葉? それともただの甘やかし?
この連載では、褒めるでもなく、叱るでもない、認める言葉を子どもにかけましょうとお伝えしてきました。そこで今回は、子どものことは認めたい。でも認めるところがない! というお悩みです。
■「できなくてもいいよ」は言ってもいいの?
他の子ができることは、我が子にもしっかり教えてできるようにしてあげなくては…! と焦りますね。
それなのに「できなくてもいいよ」と認めていたら、ずっとできないままになってしまうのではないか……? と心配になる気持ちもわかります。
その場合、どう認めたら良いのでしょうか。
実は、できないことを認めるのではありません。我が子をよくみて、我が子の成長を認めることが大事なのです。まずは、よくあるシーンから。
■「できるか、できないか」という視点になっていないか?
朝の忙しい時間、少しでも早く着替えられるようになってほしいですね。
そこで、お母さんは、サトくんを応援する言葉をかけました。
自分で着替えると言うサトくんを尊重し、
前後逆なことを教えて、
トモくんのように、サトくんだってやればできるようになることを伝えました。
そして、認めることが大事だと思い直して、「着替えがうまくできなくてもいいよ」とまで言ったのに、なんだかモヤモヤしますね。
サトくんも、落ち込んでいます。
実は「着替えができるか、できないか」の視点で見ていると、認めることが難しいのです。
何を認めるのか、が大事です。
「着替えができなくてもいい」なんて、お母さんは本当は思っていないので、言葉が伝わりません。
ですから、本気でここは良いと思うことは何か、を認めることが大事です。
どういうことでしょうか。次の会話を見てみましょう。
■子どもの努力を知っているのは親だけ
親が思うような完璧な着替えではないかもしれません。
時間もかかったでしょう。
シャツは前後逆だし、ズボンもお尻がはみ出ていて、決して完璧ではありません。
でもサトくんは自分のペースでトライして、なんとか着替えました。
「シャツは前後逆だし、お尻もはみ出てるけど、いいよ」
と認めることはできないけど、
「サト君が、自分で着替えをしようとしたこと」は、
心から認められるのではないでしょうか。
だって、数ヶ月前までは、できなかったことなのですから。すごい成長です。
「完璧に着替えられた」という“結果”だけを認めようとすると、認めることは残念ながらほとんどありません。ですから、できなかったことを無理に認める言葉をかけて、モヤモヤすることになります。
でも、子どもがやってみようと、下手でも頑張っている“努力”は、認めることができます。そしてそれを見て知っているのは、親だけ。
それなら、心から認める言葉がけができるのではないでしょうか。
そしてそれは子どもにちゃんと届きます。
子どもが同じ行動をしても、それをどう見て、どう認める言葉をかけるのかで、自己肯定感が変わってくるのだとしたら、変わるべきは親の視点かもしれませんね。
こうして、子どもの自己肯定感が育ち、あっという間に着替えもさっさとできるようになります。
認めるとは、お子さんの成長、努力をみつけて言葉にすること。親の腕の見せ所ですよ!
今日のコミュポイント
執筆:天野ひかり
マンガ:とげとげ。
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。