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シャドーワーク・サンドバッグ打ち

 昨日、洗濯を取り込むのを忘れてしまった。夫も気付いてくれなかった。幸い今日までかんかん照りだったので、朝に取り込んでもまだ、洗濯物は太陽の匂いがした。

 最近よく聞くようになったシャドーワークという言葉。いわゆる「名も無き家事」である。こういう言葉が生まれて本当によかった。自分の行っていた細かな「何でもない事」が、少なくともカテゴリー化されることで、「何でもある」ことに昇級したから。子育てに勤しんでいる人もそうでない人も、これで気持ちだけでもホッとした人が多かれ少なかれいるのではないだろうか。
 シャドーワークに分類されるタスクのやっかいなところは、例えば円グラフにできないことだ。1日を円グラフで表示し「何時から何時までは〜」みたいなあれである。シャドーワークは、仕事が細かすぎて、しかも予定調和ではなく突発的なことが多くて、成果も出にくかったり、もしくは無意識にマルチタスク的にこなしているから、報告しにくい。

 おそらくシャドーワークの仕事を報告する上司はいないので、例えばそれは夫婦間で行ったりする。

 あらかじめ話が混乱しないように、前提としていっておくが、主婦/主夫(Casalinga/Casalingo)は、「相方、パートナーがお金を稼いできているから、その分家事は私が全部やる」という人がいたら、そういう人は私がこれから話すことが意味不明かもしれない。それは私には、「お金払うから家事をやって」と依頼されている家政婦と変わらないように見えているから。

 話を戻すが、わかりやすくするために例を言うと、夫が仕事を終えて家に帰宅する。大抵の家は、夫が今日行った仕事の内容を事細かく妻に説明することはない。妻は大抵の場合、夫の仕事の上司ではないからだ。しかし、夫は「つかれたー」とか「今日どこどこに出張に行って」というセリフを吐くことで、大変な仕事を成し遂げてきたことをアピールする。それに見合うお金が発生すると。なんならタスク内容を円グラフに書ける。しかし、妻は「今日は疲れたー、肩が痛いー」とかいっても、何を成し遂げたのか目に見えないし、もちろんお金になったことはこれっぽっちもなかったりする。

 私の場合を話すと、夫がテレワークになったのをいいことに、私は自分が行う細かな仕事をアピールするようになった。(大きな独り言が多い)
「朝ごはん、子供に何食べさせようーバナナとヨーグルトとプラムしかないからそれあげるわ」
「うわーこの子服にこぼした!フルーツは落ちにくいから今漂白してくる。あ、このズボン泥もついてるじゃん。泥もね、やっかいで洗濯機いれたら落ちるとかいうものではないからね。」
「うわーうんちまたしたじゃん。今おむつかえないと。ゴミ捨てないとゴミ収集車きちゃうよー」
「今洗濯終わったから、この子ベランダで遊ばせながら洗濯干してくるから!」
「保育園送るついでに薬局行ってくるから」
「区役所に保育園の補助金申請してくるから、そのついでに銀行にあれ振り込んでくるから」
「子供遊ばせるついでに、クリーニングとりにいってくるから!」
自分でうるさいと思いつつも、名も無き仕事を、目に見えるものにすべくこうしてしてきた。

 ここで私が夫にアピールしたかったポイントのひとつとしては、私はマルチタスカーであるということである。私の夫は一つのことを集中してやるタイプなので、何か家事をお願いしても、それしかやらない。周りが見えないともいう。例えば洗濯物を取り込むお願いをしても、それしかやらない。私ならば、子供が夜寝つきがよくなるように、なるべく遊ばせたいので、ベランダで遊ばせながら、洗濯物を取り込む。なんなら自分の時間も欲しいから、語学学習としてイタリア語の動詞活用を頭で繰り返しながら、子供にシャボン玉を吹きつつ、洗濯物を取り込む。台所の掃除をしながら、引き出しの整理をしながら、子供にはそばで空瓶で遊ばせる。ストレッチをしながら、絵本を読んであげる。朝にパンを焼くなら、私の時間としてラジオで最近のニュースを頭にインプットしつつ、ブログに書く内容の構成を考えて、パンをわざと強くたたきつけて子供を笑わせて、子供に本をめくらせて、私が読みながら、パンをこねる。子供が生まれる前は、夕飯の煮込み料理に火をつけてコトコト煮込みながら、パソコンで仕事をしていた。

 しかし私の夫はそんな私みたいにはしたない「ながら作業」はしない。夫だって子供の保育園の送り迎えをしながら、仕事をしたらいい。何か歩きながらできることがあるはずだ。しかしこの時間〜この時間はずっとひとつの仕事らしく、部屋に籠る。やるとしたら朝ごはんを食べながら仕事をするぐらいだろうか。子供と遊んでくれるとき、家事を手伝ってくれるときは、自分に余裕があるときだけである。しっかり自分のペースは崩さない。自分の頭が仕事モードの時は何も他のことには手が付かない。集中のスイッチが入ればもうそうなると部屋からはでなくなる。そのうえ決まった時間に寝るし、自分の余暇は余暇でしっかり確保している。もうもはや私なんか、自分のペースがどんななのかよくわからない。


 しかし実はまだ今羅列したことは「名のある仕事」に近しい。人によるとおもうが、我が家の場合は家のことを考える(考え始める)のは九割五分私である。何か家のことに関して提案を作って、プレゼンをするのは私で、それに対して助言をするだけが夫の仕事である。0から10を作り出すことがどれだけ時間がかかることかわかるだろう。だが、これに対して時給で給料が支払われることはまずない。例えば子供をどういうところで教育しようか、保育園はどこにしよう、どういうものを体験させるか、何をふれさせる環境にするか、保育料を節約して家計を助けられるのではないか、保育料補助の申請のために用意しなければいけない資料はなんだ、カーテンやソファーのカバーをこう変えればもっと日常が明るくなって家族の精神衛生状いいのではないか、子供にこう言う栄養をとらせなければいけないんじゃないか、子供にこういう遊びをさせたらいいんじゃないか、こういうおもちゃをそろそろ買い与えなければならないのではないか、こういう言葉を使わせたらいいんじゃないか、この木を植えたら生活にこういう影響をもたらすのではないか、粉をまとめ買いし、オリーブオイルを定期購入すればいいのではないか、洗濯の仕方を変えた方が環境にいいのではないか、水は浄水器を買うべきか否か、野菜が木曜日にくるから、火曜と水曜の献立はこれで冷蔵庫をなるべく空にしよう、野菜が腐らないようにこうやってストックしよう、八月にどこか近場に旅行に行こうか、それならレンタカーを借りてこのぐらいの値段の子供も一緒に温泉に入れる旅館を探さなければ・・・ずっとずっと家をどうやってまわすか四六時中考えている。自分のことだけをどれだけ考えているか、円グラフにしたらどうなるだろう。私がいなければ、我が家は経済活動ができない。

 夫と私の能力の差なのかしら。たしかに仕事の適材適所はどこの業界にでもある話だ。しかしいくらマルチタスカーの私だって、できることとできないことがあるので、集中できて成果をだせる、もしくは成果を出すための準備期間としての時間が欲しい。昼間子供を遊ばせて、夜子供を寝かせてやっと自分の時間ができたと思って、朝焼けが見えるまで自分のことに没頭している日もあるけれど、昼間子供を炎天下遊ばせることがどんなに疲れるか、実際にはそのまま私も一緒に寝てしまうことがほとんどだ。(しかも何かをやろうとしてそのままうとうとと寝てしまうので、眠りが浅い)だから子供を保育園にいれたのか?じゃあ私の時間を作るために、保育園にいれたの?私のせい?なぜ自然にこれらの影なる仕事は私の仕事となっているの?その不自然としか思えない自然な循環は何?もし夫と私が逆の立場だったらどうなるの?

 さあ、どうするかな。またこうやって仕組み作りしなければいけないのも、私なんだよな。とにかく、世界は平等にできているとか、因果応報とか、神の存在とか、子供の時に教えられてきたことは信じられないことばかりだよ。


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 マルチタスカーの私であるが(けど女性はやはり世間一般的に多いのかもねマルチタスカー)、これも子供を見ながらつくる料理、Orecchiette(オレキエッテ)。耳たぶぐらいのやわらかさのパスタ、形は貝殻みたいで可愛いし、よくペーストが絡む。プーリア州のパスタなので、北イタリアのものとは違ってセモリナ粉のパスタ。これは生パスタが断然美味しいと思う。作ってる最中、子供にも触らせて一緒に遊ばせてあげられるし。もっと大きい子がいるお母さんは一緒に作れると思います。ナイフには気をつけて。今回はバジルのペーストのレシピも書いておきます。


◉Ricetta

オレキエッテ バジルソースあえ(Orecchiette al pesto)

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①以下の材料を混ぜてこねる。

・セモリナ粉400g

・ぬるま湯 200g

・塩少々

②2cm厚みの棒状のものにして、ナイフで細かく切りながら、ナイフ先で押し転がすようにすると、形になる。気持ち乾燥させると、各々くっつかなくてよい。茹でる時は放置しないで、すぐ浮かんできたらお皿に盛り付けてください。

③バジルペーストは以下の材料をブレンダーで混ぜる。(アンチョビはお好みで。私は味が安定するのでいつも使う)

・アンチョビ 2切れ(よく使うので瓶詰めを買うと便利。小さい缶で毎回買うよりもお得。これは形が綺麗で美味しい。)

・松の実 10g

・パルミジャーノ (味見て調整)

・バジル 25g

・オリーブオイル 50ml

量は好みで調整してください!

Buon appetito!


※参考記事

今回紹介したのはわりと南イタリア側のパスタですが、過去に北イタリア方面のパスタも紹介しています。よかったらご覧ください。







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