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78)肉食ががんを増やす理由:食事と腸内細菌とがんとの関係

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術78

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【日本では肉食が増えて大腸がんや膵臓がんが増えている】

 特定の食事は人間のがんの発生と関連しています。野菜、豆類、海藻類、キノコ類、魚油、エクストラバージンオリーブオイル、ヨーグルト、全粒穀物が豊富で、動物性食品が少ない食事の摂取は、がんの発生率の低下と関連しています。

一方、高度に加工された食品、精製した糖質(砂糖、ブドウ糖果糖液糖など)、動物性脂肪、赤身肉や加工肉が多く、食物繊維の摂取量が少ないことは、がんのリスクを高めることが明らかになっています。


日本における大腸がんの発生率はこの40年くらいの間に2倍以上に増えています。大腸がんと膵臓がんは年齢調整死亡率でわずかですが増えています。大腸がんと膵臓がんは食事の欧米化や糖尿病の増加によって発生原因が増えているためです。
 
食事の欧米化が大腸がんや膵臓がんや乳がんや前立腺がんなど西洋型がんの発生を増やすことは、多くの研究者が認めています。ケンターキー・フライドチキンやマクドナルドは1970年に日本で1号店ができています。1人1年当たりの食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)供給量は1960年には3.5kgでしたが、2013年は30 kgになっています。


通常、がんの原因が増えてから20年くらい経てからがんが増えてきます。がんの原因が細胞に作用してから、がんが発生するのに10年以上かかるためです。例えば、米国では喫煙率が低下して10年から20年経過してから肺がん死亡数が減少しています。日本では食事が欧米化して20年くらいしてから欧米型のがんと言われる大腸がんや乳がんが増えています。



【加工肉と大腸がん】

 世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2015年10月26日に、ハムやベーコンなどの加工肉を毎日50g食べ続けると大腸がんの発生率を18%高めるという結論を発表しています。

10か国22人の専門家による会議で赤肉(牛・豚・羊などの肉)と加工肉の人への発がん性についての評価が検討され、その結果、加工肉について「人に対して発がん性がある(Group1)」と、主に大腸がんに対する疫学研究の証拠に基づいて判定されました。

発がんリスクのGroup 1には、たばこ、紫外線、B型・C型肝炎ウイルス、放射線、アスベストなどが含まれています。つまり、発がん作用が確実な部類です。
 
赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」と判定しています。

すでに2007年に世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による評価報告書で、赤肉と加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが「確実」と判定されており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告しています。つまり、ステーキやハンバーグを週に2回以上、牛丼を毎日1回食べるような食生活は大腸がんや膵臓がんや乳がんなど西洋型のがんの発生リスクを高めることは確実です。
 
加工肉(ソーセージ、ハム、ベーコン、ホットドッグなど)や赤身肉(牛肉や豚肉や羊肉など)は膵臓がんや乳がんの発生率も高めます。
ハワイあるいはロサンゼルス在住の白人、ハワイ原住民、日系など5つの民族グループに属する男女計約20万例を対象として、食事と膵がん発生率との関係を検討した研究結果が報告されています。

平均7年間の追跡期間に膵がんが発生したのは482例で、加工肉の摂取量が最も多いグループは最も少ないグループよりも膵がんリスクが67%高く、また赤身の豚肉および牛肉の摂取量が多いグループは約50%高かったという結果でした。鶏肉、魚肉、乳製品および卵の摂取量のほか、脂肪ないしコレステロールの総摂取量と膵がんリスクとの間には何ら関係は認められなかったということです。 


ある疫学研究では、赤身肉を1日1.5食分摂取していた女性は、1週間に3食分未満の女性に比較してホルモン受容体陽性乳がんの罹患率が約2倍高かったという報告があります。


赤身の肉に多く含まれるヘモグロビンやミオグロビンのヘムやヘミン(2価の鉄元素とプロフィリンの錯体)がフリーラジカルの発生を促進させて、発がんリスクを高める可能性が指摘されています。ヘムやヘミンは飽和脂肪酸と反応して脂質ラジカルの産生を高めるので、動物性脂肪と赤身の肉は、相乗的に発がんを促進することになります。

赤身肉より加工肉の発がん性が高いのは、保存料や発色剤として使用されている「亜硝酸ナトリウム」などの添加物と肉の成分が反応して発がん作用のある物質を生成するからです。添加物を使用しないで加工した肉であれば、赤身肉に起因する発がんリスクのみになります。
 
多くのがんの発生と循環器系疾患やその他多くの病気の予防の観点から加工肉と赤身の肉の摂取は減らす方が良いことは確かです。これらを食べるときは、野菜や果物を一緒にたくさん食べると、発がんのリスクは低減できます。オリーブオイルは酸化しにくいので、調理用の油は他の油よりオリーブオイルが推奨されます。

鶏肉や魚は発がんリスクを高めません。タンパク質は鶏肉や魚や豆類から摂取することが推奨されます。



【肉食は腸内の悪玉菌を増やす】

 腸内細菌とは、腸の中に棲み、様々な働きをしている菌のことです。腸内細菌はビタミンやミネラル、タンパク質などを合成しながら、腸の活動を調整し、人間の生命維持活動に役立っています。

その腸内細菌の中で、人間の健康にとってよい働きをするものを善玉菌(有益菌)、悪い働きをするものを悪玉菌(有害菌)と呼んでいます。善玉菌の代表はアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)とビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum)です。これらは乳酸桿菌属(Lactobacillus)の細菌で、乳酸を作る腸内細菌です。

反対に悪玉菌の代表と言えばウェルシュ菌やクロストリジウム菌などの腐敗菌です。腐敗菌は便秘や下痢の原因になり、タンパク質を分解して発がん物質を作ったり、老化を早めたりすると言われています。

腸内細菌は、腸管内の物質代謝を通して人の発がんに重要な影響を及ぼします。ウェルシュ菌やクロストリジウム菌などのいわゆる悪玉菌といわれている腐敗菌は、腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて発がん物質を産生します。一方ビフィズス菌などの乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑制し、また発がん物質の産生を抑制し、免疫力増強作用なども有しているため、大腸がんのみならず多くの種類のがんの予防に有効であることが知られています。(下図)

図:ウェルシュ菌やクロストリジウム菌などのいわゆる悪玉菌といわれている腐敗菌は、腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて発がん物質を産生する。一方ビフィズス菌などの乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑制し、免疫力増強作用なども有している。乳酸菌製品(プロバイオティクス)や乳酸菌の成長を促進するプレバイオティクス(フルクトオリゴ糖など)は腸内環境を良くして、様々な健康作用を発揮する。

 腸内に善玉菌を根付かせ増やすためには、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの利用が有用です。

プロバイオティクス(probiotics)は健康に有益な効果をもたらす腸内細菌(いわゆる善玉菌)を指します。「腸内フローラの善玉菌と悪玉菌のバランスを改善して動物に有益な効果をもたらす生菌添加物」のことで、乳酸菌が代表です。乳酸菌はビフィズス菌やアシドフィルス菌、ラクトバチルス、ブルガリア菌など乳酸を産生する腸内細菌です。

さらに酪酸を産生する宮入菌も有効です。腸内の酪酸菌を増やすと長寿になると話題になっています。宮入菌は処方薬ではミヤBMがあります。一般用医薬品(ミヤリサン)やサプリメントでも販売されています。


フルクトオリゴ糖など善玉菌の増殖を促進する物質のことをプレバイオティクス(prebiotics)と呼びます。腸内の善玉菌に働いて、増殖を促進したり、善玉菌の活性を高めることによって健康に有利に作用する物質のことです。

フルクトオリゴ糖は短鎖糖質で、3~10個の糖分子から構成されており、最低その2つはフルクトースです。人間はフルクトオリゴ糖を消化できませんが、ビフィズス菌と乳酸菌は成長と増殖のためにフルクトオリゴ糖を優先的に利用します。対照的に有害細菌はこれらの短鎖糖質を利用できません。

このようなプロバイオティクスとプレバイオティクス組み合わせると、効果的な腸内環境の改善ができます。プロバイオティクスとプレバイオティクスとを合わせたものをシンバイオオティクス(synbiotics)と呼んでいます。

 

プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは安全で、多く摂取しても胃腸ガスの一時的な増加以外に副作用は伴わないので、病人にも日頃から摂取が勧められるサプリメントです。

ヨーグルトや、水溶性食物繊維の多いバナナ、タマネギ、アスパラガス、ニンニク、トマト、オクラ、海藻類などを多く食べ、さらに乳酸菌やビフィズス菌や酪酸菌やフルクトオリゴ糖を含むサプリメントを利用して、積極的に腸内環境を善玉菌優位にすることは、免疫力や解毒力を高め、胃腸の働きを良くする効果が期待できます。特に酪酸を産生する酪酸菌(ミヤBM、ミヤリサンなど)を補給することはがん予防と寿命延長に効果が期待できます。



【α-シクロデキストリンは酪酸産生量が最も多い】

 様々な種類の食物繊維がありますが、酪酸菌によって発酵されて短鎖脂肪酸の産生量が最も多いのがα-シクロデキストリンと報告されています。
α-シクロデキストリンはトウモロコシや馬鈴薯のデンプンから酵素の働きによって作られている、天然に存在する環状オリゴ糖です。ブドウ糖(グルコース)が6個環状に連なった構造です。(下図)

図:α-シクロデキストリン(Alpha-Cyclodextrin)は6個のグルコース(ブドウ糖)がα-1,4結合で結合した環状オリゴ糖。
 
 
α-シクロデキストリンは小腸の消化酵素では全く分解されず、大腸内の腸内細菌で発酵分解される特徴を持ち、食物繊維として作用します。他の食物繊維はグルコース(ブドウ糖)だけでなく、フルクトース(果糖)やガラクトースが連なっていたり、連なる数も様々な分子が混在しています。一方、α-シクロデキストリンはグルコースのみから構成され、混合物ではなく単一の分子です。

α-シクロデキストリンはデンプンと同様にグルコースがα-1,4結合で結合しているので、本来であれば消化性を示すのですが、環状で安定しているため小腸の消化酵素で分解されません。

α-シクロデキストリンは無傷で大腸に到達し、腸内細菌によって環が切られ、鎖状になって完全に発酵分解され、短鎖脂肪酸に変換されます。他の食物繊維に比べて、酪酸菌(宮入菌)による酪酸を作る効率が最も高いというデータが報告されています。α-シクロデキストリンは多数の商品がネットの通販などで販売されています。
 
以上から、プロバイオティクスとしてヨーグルト(乳酸菌とビフィズス菌)と酪酸菌製剤(ミヤBM、ミヤリサンなど)を摂取し、プレバイオティクスとしてα-シクロデキストリンを組み合わせたシンバイオティクスで腸内の乳酸と短鎖脂肪酸(特に酪酸)を増やすと、体の治癒力を高め、寿命を延ばし、がん細胞の増殖抑制にも効果が期待できます。さらに、日頃から水溶性食物繊維の多い食品を食べることは腸内の乳酸と短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の産生を高め、腸の働きを活性化し、健康増進と抗老化とがん予防に有効です。

図:腸内の悪玉菌(腐敗菌)は腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて有害物質を作り(①)、体の治癒力を低下し、発がんを促進する(②)。オクラや海藻類に多く含まれる水溶性食物繊維(③)は、乳酸菌やビフィズス菌や酪酸菌によって発酵され、短鎖脂肪酸(⑤)や乳酸(⑥)を作る。短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は腸粘膜バリアの増強や大腸運動の活発化、抗炎症作用など様々な健康作用を発揮する(⑦)。乳酸は腸内pHを低下させて悪玉菌(腐敗菌)の増殖を抑制する(⑧)。ヨーグルト(⑨)は乳酸菌とビフィズス菌を供給し、医薬品のミヤBMや一般用医薬品のミヤリサンは酪酸菌を供給する(⑩)。難消化性糖質のα-シクロデキストリンは酪酸菌による酪酸産性能が極めて高い(⑪)。ヨーグルトと酪酸菌とα-シクロデキストリンと水溶性食物繊維の多い食事を組み合わせたシンバイオティクスで腸内の乳酸と短鎖脂肪酸(特に酪酸)を増やすと、体の治癒力を高め、がんを予防し、寿命を延ばす効果が期待できる。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ


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