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5)メラトニンは生物最古で最強の抗酸化剤

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術5

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【メラトニンは体内時計を制御する】

 メラトニンは1958年に牛の脳の松果体から単離されたホルモンです。睡眠覚醒サイクルなどの日内リズムの調節に重要な役割を果たしています。

私達の体の中(脳)にはいわゆる『体内時計』があり、昼夜サイクルの時間を刻みながら、体の多くの機能に活動と休息のリズムを与えています。これをサーカディアンリズム(概日リズム)と言います。

松果体は脳のほぼ真ん中にあるトウモロコシ1粒くらいの大きさの器官です。夜暗くなると、松果体からメラトニンが分泌され始め、血中のメラトニンが増えると睡魔が襲ってきます。そして、生体リズムは睡眠や体息に適したものに調整されます。


朝、太陽光線が目に入ると、松果体にその刺激が伝わりメラトニンの分泌が抑制されます。 これによって覚醒スイッチがONとなり、諸々の生体機能は昼間の活動に適応した状態になります(図)。

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図:メラトニンは脳の松果体から分泌される。


 メラトニンの原料は必須アミノ酸のトリプトファンです。トリプトファンに2種類の酵素が働いてセロトニンが生成します。セロトニンは神経細胞と神経細胞のつなぎ目(シナプス)で情報伝達の役目をする神経伝達物質の一つです。このセロトニンにさらに2種類の酵素が働いてメラトニンが生成されます。

セロトニンからメラトニンが生成する段階は、脳の視交叉上核からの指令が来ないとスタートしない仕組みになっています。

すなわち、目から入った光の情報は視神経と通って脳にある視交叉上核に伝えられ、さらに神経によって松果体に連絡が入ってメラトニンの合成が制御されます。視交叉上核が体内時計の中枢です。メラトニンの合成は夜間に網膜に光刺激が入らなくなると促進され、網膜に光刺激が入ると阻害されるという仕組みでメラトニン合成が制御されています。

メラトニンは松果体から分泌された後、血液に乗って全身に運ばれ、最終的には肝臓で代謝されます。唾液や脳脊髄液や胆汁中にも移行します。血液脳関門や胎盤も通過します。

メラトニンは松果体の他にも多くの細胞で産生されています。その理由は、メラトニンがミトコンドリアで産生されているからです。ミトコンドリアを持たない赤血球以外のほとんどの細胞でメラトニンが産生されていることが明らかになっています(後述)。

生物進化の過程において、かなり早い段階からメラトニンが重要な生理作用を担ってきました。人体においても日内リズムの制御や睡眠誘導の他、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節、生体防御、神経細胞保護、抗がん作用など多彩な健康作用が確認されています。 


メラトニンの分泌異常が不眠や時差ぼけや抑うつ、ストレス、生殖能力、免疫異常やある種のがんの発生と関連している可能性が報告されています。メラトニンはヒトの体内時計を調節するホルモンとして、快適な睡眠をもたらし、時差ぼけを解消するサプリメントとして評判になりましたが、若返り作用(抗老化作用)や抗がん作用や免疫増強作用なども報告されています。


【メラトニンは細菌や植物にも存在する】

 松果体は脊椎動物しか存在しません。したがって、最初はメラトニンは脊椎動物においてのみ存在すると考えられていました。しかし、1984年に昆虫にメラトニンが存在することが報告されて以降、メラトニンは細菌やプランクトンや植物を含めて、自然界に広く存在していることが明らかになっています。

生物の進化において、メラトニンは最も古くから存在する生理活性物質の一つと考えられています。光合成によって酸素を生成するシアノバクテリアが誕生した25億年から30億年前に、活性酸素の害を防ぐ目的でメラトニンが誕生したと考えられています。

抗酸化作用はメラトニンの直接的な作用ですが、さらに受容体を介して様々な生理機能の制御に関与する様になりました。メラトニン受容体は7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体の一種です。

Gタンパク質共役型受容体は多くの種類の細胞に分布しており、光・匂い・味などの外来刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知して細胞内に伝達する役割を担っています。

例えば、光を感じて視覚に関わるロドプシン、におい物質に作用する嗅覚受容体、さまざまな生理現象を司る神経伝達物質(アドレナリン、ヒスタミン、セロトニンなど)の受容体などは全てGタンパク質共役型受容体の仲間です。


【ミトコンドリアとクロロプラスト(葉緑体)は細菌が真核細胞に共生して発生した】

 約35億年前に発生した最初の生物は、はっきりした核を持たない(核膜をもった核が無い)原核生物です。これらの生物は海の中を漂う有機物を利用し、酸素を使わずに生息していました。

約25億年前に光合成を行う藍藻(シアノバクテリア)が登場します。光合成によって、無機物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)などの有機物と酸素を作り出すことができるようになりました。それまで無酸素状態だった地球大気に大量の酸素分子が放出され、嫌気性生物の多くが絶滅し、酸素を利用した呼吸をする微生物(α-プロテオバクテリア)も誕生しました。

真核細胞の葉緑体やミトコンドリアは、ある種の細菌が原始真核細胞に取り込まれて共生するようになって形成されたと考えられています。これを「細胞内共生説」と言います。

光合成を行うシアノバクテリアが原始真核生物と共生して葉緑体となりました。葉緑体は植物に存在する細胞内小器官です。光合成が主要な機能ですが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の中心となっています。

酸素を用いて呼吸を行うα-プロテオバクテリアが原始真核生物に共生してミトコンドリアになったと考えられています。

このような考えは,葉緑体やミトコンドリアが細胞の中で分裂して増殖することや、独自の DNA を持っていることが明らかにされ、定説となっています。原始真核生物はシアノバクテリアやα-プロテオバクテリアを餌として捕食していたのですが、そのうちに寄生して細胞内小器官へと進化し、共生するようになったと考えられています。

生物の進化の過程で、メラトニンは生物発生時の初期の段階から抗酸化物質として存在していました。さらに、生物の進化の過程で、抗酸化作用以外に、日内リズムや睡眠の制御、免疫・生体防御などの多彩な機能を新たに担うようになりました。

つまり、植物や動物におけるメラトニンの作用は、元来は抗酸化による細胞の保護でしたが、生物進化の過程でメラトニンを様々な生物機能の制御に利用されるようになり、メラトニンの生理機能は多様化するようになったのです。

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図:地球上において約35億年前(図中の3.5BのBはBillion=10億の意味)に原核細胞(核膜を持たない単細胞生物)が発生し(①)、約25億年前に藍藻による光合成が始まり、それまで無酸素状態だった地球大気に大量の酸素分子が放出された(②)。酸素を利用する細菌(αプロテオバクテリアやシアノバクテリア)と原始真核生物が共生し、ミトコンドリアとクロロプラスト(葉緑体)ができた。その後、地球上ではカンブリア爆発(約5億4000万年前に生物が爆発的に多様化し、現生生物の直接的な祖先が誕生した)、ペルム紀・三畳紀絶滅(約2億5千百万年前に起きた、地球規模の激烈な環境変動により生物が大量絶滅した)、白亜紀・第三紀絶滅(約6600万年前に起きた小惑星衝突を引き金とする環境の変化によって恐竜などが大量絶滅した)などを経て現代に至っている(③)。メラトニンは生物発生時の初期の段階から抗酸化物質として存在していた(④)。生物の進化の過程で、植物界においては、成長や生体防御や概日リズムの制御の機能を担うようになった(⑤)。動物においても、抗酸化作用以外に、免疫・生体防御、概日リズム、睡眠、抗がん作用などの機能を担うようになった。植物や動物におけるメラトニンの作用は、元来は抗酸化による細胞の保護であったが、生物進化の過程でメラトニンを様々な生物機能の制御に利用するようになった(⑥)


【メラトニンはミトコンドリアで産生される】

 細菌がメラトニンを合成していることが明らかになっています。この細菌のメラトニンは活性酸素を消去することによって、細胞を酸化傷害から守る役割を担っています。ミトコンドリアや葉緑体においてもメラトニンが合成されています。これもミトコンドリアや葉緑体が酸素を利用する過程で発生する活性酸素を消去して、細胞を酸化障害から防ぐためです。メラトニンは非常に強い抗酸化作用を有しています。

動物においても、メラトニンはミトコンドリアで合成されて、ミトコンドリアで発生する活性酸素の消去において重要な働きを担っています。メラトニン合成の律速酵素であるアリルアルキルアミンN-アセチルトランスフェラーゼの活性がミトコンドリアで確認されており、高レベルのメラトニンがミトコンドリアにおいて見出されています。

つまり、メラトニンはミトコンドリアをターゲットにした抗酸化物質として、ミトコンドリアを酸化傷害から守る役割を担っていると考えられています。

メラトニンは生物最古の抗酸化物質と考えられています。酸素を使ってエネルギーを産生する好気性細菌は、自身でメラトニンを産生し、活性酸素によるダメージを防いでいると考えられています。メラトニンを産生する細菌が原始真核生物に寄生してミトコンドリアになった後も、ミトコンドリア内でメラトニンの合成が維持されています。

現在生きている人間に存在するメラトニンは、数十億年にわたって地球上に存在しているシアノバクテリア(藍藻)に存在するものと同一です。

ミトコンドリアおよび葉緑体は、生物におけるフリーラジカル生成の主な細胞小器官です。葉緑体では,光合成が行われ,光エネルギーを吸収し,ATP の持つ化学エネルギーに変換した後,このエネルギーを利用して二酸化炭素から有機物を合成しています。

ミトコンドリ アでは,酸素呼吸が行われ,酸素を用いて有機物を無機物まで分解し,有機物のもつ化学エネ ルギーを ATP の化学エネルギーに変換しています。

このため、これらの細胞小器官はフリーラジカルとそれに伴う酸化ストレスから保護する対策が必要です。その役割を担っているのがメラトニンです。メラトニンは強力なフリーラジカル捕捉剤であり抗酸化剤です。メラトニンはミトコンドリアと葉緑体を活性酸素から守るために働きます。


【メラトニンは様々なストレスによって産生が誘導される】

 メラトニンは他の抗酸化剤と比べて、いくつかの有用な特徴を持っています。メラトニンは水溶性と脂溶性の両方の性質を持つので、脂質の多い細胞膜と水分の多い細胞質の両方で活性酸素を消去できます。

メラトニンは活性酸素の中でも特に酸化障害を引きおこすヒドロキシルラジカルを消去することが知られています。直接的な活性酸素消去作用だけでなく、活性酸素消去酵素を誘導する間接的作用もあります。

酸化ストレスなどのストレスが強くなるとメラトニンの産生が誘導される点もメラトニンの特徴です。

飢餓によるストレスでもメラトニンの産生が誘導されて細胞をストレスから守る働きを担っています。植物でも酸化ストレスや干ばつでメラトニンの産生が増えます。
つまり、メラトニンは様々なストレスで産生が増えて、生物個体を保護する作用があります。
 
また、他の抗酸化剤が一つの分子当たり1個のフリーラジカルしか消去できないのに対して、メラトニンは1分子が10個のフリーラジカルを消去できる事が報告されています。

これは、活性酸素や一酸化窒素ラジカルや脂質ラジカルなどのフリーラジカルと反応して生成された代謝産物がさらにフリーラジカル消去活性を持つためです。これをメラトニンカスケードと言います。

つまり、メラトニンは生物最古で最強の抗酸化剤でありフリーラジカル消去剤と言えます。メラトニンは太古に発生した単細胞生物から現代の哺乳類や高等植物までの全ての生物において、生物をストレスから守る生体防御物質と言えます。

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図:メラトニンとその代謝産物によるフリーラジカル消去のカスケード反応(cascade reaction)。R・はフリーラジカルでRHは還元された物質を示す。メラトニンとフリーラジカルが反応してできた代謝産物もフリーラジカル消去活性を持つ。したがって、1分子のメラトニンは10分子におよぶフリーラジカルを消去できる。
AMCC: 3-acetamidomethyl-6-methoxycinnolinone
AMNK: N1-acetyl-5-methoxy-3-nitrokynuramine
(参考:Molecules. 2015 Oct 16;20(10):18886-906. )


 さて、光合成を行うシアノバクテリアや、酸素を利用する好気性細菌では、活性酸素の産生は日中に多く、夜間は少なくなります。活性酸素を消去するためにメラトニンは消費されます。

したがって、活性酸素の産生の多い日中はメラトニンは消費されて少なくなります。夜間は消費されないので、メラトニンの量は多くなります。

つまり、動物と同じように、細菌レベルでも、メラトニンは昼間少なく、夜間に多いという日内変化を示します。

このような日内リズムの存在が、多細胞生物に進化していく過程で、メラトニンを体内時計として利用するようになった可能性が指摘されています。


【メラトニンは免疫力を高める】

 松果体と免疫系との関係が最初に指摘されたのは1926年です。猫に松果体抽出エキスを投与すると免疫システムが活性化することが報告されています。

1970年代には、マウスの動物実験でメラトニンを産生する松果体を切除すると、胸腺の重量が減少し、胸腺のリンパ球の増殖が停止するなど免疫系の働きが顕著に低下することが報告されています。松果体はメラトニンを産生する器官です。

1980年代後半から、メラトニンが免疫細胞に直接作用することが報告されています。その作用メカニズムは、免疫細胞におけるメラトニン受容体の分布の解析から解明されています。リンパ球にメラトニン受容体が存在することは1992年に報告されています。胸腺や脾臓やリンパ節など免疫組織においてメラトニン受容体が発現していることが確認されています。


Tリンパ球や単球の表面にメラトニン受容体があり、メラトニンはこの受容体を介してリンパ球や単球を刺激して、インターフェロンγ(IFN-γ)やインターロイキン(IL)1,2,6,12などの免疫反応を増強するサイトカイの分泌を促進する作用があります。これらのサイトカインは病原菌やがん細胞に対する細胞応答を増強します。

メラトニンはリンパ球内のグルタチオンの産生を増やしてリンパ球の働きを高める効果が報告されています。メラトニンは免疫細胞を活性化するだけでなく、活性酸素によるダメージからリンパ球や単球を保護する効果もあります。

この効果はメラトニンの抗酸化作用が関与しています。メラトニンはストレスによる免疫力の低下を抑え、感染症に対する抵抗力を高める効果が動物実験で示されています。


【メラトニンは寿命を延ばす】

 メラトニンは酸化ストレスを軽減し、免疫力を高めます。これらの効果は、老化を抑制し、寿命を延ばす効果が期待できます。

メラトニンは脳細胞の酸化を防ぐことにより、認知症やアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患を予防できるのではないかと期待されています。

メラトニンは細胞膜や血液脳関門を容易に通過できるので、脳の神経細胞の酸化障害を防ぐことができるのです。

メラトニンの抗酸化作用は、活性酸素だけでなく、一酸化窒素や過酸化脂質など様々なフリーラジカルを消去できることが特徴です。毒性の強いヒドロキシルラジカルはメラトニンによって効率的に消去されます。

不飽和脂肪酸の酸化によって生じるペルオキシラジカルを消去する活性はビタミンEよりも高いことが知られています。メラトニン1分子は10分子のフリーラジカルを消去できます。

他の抗酸化剤は、フリーラジカルを消去すると、自身は酸化されて酸化剤(プロオキシダント)となって、他の物質を酸化するようになるのですが、メラトニンは酸化されても安定で、他の物質を酸化することはありません。

さらに、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドデスムターゼ、カタラーゼなどの細胞内の抗酸化酵素の活性を高める効果も報告されています。逆に、フリーラジカルを産生する酵素(リポギシゲナーゼ、一酸化窒素合成酵素など)の産生を抑制する効果も報告されています。

このような多方面の抗酸化作用によって、メラトニンは細胞膜の脂質や細胞内の蛋白、核内のDNA、ミトコンドリアにおけるフリーラジカルによるダメージを防ぎ、その結果、これらの細胞成分の酸化によって生じる病気(がん、動脈硬化、神経変性疾患など)を防ぐ効果を発揮します。

フリーラジカルがミトコンドリアで豊富に生成されることを考えると、さまざまな活性酸素種を効率的に消去し、特にミトコンドリアでその生産を減少させる分子は、老化の速度を遅くし、老化関連疾患を減らす効果が期待できます。
実際に、メラトニンには抗老化作用や寿命延長効果が複数の実験系で報告されています。


例えば、キイロショウジョウバエの寿命に及ぼすメラトニンの影響を調べた実験結果が報告されています。

100μg/ mlの濃度で栄養培地に毎日添加されたメラトニンは、キイロショウジョウバエの寿命を有意に延長しました。最大寿命は、対照群で61.2日、メラトニンを給餌したハエで81.5日でした。対照と比較してメラトニンを給餌したハエでは、最大寿命で33.2%の増加、寿命中央値で13.5%の増加でした。

さらに、メラトニンはフリーラジカルを発生するパラコートに対するキイロソウジョウバエの耐性を増加させることが示されました。

つまり、メラトニンは抗酸化作用によって細胞の酸化障害を抑制し、寿命を延ばす作用があるという結果です。


【メラトニンは加齢とともに減少する】

 メラトニンの産生は加齢とともに分泌量が減少します。60歳以上になると夜間のメラトニンの増加もほとんど認めなくなります。これが、高齢者が感染症やがんの発症を起こしやすくなる理由の一つという意見もあります。

したがって、メラトニンをサプリメントとして補うことは、加齢とともに低下する抗酸化力や免疫監視機構の働きを若いレベルに維持する効果が期待できます。前述のように、感染症の重症化予防にも有効です。

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図:年齢によるメラトニン分泌量の違いを示している。新生児はメラトニンの分泌はほとんどないが(①)、徐々に増加して小児期にピークになる(②)。思春期を超えるとメラトニン分泌は減少し始める(③)。中年期には加齢とともにメラトニン分泌量が減少し続ける(④)。60歳を超えるとメラトニンの分泌はごくわずかになる(⑤)。メラトニンの血中濃度は午前2時から4時くらいをピークに夜間に上昇するが、加齢とともに減少し、60歳以上になると、分泌量は極めて低下する(⑥)。


 多くの抗酸化物質は食事から摂取しています。メラトニンは食事からと同時に体内で産生されます。食事性のものは食事が不適切だと欠乏しますが、メラトニンはほとんど全ての細胞で産生するので、欠乏症になりにくいと考えられています。

しかし、メラトニンの合成低下や消費増加で不足します。そして、合成低下においては加齢がもっとも重要な要因です。

老化に伴ってメラトニンの産生は低下し、酸化ストレスの高い状態もメラトニンを低下します。哺乳類の血液中のメラトニンは、細胞が酸化ストレスの高い状態にある場合、細胞による取り込みのために、血液から急速に消失します。

したがって、メラトニンをサプリメントで補充するメリットは大きいと言えます。


米国ではメラトニンはサプリメントとして認可され、ドラッグストアーで普通に販売されていますが、日本ではメラトニンは食品としても医薬品としても承認されていないため、日本国内では流通していません。

しかし、個人使用の場合は海外から個人輸入で購入できます。

不眠や時差ボケの目的では1日に3から5mgを服用しますが、抗老化や感染症予防の目的では1日に10mgから20mgを服用します。

がんの治療では1日20mgから40mg程度で臨床試験が行われています。メラトニンを服用すると眠くなるので、就寝の1時間くらい前に服用します。

メラトニンは免疫細胞を活性化するので、自己免疫疾患(慢性関節リュウマチなど)やリンパ球の腫瘍(悪性リンパ腫やリンパ性白血病など)の場合は、メラトニン投与により病気が悪化する可能性があります。これらの疾患の場合にはメラトニンの使用は避ける方が賢明です。


【葉緑体の豊富な食材はミトコンドリアを活性化する】

 現在の地球の大気には21パーセントの酸素が含まれていますが、誕生したばかりの地球には酸素はほとんどありませんでした。25億年から30億年前に、光合成を行って酸素を発生するシアノバクテリアが海の中で誕生しました。

シアノバクテリアは藍藻とも呼ばれ、酸素発生型光合成を行う原核生物です。酸素発生型光合成は、植物の葉緑体が行う光合成と基本的に同じものですが、それは現在の植物の葉緑体はシアノバクテリアが真核細胞に共生して形成されたからです。

この光合成では水を電子供与体とし、水分子から電子を奪い、その副産物として酸素ができます。水と光があればエネルギーが得られることとなり、当時の地球上で大繁殖しました。

その結果、それまでの酸素を含まない大気に酸素を供給することとなり、現在に近い酸素を豊富に含む好気的大気に変えていったと考えられています。

大気中に酸素が増えると、酸素を利用してエネルギーを産生するα-プロテオバクテリアが誕生し、約20億年前に原始真核生物と共生する様になってミトコンドリアという細胞内小器官となりました。シアノバクテリアも真核細胞の祖先との内部共生によって真核細胞に取り込まれ、植物の葉緑体の祖先となったと考えられています。植物はミトコンドリアと葉緑体の両方を持っています。

シアノバクテリアは光合成によって酸素を発生し、α-プロテオバクテリアは酸素を使ってATPを産生しますが、両方とも活性酸素が発生します。この活性酸素の害を防ぐためにメラトニンが誕生しました。

つまり、メラトニンが誕生したのはシアノバクテリアが誕生した25億年から30億年前と考えられています。


シアノバクテリアを先祖に持つ葉緑体もミトコンドリアと同様にメラトニンを合成していることが証明されています。葉緑体にはメラトニン以外にも、ルテインやアスタキサンチンなど多種類のカロテノイドや、その他の抗酸化物質を多く含みます。

したがって、葉緑体の多い食材を摂取することは体内のミトコンドリアの保護にも役立ちます。その様な食材として葉菜類の野菜や、健康食品として利用されている緑藻のクロレラや藍藻のスピルリナなどがあります。

クロレラは直径3~8μmのほぼ球形の単細胞緑藻で、主に湖沼や河川などに生息しています。光合成能力が極めて大きく、細胞の半分以上を葉緑体が占めています。タンパク質や脂肪の含有量も他の植物性食品に比べて多いので、栄養補充にも有用です。

スピルリナは、藍藻類に属する全長0.3-0.5mmの螺旋状の微細藻類で、マヤ文明の時代から人々の貴重な栄養源の1つとして世界中で食されてきたという長い歴史を持っています。

クロレラが骨格筋のミトコンドリアの酸化傷害を防ぐメカニズムで、筋肉の萎縮を防止する効果がマウスを使った動物実験で報告されています。クロレラの長期摂取が加齢に伴う筋萎縮を予防する可能性があることを示唆しています。

クロレラやスピルリナには様々な健康作用が報告されており、そのメカニズムとして高い抗酸化力と栄養価によると考えられていますが、ミトコンドリアを酸化傷害から保護し、さらに活性化する作用が関与している可能性が指摘されています。


体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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