見出し画像

27)過労からの体力回復を促進するサプリメント

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術27

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【疲労回復にはミトコンドリアを活性化するサプリメントが有用】

 「過労(過度の疲労)による体調不良を理由に、静養のために病院に入院」という様な記事を時々見かけます。

長時間労働が長く続くと心身に負担がかかり、様々な症状が出てきます。過労による体調不良の症状として、めまい、頭痛、不眠、食欲低下、疲労感などがあります。この段階はまだ病気をいうレベルではありませんが、過労がひどくなると脳・心臓疾患(高血圧、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、など)を誘発して死に至る場合もあります。これを過労死と言います。長時間労働や仕事上の過度のストレスから心身の不調を来たし、自殺する場合もあります。

入院しても、特殊な治療法があるわけではありません。検査を一通り行って、特に異常がなければ、ベット上で安静にして、ビタミンやブドウ糖の入った輸液(点滴)を行う程度です。漢方治療の知識があれば、補中益気湯や人参養栄湯の様な滋養強壮作用のある漢方薬を処方するかもしれません。

栄養ドリンクやサプリメントは疲労回復の促進に有用ですが、病院では医師は使えません。日本では保険医と保険診療機関は病気の治療に保険適用薬しか使えないためです。「保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、叉は処方してはいけない」という規則が定められています。(保険医療機関及び保険医療養担当規則の第19条)

したがって、患者さんが自分の判断で滋養強壮作用のある栄養ドリンクやサプリメントを利用することになります。

心身の疲労は、仕事から離れて静養し、睡眠時間の確保や食生活の改善によって多くは回復します。特に若い人は回復力が高いので、すぐに回復します。

しかし、50歳代や60歳代以上になってくると、加齢とともに回復力が低下します。それは体力や抵抗力を高める体内成分(ビタミン様成分など)の産生が低下しているためです。したがって、加齢とともに不足しがちな体内成分をサプリメントとして補うことは、疲労回復の促進に有効と言えます。


【体内のビタミン様成分の産生能が加齢に伴って減少する】

 私たちが生きていくためには、食物からの栄養素の摂取が必要です。脂肪、糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを五大栄養素といいます。この5つの栄養素のどれが不足しても、体の正常機能が障害されます。

ビタミン(Vitamin)の「ビタ(vita)」は「生命」とか「活力」を意味する言葉で、生命に不可欠な物質という意味をこめて名づけられました。ビタミンは、体の中で三大栄養素(脂肪、糖質、たんぱく質)の代謝を助ける働きをしています。多くの酵素反応や遺伝子発現に必須の働きを担っています。脂肪・糖質・たんぱく質のように、細胞の構成成分を作ったり、エネルギー源になるものではありませんが、それがないと体という“機械”がスムーズに働かない、いわば“潤滑油”のような働きをしているのです。

ビタミンは水に良く溶ける「水溶性ビタミン」と、水にはほとんど溶けず油に溶ける「脂溶性ビタミン」に大別されます。水溶性ビタミンには、ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)とビタミンCが含まれます。脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kがあります。

ナイアシン(ニコチン酸とニコチン酸アミド)はビタミンB3とも呼ばれ、電子伝達体のニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド (NAD) やニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換され、酸化還元反応に関与する酵素の補酵素として働きます。

その他のビタミン類も、細胞の働きに必須であり、不足すると様々な欠乏症を引き起こします。ビタミンは体内で合成できないので、食品から体内に取り入れるしかありません。食事からの摂取が不足する場合には、サプリメントで補う必要があります。

ビタミンと同様に、酵素反応や遺伝子発現に必須な働きを担っている体内成分の中には体内で必要量が合成されるものもあります。例えば、アルファリポ酸、L-カルニチン、コエンザイムQ10は食事から摂取する以外に体内でも合成されています。体内で必要量が合成できるのでビタミンには含まれませんが、ビタミンと類似の働きを担っているので、ビタミン様物質と呼ばれます。

体内で合成されるビタミン様物質は、加齢とともにその産生量が低下します。ビタミン様物質の体内量が減少すると、さらに細胞や組織の機能が低下して産生量がさらに低下するという悪循環を引き起こし、体の老化が促進されます。加齢とともに減少するこれらの体内成分を補えば、この悪循環を断ち切ることができます。

つまり、体内で合成されているビタミン様物質は加齢とともに減少するので、ビタミンと同様に食事やサプリメントで補うことは疲労の回復促進に有効と言えます。

【補酵素は体内の化学反応を活性化する】

 私たちの体内では、生きていくために様々な化学反応が起こっています。食事からの栄養を分解してエネルギーを産生し、細胞分裂で細胞を増やす際には細胞を構成するタンパク質や脂質やDNAを新たに合成する必要があります。

このような体内での化学反応は酵素というタンパク質が行います。酵素は生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子です。酵素は多くの種類があり、その数は約2000種類と言われています。

酵素の中にはタンパク質のみで活性を発現するものもありますが、活性発現にはある種の低分子の有機化合物を必要とするものもあります。このように酵素作用の発現に必須の低分子有機化合物を補酵素(コエンザイム)と呼びます。

補酵素の多くはビタミンから生体内で作られています。特にビタミンB群やナイアシンは生体内でさまざまな酵素の活性発現に必要な補酵素として機能します。ビタミンB群やナイアシンの欠乏は補酵素の欠乏を引き起こして、これらの補酵素が必要な各酵素の活性が低下し、生命活動の低下が起こり、回復力が低下します。


【ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド (NAD) は補酵素として多くの酵素反応に関与する】

 ニコチン酸とニコチン酸アミドは総称してナイアシン (Niacin) あるいはビタミンB3とも言います(図)。水溶性ビタミンのビタミンB複合体の一つで、糖質や脂質やタンパク質の代謝に不可欠です。

画像1

図:ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)の化学構造

 

ナイアシンは電子伝達体のニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド (NAD+) やニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換され、酸化還元反応 (電子が供与体分子から受容体分子に転移する反応) に関与する酵素の補酵素として機能しています(図)。

画像2

図:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)とニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸(NADP+)の構造


NAD+は全ての真核生物と多くの細菌で用いられる電子伝達体です。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取ります。NAD+が水素の受け取り手となります。NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸(酸化的リン酸化)の中心的な役割を担っています。

老化に伴いNAD+量が低下しますが、ニコチンアミド・リボシド(nicotinamide riboside:NR)やニコチンアミド・モノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide:NMN)などのNAD+中間代謝産物の補充がNAD+の体内量を増やすことが明らかになっています。

NAD +前駆体のNRやNMNの投与は、筋肉や肝臓や心臓におけるミトコンドリア機能を改善し、これらの臓器機能を高めることがマウスなどの動物を使った複数の実験で示されています。(図)。

画像3

図:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide:NAD+)はトリプトファンやニコチン酸やニコチンアミドなどから生成するルートもあるが、特にNAD+の前駆物質であるニコチンアミド・モノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide:NMN)とニコチンアミド・リボシド(nicotinamide riboside:NR)をサプリメントとして摂取すると体内のNAD+を増やすことができる。


【R体アルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素複合体の補助因子】

 アルファリポ酸は、多数の酵素の補助因子として欠かせない体内成分です。特に、グルコースの解糖で生成されたピルビン酸をアセチルCoAに変換するピルビン酸脱水素酵素複合体の補助因子として、ミトコンドリアでのエネルギー産生に重要な役割を果たしています。

かつてはビタミンB群のビタミンに分類されていましたが、体内で合成されるため、現在ではビタミンとは分類されていません。ビタミン様物質と認識されています。

日本国内では医薬品(適応は「激しい肉体疲労時にリポ酸の需要が増大したとき」など)としてのみ取り扱われていましたが、2004年より一般のサプリメントに配合しても良い成分となりました。糖代謝の促進や抗酸化作用があるので、ダイエット効果や抗老化や美容を目的としたサプリメントとしても人気があります。

アルファリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体(鏡像異性体)が存在します。光学異性体はちょうど右手と左手のように鏡写しの関係になっています。つまり、R体を鏡に写すとS体になるという関係です

体内で生成されるアルファリポ酸はR体のみで、S体は天然には存在しません。しかし、アルファリポ酸を人工的に合成するとR体50%、S体50%の化合物が出来上がります。これをラセミ体と呼びます。ラセミ体からR体のみの単離が可能であり、R体だけのサプリメントも販売されています。

画像4

図:アルファリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体(鏡像異性体)が存在する。体内で生成されるアルファリポ酸はR体のみで、S体は天然には存在しない。


アルファリポ酸の場合、S体やラセミ体と比較して、R体の方が生物活性(=効果)が高いという研究結果が数多く報告されています。アルファリポ酸がミトコンドリアを活性化するのは、ピルビン酸脱水素酵素の補酵素として作用するからです。

ピルビン酸脱水素酵素を活性化する作用はR体のみで、逆にS体のアルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を阻害します。抗酸化作用だけが目的であればラセミ体でも目的を達成できますが、ミトコンドリアを活性化する目的ではR体のみのアルファリポ酸を使った製品を摂取することが重要です。

画像5

図:グルコース(ブドウ糖)が細胞質内で解糖系で分解されてピルビン酸になる。ピルビン酸はミトコンドリアに入ってピルビン酸脱水素酵素によってアセチルCoAになってTCA回路で代謝される。R体アルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を高めるがS体アルファリポ酸は阻害する。


【L-カルニチンはミトコンドリアでの脂肪燃焼を促進】

 L-カルニチンは生体の脂質代謝に関与するビタミン様物質です。L-カルニチンは脂肪酸と結合し、脂肪酸をミトコンドリアの内部に運搬する役割を担っています。

脂肪酸を燃焼してエネルギーを産生する際には、脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリアに運ばなければなりません。中鎖脂肪酸(炭素の数が8~12個)の場合は直接ミトコンドリアに入ることができますが、長鎖脂肪酸(炭素数が13以上)の場合は、L-カルニチンが結合しないとミトコンドリアの中に入ることができません。食事から摂取する脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸です。

画像6

図:L-カルニチンは脂肪酸と結合し、脂肪酸をミトコンドリアの内部に運搬する役割を担っている。脂肪酸を燃焼してエネルギーを産生する際には、脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリアに運ばなければならない。中鎖脂肪酸(炭素の数が8~12個)の場合は直接ミトコンドリアに入ることができるが、長鎖脂肪酸(炭素数が13以上)の場合は、L-カルニチンが結合しないとミトコンドリアの中に入ることができない。


L-カルニチンはヒトの体内で合成されます。カルニチンの合成には2つの必須アミノ酸(リジン、メチオニン)、3つのビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6)、還元型鉄イオンが必要で、これらの栄養素の一つでも不足すればカルニチンは不足することになります。

L-カルニチンの合成は肝臓、腎臓、脳でのみ起こります。心臓と骨格筋のように、脂肪酸の酸化によって主なエネルギーを得ている組織は、L-カルニチンを合成できないため、血液中のL-カルニチンを取り込んで利用しています。

食事性カルニチンの主な供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれていません。体内で合成されますが、加齢や病気で体力が消耗したり、栄養素が不足するとL-カルニチンの欠乏がおこり、細胞内でのエネルギー産生が低下します。肉や乳製品を排除する食事はカルニチンの不足を引き起こしやすくします。

L-カルニチンは体重減少のサプリメントとして人気がありますが、それは脂肪酸酸化を高めることができるためです。カルニチンの補充が倦怠感の軽減に有効であることが臨床試験で示されています。


【コエンザイムQ10はミトコンドリアの呼吸鎖の成分】

 コエンザイムQ10(Coenzyme Q10)は別名ユビキノン(Ubiquinone)やユビデカレノン(Ubidecarenone)とも呼ばれ、体内で作られる物質です。CoQ10(コーキューテン)と略されて呼ばれています。かつてビタミンQと呼ばれたこともありますが、動物体内で合成することができるためビタミンではありません。(下図)。

画像7

図:コエンザイムQ10の化学構造


ミトコンドリアでATPを産生する電子伝達系において電子伝達体の一つとして働きます。さらに、活性酸素やフリーラジカルを消去する抗酸化作用があり、細胞や組織を酸化傷害から守る効果があります。

ミトコンドリアでのATP産生を高める効果と抗酸化作用があるため、体力増強と抗老化作用があります。ネズミを使った実験で、CoQ10を多く摂取させると若さを永く保ち、年をとっても活動性が落ちないという研究結果が発表されています。CoQ10を与えられたネズミは与えられないネズミより長生きだという研究報告もあります。

CoQ10は心筋細胞や骨格筋のミトコンドリアでのATP産生を高めるので、心臓機能を高めると同時に、運動能力の向上にも有効です。

画像8

図:ミトコンドリアで糖質・脂質・タンパク質を分解してエネルギーのATPを生成する(①)。ミトコンドリアでは酸素を使ってATPを産生する過程で活性酸素が発生する(②)。ATPの産生が増えると心臓(③)や骨格筋(④)の働きが良くなり、運動能力や持久力が向上する(⑤)。コエンザイムQ10(CoQ10)はミトコンドリアの酸素呼吸を高めATP産生を増やす(⑥)。CoQ10は抗酸化作用があり活性酸素によるミトコンドリアの酸化傷害を軽減する(⑦)。これらの総合効果によって体の若返り、減量、美容効果を発揮する(⑧)。



CoQ10はアセチルCoAという物質からコレステロールと同じ経路でつくられていきます。血中に存在するコエンザイムQ10の約60%は体内で合成されたものに由来すると考えられています。CoQ10は体内でつくられますが、その量は加齢とともに少なくなります。

CoQ10は肉類や魚介類やナッツ類などの食品に含まれていますが、加齢に伴う体内量の不足を食事で補うには、現実的ではないほどの大量の食材を食べなければならず、サプリメントで摂るメリットは大きいと言えます。

日本ではかつてうっ血性心不全の治療薬として医療用に使用されていましたが、2004年から健康食品や化粧品への利用が許可され、サプリメントとして購入できるようになりました。

医薬品としては、「基礎治療施行中の軽度及び中等度のうっ血性心不全症状」の効能・効果で、1日30mgの用量で承認されています。加齢と共に体内産生量が低下するので、健康増進や抗老化の目的でサプリメントで補給する意味は十分にあります。


【ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンはピルビン酸脱水素酵素を活性化する】

 ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(diisopropylamine dichloroacetate)はビタミン様物質として知られ、食品ではゴマやビール酵母などによく含まれるパンガミン酸の構成成分です。

画像9

図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの化学構造


一般用医薬品(第3類医薬品)では、肝臓の働きをサポートし、肉体疲労時の滋養強壮・栄養補給を目的とする栄養ドリンク剤などに配合されています。

リゲイン、新グロモント、ヘパリーゼ、リポビタンDなどのドリンク剤やレバウルソ、ヘパフィット、レバオールDXなどの一般用医薬品に配合されています。

これらは薬局でも購入できますし、第3類医薬品(薬剤師または登録販売者による情報提供についての義務のない医薬品で、ビタミン剤や整腸剤などが含まれる)なので、通信販売でも購入できます。

インターネットで「ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン サプリ」などで検索すると、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの入った栄養ドリンクや一般用医薬品が多数見つかります。

医薬品としてはリバオール(Liverall)があります。50年以上前から慢性肝疾患の治療薬として使用されています。

栄養ドリンクのリゲイン(第一三共ヘルスケア)には、1本にジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)30mg、ビタミンB1(ベンフォチアミン)10mg、ビタミンB2リン酸エステル5mg、ビタミンB6が10mg、ニコチン酸アミド30mg、無水カフェイン50mg、タウリン1000mgなどが含まれています。

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)+ビタミンB1の組み合わせはミトコンドリアの酸素呼吸を活性化するので体力を高める効果があることが医学的に証明されています。

画像10

図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンは多くのドリンク剤や一般用医薬品に配合されている。医薬品としてはリバオールがある。


【漢方薬のアダプトゲン効果】

 アダプトゲン(adaptogen)という言葉は、中国伝統医学(漢方医学)やアーユルヴェーダなどの伝統医療や、ハーブや薬草を使う自然療法において、様々なストレスに対する体の適応能力や抵抗力を高める効果がある薬草や薬草由来成分を指す用語として使用されています。

「adapt」というのは「適応(順応)させる;適応(順応)する」という意味で、「-gen」は「を生じるもの;生じたもの」という意味です。

したがって、アダプトゲン(adaptogen)というのは「適応促進薬」とか「環境適応源」という意味合いになり、「体の適応能力を高める物質」のことを指す用語です。

体には、過労などの身体的な負担、不安や心配事などの精神的な負担、感染症や外傷や有害物質などの生体に害を及ぼす外因など、様々なストレスが加わっており、これらのストレスに適応できなくなると病気を発症します。したがって、これらの様々なストレスに対する適応力や抵抗能力を高めることは、多くの病気の予防や治療に有効です。

アダプトゲンのような薬効や概念は中国医学では4000年以上前から認識されていました。すなわち、生体エネルギーである「気」を高める「補気薬」は、体力や免疫力や治癒力を高めて、病気に対する適応能力や抵抗力を高めて、病気を治す目的で使用されています。補気薬の代表が高麗人参と黄耆です。

様々なストレスに対する適応能力や抵抗力を高める薬という概念が近代医学で認識されるようになったのは1940年代です。当時のロシアでは、体内で「非特異的抵抗性」を生じさせる物質の研究が始まりました。その理由の一つは、シベリアのような極寒の地で軍隊の力を高めるために、兵士の運動能力や適応能力を高める方法が研究されたためです。

1947年にNikolai Lazarevは、「身体的、化学的、生物学的な様々なストレスに対する体の抵抗力を高める物質」をadaptogenと定義しました。

1958年には、ロシアの薬理学者ブレクマン(Israel I. Brekhman)教授は、adaptogenが満たす条件として、

1)生体にとって無害である、
2)各種の要因(物理的、化学的、生物学的な要因など)による生体ストレスに対する適応能力や抵抗力を高める、
3)異常を起こした体を正常化させる、の3点を挙げています。

すなわち、アダプトゲンというのは、体力や抵抗力を高める滋養強壮効果があり、内分泌系や免疫系の働きを正常化あるいは高め、体に備わった恒常性維持機能を活性化する効果をもったものと言えます。

そして、体に備わった治癒力や恒常性維持機能を高めることによって体調の不良や病気を治すことができます。

このような都合の良い効能を一つの物質に求めることは困難であり、複数の成分を含有する薬草や生薬などから見つかっています。アダプトゲン作用のある生薬はハーブとして、高麗人参、黄耆、霊芝、冬虫夏草、五味子、エゾウコギ(刺五加、シベリアニンジン)など多くの薬草が知られています。

画像11

図:体に対して毒性が無く、様々なストレスに対する非特異的な抵抗力を高め、生体機能の異常を正常化する効果をもった物質を「アダプトゲン」という。アダプトゲン作用を持った生薬として高麗人参・黄耆・霊芝・冬虫夏草・五味子・エゾウコギ(刺五加)などがあり、これらは様々な病気の治療に有効で、漢方治療で使用される頻度が高い。


健康増進や抗老化の目的では、アダプトゲンの組み合わせだけでも十分に目的を達成できます。

胃腸の状態を良くする生薬、血液循環や解毒機能を良くする生薬などを併用すると、体の治癒力や抵抗力を高める漢方薬を作成できます。このような漢方薬を日頃から服用していると、体を若い状態に保つことができます。

以上の様に、過労からの回復を促進する方法として、静養や睡眠や食事からの栄養摂取に加えて、アダプトゲン作用のある漢方薬(高麗人参や黄耆など)や、ビタミン剤(特にビタミンB群)や、加齢とともに減少するビタミン様成分(アルファリポ酸、L-カルニチン、コエンザイムQ10)のサプリメントを摂取すると、回復を早めることができます。

特に高齢者の場合は、安静やビタミン剤の点滴くらいでは、過労による疲労の回復には不十分だと思います。疲労回復に必要な体内成分が不足し、体内での産生量が減っているためです。これらの成分をサプリメントで補って、ミトコンドリアの働きを良くする治療が必要だと思います。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?