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言葉・おしゃれ・哲学の関係性♪ 感想その6 中原中也


「言葉の服 おしゃれと気づきの哲学」

ゆっくりと読み進めています♪

この本は、まるで「言葉の宝石箱」のように
私の心に響きます。
新鮮な知識の波を受けとめながら読み進め
ていくと出会える、やわらかく光る言葉たち。

今日は、『中原中也の「憧憬」』 。

中原中也の「憧憬」


大正時代のおしゃれな肖像で印象深い
のは、詩人の中原中也である。
強い個性と哀愁をたたえているこの有
名な写真は、上京したばかりの18歳ご
ろに銀座の写真館で撮った1枚だ。

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では全身はどんなスタイルだったのだ
ろう。
当時の恋人や友人たちの証言をもとに
調べてみた。
帽子は山高帽を内側にめり込ませて、
わざとぺたんこにつぶしている。
髪は耳が隠れるほど長い。
シャツとネクタイは黒。
襟元にたっぷりギャザーを取ったマン
トは、150センチほどの小柄な身長に引
きずるように長い。
パンツは太ももがゆったりして、足首
を細くしたピエロのような形。
フランス製の白い陶器の長パイプをく
わえて歩いていた。
その強烈な自己表現は、道行く人が振
り返るほどの、かなりアバンギャルド
なおしゃれだった。
ふと思い浮かぶイラストがある。
ヴェルレーヌが描いたアルチュール・
ランボウのスケッチである。

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フランスの天才詩人は青春を激しく歌
い、短い生涯を華麗に駆け抜けた15歳
試作を始め、嵐のように名作の詩を描
き残し20歳で詩人をやめ、最後は37歳
で武器商人として早世したこのランボ
ウこそ、中原中也の憧れの人だった。
その姿も生き方もファッションも。
中也が生前に刊行した本はたった4冊し
かない。
1冊は自作詩集「山羊の歌」だが、わず
か200部の自費出版。
残り全ては、実にランボウの翻訳詩集
だった。
30歳で亡くなる直前に、中也3冊目の翻
訳詩集を出しているが、その表紙がま
さにこのスケッチなのである。
肖像写真の若き日の真剣なまなざしは、
一過性のおしゃれ熱ではなく、人生の
最後まで激しく燃え続けていたことに
心打たれる。

 風が立ち、浪が騒ぎ、
  無限の前に腕を振る。

 (中原中也「盲目の秋」より)

中也が降る腕の彼方には、ランボウが
見つけた「永遠」が輝いている。
そして海に沈む夕日をシルエットに、
その腕は今も私たちの前で大きく振ら
れている。


私は学生時代、中原中也やランボウや
ヴェルレーヌの詩が好きでした。
上田敏訳の「秋の歌」は、抒情的で心に
残りました。

【秋の歌(落葉)】/ヴェルレーヌ

秋の日の

ヴィオロンの 

ためいきの

ひたぶるに

身にしみて

うら悲し。


鐘のおとに

胸ふたぎ

色かへて

涙ぐむ

過ぎし日の

おもひでや。


げにわれは

うらぶれて

ここかしこ

さだめなく

とび散らふ

落葉かな。
(上田敏訳)


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