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手のひら。
銃床の表面に当てられた手のひらの内側に滲む汗
闇 烏が一羽左へ その時 フラッシュと激しい音
硝煙の匂い 無人機の照準が狙うターゲットが

手のひら。 
おい まだ熱は下がらないのかな 氷枕 変えたほうがいいよ のぞき込まれ 顔が近寄って来る ワイシャツの匂いは

手のひら。
おでこに当てられた肉厚な手と消毒液の匂い 往診の鞄 扁桃腺へんとうせんが赤いですね。風邪でしょう。あの日の手のひら ひんやりとした感触の

手のひら。
あの日の運動会は最後の綱引きにみんなが燃えた。そーれそーれ!老いも若きも一本の綱に必死に捕まり 暴れる綱 手と手は重なり掴みあい 握りあい ぎゅうっと絡まりあい あー!プツンと綱が切れた あの日が

手のひら。
平塚の七夕祭り 幼い娘は慣れない浴衣 七夕が見えないからお父さん肩車!と両手を天に伸ばす 父親は手のひらを掴み肩車 小さな手に刻まれた記憶へ

手のひら。
手のひらは小さな歴史を刻み刻まれ
記憶は手のひらからまた手のひらへ
いま手のひらは

手のひら。
コロナ病棟
「あなたの最期の時  その手を手袋越しでしか握れなくて、ごめんなさい。最期まで家族思いのあなたのその手を握れずに ほんとうにごめんなさい。」

手のひら。
患者さんと傍で手を握ることもできず、病院の電話に怯え 心配しながら待つしかない家族がたくさんいるんだなぁと思うとこんな状況は怒りを通り越して泣けてくる

手のひら。
人の温もりは




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