秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作…

秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作品  江國香織「なつのひかり」  高田郁「あきない世傅」  若松英輔「藍色の福音」 好きな映画  “The Notebook", “The Polar Express" 「まちの本屋」

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    こどもの頃からの出来事を綴ったもの (不定期更新)

記事一覧

里山

水温む 田んぼの横で 麦の穂が 風に揺れている 行き来する度 発見がある 奥に連なる山々 教会の十字架 背の高いお地蔵さま 次は梅雨時 紫陽花の葉の上の カタツムリ…

秋桜
4時間前

窮鼠

ある時 米びつ代わりの タッパーの蓋が欠けていた よく見れば歯型 まさかと絶句 プラスチックなど 美味しくなかろうに 聞けば 前の借り手は 贔屓にしていて 時に 高級…

秋桜
18時間前

加速

爽やかな風を受けて 走り出した朝 犬を見かけて減速 花時計を目がけて加速 あっという間にゴール なのに 帰りはすっかり牛歩 同伴者の企てで うぐいすきなこのお団子を …

秋桜
1日前

神経

図太くは無く か細くもなく ただ鈍感なだけ トランプの10倍以上 めくっては確かめ 元に戻しての繰り返し 時折は手を休め 新緑を眺め 日の陰りを感じつつ 淡々と続ける …

秋桜
2日前
1

余韻

日曜午前のレッスン前 せめて反復練習すべきところ 鍵盤に向かうのはごくわずか お稽古後のお菓子の準備に むしろ時間を割いていた いかにお菓子の妖精の曲でも 力を注ぐ…

秋桜
4日前
2

待ち時間

電車はちょうど出たばかり 次は小一時間も先 昨日と同じに違いないのに 自販機の並びを眺め 横切る雀を目で追ううちに 反対側が先に到着 また静かになる 読みかけの本を…

秋桜
4日前
1

河童

子どもの頃 電車から見える 用水路の柵に 河童の絵が描かれていて 頭のお皿が乾いたら大変らしいとか 水の流れに引きずり込まれる そんなイメージでいた 久々に水に親しむ…

秋桜
5日前

明滅

蛍の季節には まだ早い 怖がりの枕元で チカチカ光る 懐中電灯 近寄ると 真っ暗に 遠ざかると 光が漏れる この調子では また朝寝坊 時折覗く 静かな夜更け

秋桜
6日前

着席

連休にかかる大移動 つい思い浮かべたのは 「フルーツバスケット」 減りゆく椅子に 滑り込み 終われば 普通に友達同士 高速移動は 座席ありき 不思議と満席 皆どこへ向…

秋桜
7日前
2

道路にできた水溜まり バシャンと派手な水しぶき 平らになるのは きっとまだ先 重たそうな車輌が ミシミシと通る あたかも 鈍い痛みに  身が抉られるかのよう 晴れ渡…

秋桜
8日前
1

双葉

種を蒔き、お水を撒いて 来る日も来る日も 静かに見守る ついに芽生え 大きい種は 土を 力強く押し上げ 小さい方は 柔らかに 両葉を広げる そういえば最初は こんな風…

秋桜
9日前
2

カウンター席

限定おふたり 予約したのに 寝坊しすぎの お客さん 1人はトマトが大好き 目玉焼きは半熟 ハムも一緒に焼いて シリアルに苺を乗せ 牛乳をたっぷり もう一人は胡瓜をポリポ…

秋桜
10日前
1

せせらぎ

山頂から 木立を抜け せせらぎの水音に 耳を澄ませる 橋の裏には 網目のような水紋が きらきらと映る めだかの群れと なぜか猫が一匹 水辺で岩に腰掛け 素足をひたす …

秋桜
11日前
1

回転

海の幸のお皿が ビューンと流れてくるのを 久々に見ながら お出汁の効いた お味噌汁を一口 良かれと選んだ巻き物が うっかり逆で ツーンとくる方 ごめんごめんと 頼み直し…

秋桜
12日前

模索

弱みと気付きながらも 日頃は何とかなっていて そう困ってはいないと 自分に言い訳を与え 克服できずにいた いくつかの事 恥入る場面があっても 喉元を通り過ぎれば また…

秋桜
13日前
2

帰還

夜半に見た景色 トラックとバスが 詰め詰めに並ぶ お店にはその土地以外の 銘菓もずらり もう一箇所も 同じようでいて よく見るとだいぶ違う うつらうつらと まどろむう…

秋桜
2週間前
1

里山

水温む 田んぼの横で
麦の穂が 風に揺れている

行き来する度 発見がある

奥に連なる山々
教会の十字架
背の高いお地蔵さま

次は梅雨時
紫陽花の葉の上の
カタツムリにも
出会えるだろうか

窮鼠

ある時 米びつ代わりの
タッパーの蓋が欠けていた
よく見れば歯型
まさかと絶句
プラスチックなど
美味しくなかろうに

聞けば 前の借り手は
贔屓にしていて 時に
高級アイスをふるまって
すっかりなついていたらしい
挙げ句は天井裏の運動会

大家さんに相談してみたら
何やら取り出し
大丈夫だ これで
人さ いねえところへ
逃げてゆくべと
しんみり言うのだ

見たこともない
鮮やかな色の特効薬

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加速

爽やかな風を受けて
走り出した朝

犬を見かけて減速
花時計を目がけて加速
あっという間にゴール

なのに 帰りはすっかり牛歩
同伴者の企てで
うぐいすきなこのお団子を
平らに運んで お土産に

趣旨に賛同は得たものの
すぐに息切れ ついつい歩き

昼前のアスファルトでは
影絵のオオカミで遊ぶうち
風のように 追い抜かれ

相当地道に続けないと
どうやら勝ち目はなさそうで
密かに練習したくなる

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神経

図太くは無く
か細くもなく
ただ鈍感なだけ

トランプの10倍以上
めくっては確かめ
元に戻しての繰り返し

時折は手を休め
新緑を眺め
日の陰りを感じつつ
淡々と続ける

家路に着く頃
空は むらさき
続きは明日
気付かずにいた
不思議な景色

余韻

日曜午前のレッスン前
せめて反復練習すべきところ
鍵盤に向かうのはごくわずか

お稽古後のお菓子の準備に
むしろ時間を割いていた

いかにお菓子の妖精の曲でも
力を注ぐポイントは 
そこでは無かろうに

弾き込んでくる一番手と
あまりに暢気な二番手と
目指すところが異なる生徒

後年 楽譜に残る 書き込みに
匙を投げずに教えてくれた
師匠のありがたさを実感

一月遅れのお祝いの
ケーキの焼ける匂い

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待ち時間

電車はちょうど出たばかり
次は小一時間も先

昨日と同じに違いないのに
自販機の並びを眺め
横切る雀を目で追ううちに
反対側が先に到着
また静かになる

読みかけの本をおもむろに開く
栞は後半 往復すれば
読み切れるだろう

先達にも 駆け出しの時期があり 
その後 想像し難い出来事に 
何度も見舞われながら
人や自然との関わりの中で
生きていたことに気付かされ
誰しも順風満帆な時ばかりではないと

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河童

子どもの頃
電車から見える
用水路の柵に
河童の絵が描かれていて
頭のお皿が乾いたら大変らしいとか
水の流れに引きずり込まれる
そんなイメージでいた

久々に水に親しむひとときを
見ているうちに なぜか思い出した
架空の生きもののお話

明滅

蛍の季節には まだ早い
怖がりの枕元で
チカチカ光る
懐中電灯

近寄ると 真っ暗に
遠ざかると 光が漏れる
この調子では また朝寝坊
時折覗く 静かな夜更け

着席

連休にかかる大移動
つい思い浮かべたのは
「フルーツバスケット」
減りゆく椅子に 滑り込み
終われば 普通に友達同士

高速移動は 座席ありき
不思議と満席
皆どこへ向かっているのか
降りた途端 人波に揉まれ
次なる席へとひた走る 

着いたばかりの電車から
新たに人が押し寄せる
あっけに取られ 声も出ず
奇跡の座席にホッとして
居眠りするのも 無理はない

道路にできた水溜まり
バシャンと派手な水しぶき
平らになるのは きっとまだ先
重たそうな車輌が ミシミシと通る

あたかも 鈍い痛みに 
身が抉られるかのよう
晴れ渡る日が 待ち遠しい

双葉

種を蒔き、お水を撒いて
来る日も来る日も
静かに見守る

ついに芽生え
大きい種は 土を
力強く押し上げ

小さい方は 柔らかに
両葉を広げる

そういえば最初は
こんな風だった

懐かしさに
つい目を細める

やがて本葉が育てば
バッタが跳んできて
遊び場にするだろう

カウンター席

限定おふたり
予約したのに
寝坊しすぎの
お客さん

1人はトマトが大好き
目玉焼きは半熟
ハムも一緒に焼いて
シリアルに苺を乗せ
牛乳をたっぷり

もう一人は胡瓜をポリポリ
半熟は困る
ハムは焼かずに
ご飯を食べたい

食べ始めてから
すっと椅子を降り
お醤油を取りに来る

後はセルフで 
お構いなく

くだを巻くこともなく
かわいらしい常連さま

だが しかし
この人数で なぜ揃わない?
給食

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せせらぎ

山頂から 木立を抜け
せせらぎの水音に
耳を澄ませる

橋の裏には 網目のような水紋が
きらきらと映る

めだかの群れと
なぜか猫が一匹

水辺で岩に腰掛け
素足をひたす

雲ひとつない空
新緑の中から聞こえる
うぐいすの声

水は勢いよく さらさら流れ
岩にかかると とぷんと音を立て
視界を通り過ぎる

この時期ならではの
心癒やされるひととき

帰りはすっかり夏の日差し
頬を真っ赤にして
疲れ

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回転

海の幸のお皿が
ビューンと流れてくるのを
久々に見ながら
お出汁の効いた
お味噌汁を一口

良かれと選んだ巻き物が
うっかり逆で
ツーンとくる方
ごめんごめんと
頼み直しつつ
ゆっくり口に運ぶ
苦手なものでも
たまには食べよう

日暮れ時 
それぞれ愉しむ
週末の一コマ

天井の鏡は
何組のお客を
映しただろうか

模索

弱みと気付きながらも
日頃は何とかなっていて
そう困ってはいないと
自分に言い訳を与え
克服できずにいた
いくつかの事

恥入る場面があっても
喉元を通り過ぎれば
また横に押しやる

自分の偽らざる気持ちは
一体どこにあるのだろうか

必ずやり遂げたいとの思いの裏に
代わりがなく 責任を持って
優先すべきことがあっても
無意識にも意識的にも
後回しにしがち

言葉に出さず
頭の中だけの発想に囚われ

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帰還

夜半に見た景色
トラックとバスが
詰め詰めに並ぶ
お店にはその土地以外の
銘菓もずらり

もう一箇所も
同じようでいて
よく見るとだいぶ違う

うつらうつらと
まどろむうちに
辺りが明るくなり
定刻で到着

朗らかなアナウンスに
耳を傾け 鉄橋を渡り 
駅に降り立つ

朝日差す 青葉の並木
時間どおりの ラジオ体操

空き地の 大きな水溜まり
ビルの谷間の 四角い空

長い一日が
夕陽とともに

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