窮鼠

ある時 米びつ代わりの
タッパーの蓋が欠けていた
よく見れば歯型
まさかと絶句
プラスチックなど
美味しくなかろうに

聞けば 前の借り手は
贔屓にしていて 時に
高級アイスをふるまって
すっかりなついていたらしい
挙げ句は天井裏の運動会

大家さんに相談してみたら
何やら取り出し
大丈夫だ これで
人さ いねえところへ
逃げてゆくべと
しんみり言うのだ

見たこともない
鮮やかな色の特効薬

たしかに それからは
音もなく 平穏な日々

もし猫がいたならば
苦しまぎれに
立ち向かったのだろうか

学生向けの その住まいは
随分前に役目を終えて
取り壊されたと 噂で知った

時折 街ネズミを見かけると
なぜだか気持ちが泡立つのだった





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