秋桜
こどもの頃からの出来事を綴ったもの (不定期更新)
定刻の晩ご飯 いただきますの直前に 不意に聞こえたその音は 予定を変えるに十分で 一も二もなく さぁ出発 澄んだ空に きらめく花火 楕円もあれば 星も飛び出す 居間に戻れば すっかり現実 ささやかな晩 温め直す
本の続きを 読みながら 電車が来るのを待つ 雨が激しくなり そういえば薄ら寒い フード付きの上着で 飲み物を両手で抱え 待合室に駆け込む姿に もうそんな季節かと驚く これが晩ならば 尚のこと 温もりが恋しくなるのだろう
この間は緑色 今度は渋い枯れ葉色 躓きかけて しげしげ眺める 今まで何処に隠れてたのか 単に色替えだけのつもりか 返事か聞けるはずもなく じゃあねと 脇を通り抜け
ふっとひと息 さっと飛び出し 光と影とを 行ったり来たり 自由を満喫 鏡を見つめ 普段に戻る
穏やかに晴れ 薄着で外出 ちょうど良い 気分転換 首を反らし ぐるりと見渡す 広い空を独り占め 絵筆で描いたような雲 たわわに実る柿 あっという間の一周
もう随分と前の春 転校生に尋ねてみたのは 噂で聞いた家電のこと 地域によっては一家に一台 見かけもしないし 実感湧かずで あるよ! ないの?と 逆に訊かれて 本当らしいと ようやく知った 雨に濡れ 裾持て余し 温もり求めて 帰るうちに 急に浮かんだ 笑窪顔
かすかな音は きっと終電 仮装用にと針仕事 驚かせるため 片棒担ぐ
誰しも 持ち時間は いつか終わる それが いつかは 分からない もう十分 満足なのか もう沢山 懲り懲りか 心の在りようは その人次第 ずっと変わらないかに見えた物事や 人の考えも 自身の思いも 時の流れとともに 移ろい漂う 朝靄の山並み 小高い丘に建ち並ぶ家々 飛ぶように過ぎゆく景色 やがてトンネルに入ると 窓に映る自分の姿 どこなりとも移動するのと いつも同じベンチに腰掛け 車の往来を眺めているご老人と どれほどの違いがあろうか 日月の動きを追うようなもので 全
かつて 小学校の授業で 20歳になった自分宛に 手紙を書いたことがあった 紙自体は行方知らずだが 当時 頭を絞り 手を動かし 書いた中身は 忘れがたく 時折思い出すのだった 面倒だと思わず 簡単に諦めることなく 大人として 使命を果たし 悔いのない人生を 生きなければと
朝晩覗いて 水行き渡らせて ようやく出てきた 二番手の新芽 気付けば 隣も またその隣も つややかな葉 隙間を埋めつつ まっすぐ伸びる 静かにはじまる お花畑
乗り換え待ちの すきま時間 1音からスタート 長調を短調に 音色を変え 和音を分散 マーチをワルツに 音符を踊らせ ここだけ跳ねて 続きは滑らか 鍵盤なしで 自在に遊ぶ 今日はここまで そろそろ 電車が来る気配
春を逃し 夏は見送り 秋に至って ようやく投函
少し前から 毎朝 決まって落ちていて 袋を持って 拾い出したら きりがなさそう ここに穴場と 教えたくなる 秋の木立ちの お楽しみ
週の始めの大移動 初めての道行き 目前で扉が閉まり 出発地点で待ちぼうけ 到着地点でまたも足止め 出口とよく似た乗換口 次はきっと大丈夫 帰りは帰り もうすぐ発車 次まで待てない 二段階に駆け下りてから 乗りたい電車は 隣と気付く 随分深く掘ったものだと 頭の中で独り言 猛然と上り下り 辛うじて乗り込む ヘマを繰り返してでも 出掛けたいのは その場所に 心を満たす 大切な何かがあるから 天の神様に笑われながら 少しずつ覚えるしかない
窓を打つ風の音で目覚め 長袖を着込む 早くも冬眠かと思う程 布団にすっぽり隠れた子も 後がなくなり ようやく出発 沼はひたひたに波打ち 水路は金木犀の花に覆われ ザリガニのはさみが 時折見え隠れする ざくろとアケビの季節 そういえば初の遭遇 顔が☓印になるほどの 酸っぱさと わずかな渋み 続いて とろける甘さ すっかり虜になる 無邪気な姿 紅葉の一歩手前 秋桜が風に揺れる 山里の秋
幹線沿いの公孫樹 背は高く 匂いがしない 皆 足元を気にすることなく 止まって見上げるでもなく 通り過ぎてゆく 随分前に植え替えたのか 最初からそうなのか 中通りは金銀の小花 香りは圧倒的に金が勝る 丸みを帯びた刈込姿 ひときわ大きな楠は別格 根元も踏まれる心配もなく 四方に枝を広げ 神聖な飾り付き 神社の鳥居とお隣とが 遠目にも近く ビル同士も手が届きそうだが そこに人の気配はない さっぱりと整えられた 都会の週末