見出し画像

【アタッチメント理論】 集団保育における「家庭的な雰囲気」とアタッチメントの大切さ

はじめに
 
保育者の皆さん、こんにちは。今回は、集団保育の現場で大切にしたい「家庭的な雰囲気」と、子どもたちとのアタッチメントについてお話しします。

 家庭とは異質な集団の中で、子どもたちのアタッチメントのあり方は、家庭でのそれとは少し異なります。特に低年齢の子どもたちを保育する際には、「家庭的な雰囲気」を大事にしながら、どのようにして子どもたちとの信頼関係を築いていくかがポイントです。


1.保育園でのアタッチメントの特性

 保育園では、一人の保育者が複数の子どもを担当します。例えば、保育者の先生は、3歳のさくらちゃんと4歳のけんたくん、その他にも数人の子どもたちを一度に見ています。このように、一人で多くの子どもたちの面倒を見ることは、家庭で親が一対一で子どもに接する場合とは異なります

 さくらちゃんはお絵かきが大好きで、一日中絵を描いていたいと望んでいますが、けんたくんは外で元気に遊ぶのが好きで、頻繁に外に連れて行ってほしいと頼みます。先生はできるだけ両方のニーズに応えようと努力しますが、同時に他の子どもたちの世話もしなければなりません。

 そのため、どうしてもすべての子どもの希望に完璧に応えることは難しく、さくらちゃんがもっと絵を描きたいのに時間が足りなかったり、けんたくんがもっと遊びたかったのに次の活動に移らなければならなかったりと、結果的に不満が残ることがあります。

 このように、保育者が複数の子どものニーズに対応する際には、家庭とは異なるチャレンジが伴います。

 しかし、子どもたちは、集団の中で楽しく過ごせるように配慮してくれる保育者に対して信頼を寄せます。例えば、先生が「今日はみんなで大きな紙にお絵かきをしよう!」と提案すると、さくらちゃんもけんたくんも一緒に参加して楽しむことができます。こうした活動を通じて、子どもたちは「いざとなったらこの先生がなんとかしてくれる」と感じ、安心感を得るのです。

 個々の子どもと直接関わる時間は少なくても子ども同士のやりとりにしっかりと目を向け、みんなが楽しく過ごせるように配慮しましょう。例えば、さくらちゃんがけんたくんと一緒にお絵かきをしているときに、先生が適切にサポートすることで、二人の間に良好なコミュニケーションが生まれます。

 こうした配慮が、結果的に保育者と子どもたちの間に良好なアタッチメントを形成することにつながります。

 このように、保育者が子どもたち全体の活動に目を配り、集団で楽しく過ごせる環境を提供することが、子どもたちの信頼と安心感を高めるのです。

2.集団的敏感性

 集団的敏感性とは、子ども同士のやりとりに目を配り、集団全体として楽しく、安全に過ごせるように関わることです。保育者は、一人ひとりの子どものシグナルに注意を向けるだけでなく、クラス全体の様子にも目を向けることが求められます。

 例えば、先生はクラスの子どもたちが退屈している様子を見て、「今日はみんなで音楽に合わせてダンスをしよう!」と提案します。この活動を通じて、子どもたちは一緒に楽しむことができ、自然と助け合いや協力が生まれます。

 また、ある日、けんたくんが積み木で遊んでいるときに、さくらちゃんが近づいて一緒に遊びたがっていることに気付いた先生は、「さくらちゃんも一緒に遊びたいみたいだね。けんたくん、さくらちゃんに教えてあげられるかな?」と声をかけます。こうした関わりを通じて、子ども同士の助け合いが促進されます。

 このように、保育者が集団的敏感性を発揮することで、子どもたちが安全で楽しく過ごせる環境を作り出すことができるのです。

3.二者関係的敏感性

 二者関係的敏感性とは、1対1の関わりの中で発揮される敏感性です。一人ひとりの子どもの個別のニーズをいち早く読み取り、適切に対応することが求められます。

 例えば、さくらちゃんが朝から元気がなく、いつも楽しんでいるお絵かきにも興味を示さない様子を見て、先生は「どうしたの?元気がないみたいだけど、何かあったの?」と優しく声をかけます。さくらちゃんが「お腹が痛いの」と答えると、先生はすぐにさくらちゃんの体調を確認し、必要に応じて保護者に連絡するなどの対応を取ります。

 また、けんたくんが友達との遊びで困った表情をしているのに気付いた先生は、「けんたくん、どうしたの?何か手伝おうか?」と声をかけます。けんたくんが「友達が僕のおもちゃを取っちゃった」と話すと、先生はけんたくんと一緒に問題を解決するための方法を考え、友達との間を仲裁します。

 このように、保育者が二者関係的敏感性を発揮することで、子どもたちが安心して自分の気持ちを表現し、必要なサポートを受けることができるのです。

4.臨機応変な対応が求められる

 多数の子どもがいる状況では、子どもたちがみんな楽しく安全に過ごせるような配慮が求められます。

 例えば、クラスに、他の子どもたちと遊ぶのが苦手なまゆちゃんがいるとします。まゆちゃんは保育者から離れるのをいやがることが多く、いつもそばにいてほしいと求めます。先生はまゆちゃんが安心できるように、できるだけそばに寄り添いながら、「一緒にブロックで遊ぼうか」と誘い、少しずつ他の子どもたちとの交流を促します。

 また、けんたくんとたろうくんが遊んでいる途中でおもちゃの取り合いになったとき、先生は状況を見守りつつ、「どうしたの?話し合ってみようか」と声をかけます。けんたくんとたろうくんが自分たちで解決策を見つけようとする様子を見守りながら、必要に応じて助言をします。けんたくんが「順番に使おう」と提案し、たろうくんも納得して一件落着となります。

 このように、安全を配慮しつつ、子ども同士が話し合って解決している様子が見られるときは見守るなど、保育者には臨機応変な対応が求められます。これにより、子どもたちは安心して過ごすことができ、自己解決能力も育まれるのです。

最後に
 
保育者の役割は、個々の子どもとの直接的な関わりだけでなく、集団全体の雰囲気を整え、子どもたちが安心して過ごせる環境を提供することです。集団的敏感性二者関係的敏感性をバランスよく発揮し、子どもたちとの良好なアタッチメントを築いていきましょう。これからも、子どもたち一人ひとりの成長を支える保育者として、頑張ってください。

 この記事が、皆さんの保育活動の一助となれば幸いです。次回もお楽しみに!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?