小説ハイスクール物語 5 女番長と彼女の意外な繋がり 珈琲喫茶タイムにて

高校の近くのバス停で鉄男が待っていた。
「鉄男、今日はバイクじゃないのか?」
「今日はサボリだ、杉田には腹が痛えって電話した今日は彼女の車で1日ドライブだ。美容室は月曜日休みだからな。それより、ユウキの彼女、可愛いじゃねえか。竹田理美って言うんだろ?
もう1発やったか?」
「まだだよ。」
「ユウキ、馬鹿だなお前、早くしねえと他のヤツに先にヤラれちまうぞ。まあ、とにかくユウキに彼女が出来たから祝杯をあげようと思ってな。あそこの岸辺公園に行こう。」

岸辺公園のベンチに座ると鉄男は缶ビールを2缶取り出し僕に1つ渡した。
「鉄男、酒飲んだらマズイだろ。」
「350mlだから大丈夫だ。それにビールはアルコール度数が低いんだ。サッポロ黒ラベルにした。
いろいろ飲んだが、俺はこれが1番旨いと思う。
ホップの効きが違うんだ。」
「ホップの効き?」
「まあ飲んでみろ。」
「苦いけど旨いなこれ。」
「そうだろ。その苦さがビールの良さなんだ。
ユウキ、空き缶持ってるとマズイから俺によこせ。
時間だから行く。今度彼女に会ったらキスして
胸くらい触らせてもらえ。また明日な。」

学校に向かって歩き出すとフラフラした。そして少し頭がボーッとなって来た。自分の席に座ると

小松
「鈴原、お前、酒臭せーぞ。」
細川
「ホントだ、酒臭せー。オーイ!、みんなー!、
窓開けろー!」
小松
「全開にしろ、全開にー!」
山田
「鈴原、ホームルームの時間までに後20分ある。
弁当食え、弁当。胃の中に食べ物を入れると酒の
臭いが取れるから。オーイ、森ー!そこのヤカンに水汲んできてくれー!」

僕は弁当を食べ、ヤカンの水をがぶ飲みした。
少し症状が和らいだ気がした。

宮坂
「鈴原の顔、真っ赤だぜ、ヤベーな。」
尾崎
「鈴原、マスクやるから、マスクしろ、杉田がもうすぐ来る。」

杉田先生はその日なぜか嬉しそうだった。

「起立、礼、着席。」
杉田先生
「みんな、窓を全部開けて、そんなに暑いか?
まあ、もうすぐ夏休みだ、頑張れ。」
高木
「先生、デレデレとニヤけてどうしたんですか?」
杉田先生
「高木、ニヤけてるとは何だ、ニヤけてるとは。
実は先生の妻がな、妊娠したんだ。」
クラス全員
「エッチー!」
杉田先生
「エッチとは何だお前ら、
おめでとうございますくらい言えないのか?
まあ、お前たちにも好きな女の子がいるだろうな。
先生も高校の時に好きな女の子がいてな、スケッチブックを買って来て、その女の子のことを思い出しながら、写生していたな。」
平出
「おいみんな、好きな女の子を思い出して、射精していたってよ。嫌らしいヤロウだよな。」
杉田先生
「おい平出、そっちの射精じゃない!
それより、鈴原、お前、マスクして顔が真っ赤じゃないか、お前、熱があるぞ、それ。今日はいいから帰って医者に行け。」
小松
「鈴原、ラッキーだったな。」
杉田先生
「鈴原、お前、フラフラしてるじゃないか、
おい、誰か、鈴原を家まで送ってやれ。」
「先生、大丈夫です。ひとりで帰れます。」

僕は学校を出ると、今朝鉄男とビールを飲んだ岸辺公園に行き、そのベンチで横になった。また少し
目が廻って来た。そしてまた、頭がボーッとして来た。少しすると女の人たちの声が遠くの方で聞こえている気がした。

「ねえ、この子、酔って眠っちゃってるよ。」
「この子、かわいいな、私の好みだな。」
「ねえ、あそこの草むらに運んで行って、みんなでまわさない?」
「待ちなー!」
「姉さん。」
「その子は私の知り合いの子の彼なんだ。私の店に運んで、すぐそこだから。」
「姉さんのお知り合いの彼でしたか、失礼しました。申し訳ありません。」

僕はみんなに運ばれているというのだけが分かった

何処かに横になったのは覚えていたが、その後のことは覚えていなかった。
目が覚めると、

「鈴原、酔いは冷めた?私は桐生栄子、黒百合の
総番だよ。」
「黒百合・・」
「S女子高の不良グループ黒百合の総番が目の前にいてビビった?私は亡くなった翠のマブダチだったんだよ。私は中学の時からグレていた。みんな私を避けて通ったよ。でも翠だけは私と正面から接してくれた。私は、高校に行くつもりなんかなかった。
翠が頑張って私と同じ高校に行こう、と言ってくれたからS女子高に入学出来た。でも翠は3年前の夏学校から帰る途中で信号無視したトラックにはねられて亡くなってしまった。鈴原優雨樹という年下のかわいい彼をひとり残して。」
「翠の親友だったんですか。」
「翠は私を鈴原に紹介すると言った。でも、私はグレていたから、翠に迷惑をかけたくなくて断った
鈴原、珈琲淹れてあげるよ。
鈴原、私はお前に新しい彼女が出来たことを怒ってなんかいない。翠が亡くなって3年だ。翠も鈴原に幸せになって欲しいと思ってるよ。問題はその新しい彼女が理美だったっていうこと。
この珈琲喫茶タイムは私の伯父が道楽で経営していてね。私の好きに使わせてもらっている。私の実家は別の所にあって隣の家が理美の家。私は理美とは子どもの頃から姉妹同然に育った。私のかわいい妹のようなもの。鈴原とは縁があるみたいだ。
理美に翠のことを話させてもらったよ。
私のメンバーに学校が終わったら理美にここに来るように伝えさせた。
理美は怒ってもいなければ悲しんでもいない。
ただ、鈴原の口から話して欲しいと言っている。
夕方までここにいて、理美に翠のことを話して。
はい、珈琲。お昼はパスタでいいね?
少し待ってて。」

僕は栄子さんが淹れてくれた珈琲を飲みながら、 
翠のことを思い出していた。






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