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短編小説の本棚

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日常や現代ファンタジーの小説が多く含まれています。 たまに過酷なファンタジーもありますが、楽観的な作者の書くものです。 最後はきれいに纏まって読後は良いような気がします、たぶんで…
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#公園

いつか、また

いつか、また

 頬が痛い。顔を上げると目の前のパソコンが起動していた。画面に表示された時間は午後十一時を少し回る。取り敢えず終了させた。
 中途半端に寝たせいで眠気に見放されたようだ。イスの背もたれに引っ掛けていたパーカーを羽織る。ポケットの中の財布を確認して部屋を出た。
 軋む床をそっと歩いた。居間の光が廊下に漏れている。近づくと父親と母親が言い争っていた。
「正幸の不登校はいつまで続くんだ」
「わからないわ

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幼い天使は静かに微笑む

幼い天使は静かに微笑む


第1話 夜の公園で出会う 今日の授業が終わった。塾に居残る理由はない。それなのに俺は機能を停止したロボットの状態から、なかなか抜け出せない。がらんとした教室に一人でいた。
「早く帰りなさい」
 見回りにきた講師に言われて俺は重い腰を上げた。身体まで重い。心には冷たい鉛が詰め込まれ、底の方が今にも破れそうだ。
 教室を出ると右手を見ないようにした。この間の試験の全順位が貼り出されている。俺は初めて

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