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オンラインでヨーロッパに会社を設立した話

こんにちは、マサキです。
ありがたいことに講演やアドバイザリの依頼を頂くようになったので、オンラインでエストニアに会社を設立しました。
エストニアは、ヨーロッパのバルト3国の一つで、実在する国家です。おそらく世界で唯一、住民票取得から会社設立・運営まで全てがオンラインで完結します。私は一度もエストニア現地に行ったことはありません。
以下のメリットを感じて、会社を設立しました。

1. 居住地に制約がなく、世界中どこからでも仕事ができるから
2. 税制上かなり有利だから
3. エストニアの決算・会計は全てデジタル化されており、ネットで完結するので管理が簡単だから
4. 法人設立が非常に簡単で、初期費用・維持費共にリーズナブルだから

国際的に働くフリーランスにとっては、痒い所に手が届く、ありがたい仕組みがたくさんあります。
逆に、日本での設立と比べた時のデメリットは以下です。

1. 日本語での情報はほとんどないので、英語で情報収集する必要がある
2. エストニアの会計に関する法律を学ぶ必要がある(もしくは税理士を雇う)
3. 結局色々費用はかかる(安くなるかはケースバイケース)
4. 日本人の顧客は海外送金する必要があるので、顧客に負担がかかる

順に説明していきます。
調べたネットのエストニア情報は古く実際と違う部分もあったので、その部分も正直に書いていこうと思います。
(※専門家ではないので、会計に関する知識は、体験した範囲のみに適用され、一般論としては間違っている可能性があります。会計はかなりケースバイケースで複雑なので、私は現地税理士を雇いました。あくまで体験記としてお読み下さい。)

1. 居住地の制約がない

1.1 行政サービスはネットで完結する

エストニアは「電子国家」を標榜しており、デジタル住民票e-Residencyを外国人でも簡単に、エストニアに一度も行かずして手に入れることができます。私はネットで申し込み後、1ヶ月くらいでエストニア大使館に認証カードが届きました。(2023年現在日本では受け取れません。私はロンドンで受け取りました)

カード到着時はしっかりとした箱に入っています
中を開くと、USBカードリーダーが入っていて、これで世界中どこでも
エストニアの行政サービスにアクセスできます。

このe-Residencyをつかうと、オンラインで認証できるので、一度もエストニアに行くことなく、各種行政サービスをうけることができます。私はイギリスと日本に居住地がありますが、世界中どこにいようと行政上何も支障がありません。そもそも全情報においてデジタルが公式なので、紙を印刷する必要も対面で確認する必要もありません。最近はコンビニで住民票印刷できて日本も便利になってきたなぁと思ってましたが、レベルが違います。そもそもプリンタも市役所もいらないのですから。
また、スマホアプリのsmart IDというのを一度登録すると、なんとこのカードすら必要なくなります。日本のマイナンバーカードの超すごい版と思っていただければ良いです。(そもそも、日本のマイナンバーはエストニアを参考にして作られているそうです。)

1.2 法人口座開設・送金などもネットで完結する

会社設立後の大きな壁の一つが銀行での法人口座開設で、特に外国人に対して厳しく、結局、現地人のパートナーが必要だったりするのが、海外での起業問題でした。しかし、エストニアにはWiseがあり、ネットで簡単に法人口座開設できます。しかも、e-Residencyと連携しているので、会社の認証番号を入れると勝手に紐づけてくれます。複数の通貨に対応しており、私のケースでは、ユーロ、ポンド、日本円の3種類を同一口座で管理できています。日本の銀行口座との送金もスムーズで、かつ、送金手数料も業界最小です。

2. 税制上有利である

エストニアの会社なので、日本で日本人向けにサービスを行なっていたとしても、エストニアの法律に従うことになります。日本とエストニアは二重租税の回避条約が結ばれているため、税金が二重で課税されることはありません。基本的には、日本よりも有利な点が多いです。

法人税がかなり安い

エストニアの法人税は一律20%の上、日本と違って利益には課税されません。利益を配当として支払う際にのみ、20%の法人税が課せられる形になります。つまり内部留保をしている限り課税されないのです。これがエストニアで会社を設立する最大のメリットといえるでしょう。
飛行機やPCなど経費として落とせるものが非課税で使用できると考えると、かなりのメリットとなります。
税制の詳細は以下のSetGoさんの情報をどうぞ。

3. 決算・会計処理もオンラインで完結

エストニアの法律では、年に一度決算報告をする必要があり、怠ると罰金を取られ、ネット上で公知されます。また、年間売上が40,000€を超える場合は、月度報告も必要となり、ちょっと大変です。(私のケースは1年間に一度で良いので楽です。)
これもネットで申請ができるので、現地に行く必要がありません。
ただし、この報告書は素人がかけるものではないようなので、現地会計士を雇って一年に一度書いてもらうのが無難です。私はArbalans社にお願いしました。

4. 法人設立が簡単

なんと会社設立までネットでできてしまいます。会社設立は情報を打ち込むだけで良いのですが、エストニアを拠点とするサービスプロバイダを雇う必要があります。
私の場合は、日本人が立ち上げたサービスプロバイダのSetGoを使用しました。

以前は、情報入力して15分で会社設立できる手軽さだったようです。

しかし、2023年現在はメールで希望を出して、面談後に3,4日後に会社設立です。日本語対応はなくなり、全て英語となりました。それでも手軽ですし、質問にも細やかに答えてくれるので、素晴らしいサービスだと思います。

デメリットについて

デメリットは、エストニアの税制を学ぶ時間的コストが結構かかることに尽きますが、興味深いので私にとってはデメリットではありません。

正直1年目なので完全には把握しきれていないですが、金銭面で以下の費用はかかっています。
1. e-Residency登録費用€100
2. SetGo設立代行費€440
3. 税理士費用年間€70
もし、会社を畳む時は、€3,000程度かかります。また、会社設立時には必要ないですが、いずれ資本金として€2,500を用意する必要があります。
このため、少なくとも€6,110以上の売り上げが見込めない限り、設立するメリットは出ません。
また、国際的に働ける良さも、日本から出ない人にとってはあまりメリットにはならないでしょう。
ただ、日本で会社を設立することを思えば、破格の安さであり、特にフリーランスとしてはかなりアリです。会社を持っていると、相手企業が発注しやすくなり、受けられる仕事の枠も増えたりします。

フリーランスとして働いたり、副業を考えている方の助けになれば幸いです。

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