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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#日本酒

すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

「おでん処 わんらうんど」2021年1月11日(月・祝)

もしも、この寒さに頷くとすれば、
体も心もとろけるような温もりを欲する。
もしも、この空腹が満たされるならば、
染み入るような食と酒を求める。

その願いと期待に反して、街のネオンの数は乏しく闇に支配されつつあった。
歩いても歩いても、シャッターで閉ざされたおどろおどろしい空漠しかなかった。
妥協と諦念の只中に揺れ動く空腹。
そこにどこか

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札幌都心に潜む、角打ちの洞窟。

札幌都心に潜む、角打ちの洞窟。

「鮨角打ち・裏酒商たかの」2020年12月19日(土)

未知なる「澄川」駅から、既知なる「大通」駅へ。
来慣れたエリアへの到着は良しとしても、外は強風で舞う雪が視界を閉ざした。
それは殺意を抱いているとさえ思われる寒さだ。
その中で目指した店は、小樽で堪能した角打ちの支店である。
が、地図上では確実に到着しているのに、店が見当たらない。
しかも来慣れたビルだというのに、その存在すら知悉していない

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未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

「酒処 ふじりん」2020年11月28日(土)

列車の轟音、鄙びた商店街、静かに降り積もる雪。
知らない街だというのに、どこか懐かしいくせに、
賑わいのないそのどこかに、世界の没落を夢見る不埒な欲求を心の隙間に垣間見る。
歳を積み重ねるとは、そんな心象風景の繰り返しなのかもしれない。

謎めく小樽を巡る最後の店に入ると、意想外の混み様であった。
しかも客層は程々に若々しく、世界の没落など幻想に過

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車窓に映る雪、日本海、そして小樽角打ちの哀愁。

車窓に映る雪、日本海、そして小樽角打ちの哀愁。

「銘酒角打ちセンター たかの」2020年11月23日(土)

小樽は、物寂しい冬が似合う。
友とともに小樽に行くことを決めてから、心躍る日々が続いていた。
そしていざ、空席の目立つ列車に乗り込む。
日本海に近づくと、雪化粧された世界が突如として現れた。

それにしても、小樽に降り立つのは何十年ぶりであろう?
JRに乗りさえすれば30分もかからずに着くというのに、いつでも行けるという意識がずっと小樽

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