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小説

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#原田マハ

モネのあしあと #5

絵筆のタッチの違いしかもこの一瞬の時間を描くために、モネは素早いタッチで絵筆を動かしてい…

モネのあしあと #4

アカデミーの呪縛美術の世界では長らく、画家とは「職人」的な要素が強い存在でした。王侯貴族…

モネのあしあと #3

一九世紀後半のパリのカフェテラス先述のオスマン計画には、セーヌ川の河岸にびっしりと建てら…

モネのあしあと #2

子供の頃から絵を描くのが好きだったクロード・モネは、一八四〇年、パリ市内で生まれて、少年…

モネのあしあと #1

はじめにふと気がつくと、大好きな画家の足跡をたどっている。旅を重ねるうちに、そう気がつい…

ゴッホのあしあと#4

浮世絵の影響力 一九世紀のフランス画壇では、フランス芸術アカデミーという、芸術界の権威の…

ゴッホのあしあと#3

迷いを感じる初期作品 初期のゴッホの作品が、実は日本にもあります。新潟県立近代美術館の寄託作品で、一八八五年に描かれた《長い棒を持つ農婦》の絵です。暗い色調で、「これ、ゴッホの絵なの?」と誰もが見紛うような、ミレーの影響が色濃い作品です。  二〇一六年の夏、「モネ展」が開催され、講演会で美術館を訪れました。その講演のときに、 「実は、この美術館には、ゴッホの素晴らしい絵があります」  とお伝えしたら、 「えー? どこに?」  と、会場からどよめきが起こりました。  同時開催で

ゴッホのあしあと#2

オランダ生まれのゴッホ ゴッホの人生を、時間軸に沿って辿ってみたいと思います。  彼の生…

ゴッホのあしあと#1

「狂気と情熱の画家」というフレーズ 私は、印象派、後期印象派の絵画が大好きで、これまで…

〈あの絵〉のまえで #5

ギターケースは、初めて会ったとき、なっしーにぴったり寄り添っていた。まるで立体的な影のよ…

〈あの絵〉のまえで #4

窓辺の小鳥たち秋の始まりを告げるように、夜半に雨が降り始めた。 ベッドに入ってからも、な…

〈あの絵〉のまえで #3

持ち合わせがあまりないことを思い出して、枝豆ひと皿だけ、注文した。それをつまみに、一杯限…

〈あの絵〉のまえで #2

そんな亜季は、なかなか就職が決まらずにじりじりと焦れる私をただなぐさめるだけでなく、でき…

〈あの絵〉のまえで #1

ハッピー・バースデーいちにちのうちで、なんと言っても、朝がいちばん好きだ。 午前六時五分まえ、どんなにいい夢をみていても、ぱっと目が覚める。スマホのアラームはきっかり六時にかけているのに、どうしてだろう、決まって五分まえに目が覚める。 もうはるか昔のことになるけれど、十代の頃なんて、目覚まし時計をかけてもちっとも役に立たなかった。それがいまじゃ目覚まし時計要らず。正確すぎる体内目覚まし時計が、ばっちり起こしてくれるのだ。 アラームをリセットして、すぐに広島カープファンの