[試合分析レポート③]2023.10.7 オリンピック予選 日本vsスロベニア
日本男子のオリンピック予選が終了しました。
今回はその中でも一番大事な試合であったといっても過言ではない、スロベニア戦について分析・解説したいと思います。
なお、スタッツの見方や用語の解説は以下の投稿に詳しく書いてあります。
主要メンバー・結果
主要メンバー
日本(JPN)
セッター(S):8番 関田
オポジット(OP):1番 西田
アウトサイドヒッター(OH):14番 石川、12番 高橋藍
ミドルブロッカー(MB):2番 小野寺、6番 山内、10番 高橋健
リベロ(L):20番 山本
スロベニア(SLO)
セッター(S):9番ヴィンチッチ
オポジット(OP):19番モジッチ
アウトサイドヒッター(OH):17番ウルナウト、18番チェブリ
ミドルブロッカー(MB):2番パイェンク、4番コザメルニク
リベロ(L):13番コヴァチッチ
スロベニアの特徴としては、スピードとパワーのある攻撃力だと思います。
特にパワーのあるチェブリ選手と石川選手に並ぶテクニカルなスパイカーであるウルナウト選手を軸としたサイド攻撃が目立ちます。
結果
試合のハイライトは公式YouTubeでも観ることができます。
JPN SLO
1セット目 25 21
2セット目 25 22
3セット目 25 18
試合分析
1セット目・・・日本の最大の武器
1セット目は日本の良さがとても活きたセットだったと思います。
特にこの中でもポイントとなるのが、
・効果的なサーブで相手の攻撃を削っていた
・最強の布陣とローテ
です。
まず、ジャンプサーブは1番の西田選手、12番の高橋選手、14番の石川選手が相手のレセプションを崩すことができていました。
レセプションが苦手な18番のチェブリ選手を狙いに強く打てていたと思います。
そして8番の関田選手はフローターサーブで18番のチェブリ選手を狙っていました。
レセプションが苦手な選手はフローターサーブをオーバーハンドで取るのですが、チェブリ選手の返球が少し短かったり低かった感じがします。
そうするとセッターはクイックにトスを上げにくくなります。
日本のブロックが走っていたのもあって、9番のヴィンチッチ選手はサイドにトスを振りましたが、それを日本はブロックタッチやディグで処理できていました。
そして、うまく返った時の3本目に14番の石川選手がとても上手に決めています。
これが、日本の最大の武器といえます。
①後衛の山本選手、高橋選手の断トツのディフェンス力
②関田選手の精度が高くスピードのあるトス
③石川選手の攻撃の多彩さによる驚異的なスパイク決定力
この布陣のとき、日本は世界トップの得点力を誇ります。
そして、今回1番ブレイクしているのがこの布陣であるS1ローテなのです。
関田選手がサーブを打つ時のローテーションですね。
日本は1セット目この攻守の連携を活かしてもぎ取っていきました。
2セット目はスロベニアはこの布陣を攻略できるのでしょうか。
2セット目・・・強烈なサーブの応酬!
2セット目は18番チェブリ選手と19番モジッチ選手のサーブが猛威を振るいました。
山本選手のレセプションもあまり安定しなかったのもあって、なかなかサイドアウトを取れない場面が続きました。
序盤、高橋選手のスパイクがあまり決まっていないように見えます。
スパイクコースを見てみると、アウトになったのが2本、ブロックに当てて得点が2本あります。
これはどちらも相手MB(真ん中のブロッカー)を意識しているからだと思います。
逆に西田選手のスパイクはほとんどが決まっていますね。
西田選手のスパイクコースも見てみましょう。
全てクロス方向に決まっています。
これはどういう事かと言うと、相手MB(真ん中のブロッカー)が追い付いていなくてクロス方向のコースが空いていたということです。
つまり、このセットではスロベニアは日本のレフトスパイカーにMBが寄っていたことが考えられます。
実は、日本の攻撃はもともと前衛のレフトだけではなく、後衛レフトによるパイプ攻撃・前衛のクイック攻撃がレフト側に少し寄るスタイルを取っています。
1セット目では日本はレフトからと真ん中からの攻撃が多かったので、スロベニアはMB(真ん中のブロッカー)をレフト側に寄せて対応しようとしたことが考えられます。
しかし、2セット目では日本はクイック攻撃が1本のみで結果的に西田選手により多く打たれてしまいました。
しかし、日本は2セット目でブロックを大分意識したと思います。
3セット目はどのような駆け引きが行われるでしょうか。
3セット目・・・勝敗を分けたミドルブロッカー
そして、第3セット、日本が取りました!
日本もスロベニアもレセプション失敗が4本ずつと3セット目も強烈なサーブの応酬でした。
その中で、高橋選手の2本のサービスエースは流れを変える得点だったと思います。
特に日本のブレイクの場面で、スロベニアのレセプションが乱れていることが多いことが分かります。
しかし、実際のスパイク決定数は両チームそれほど変わりませんしミスは日本の方が多くなっています。
では、なにが日本とスロベニアの勝敗を分けたのか。
スタッツ①を見ると、小野寺選手のブロックタッチが5本もあることが分かります。
サーブが綺麗に返された時でも、早いトスに追いついてしっかりタッチが取れています。
また、スパイク決定数も3本でこのセットは石川選手に次いで2番目です。
どこの攻撃に対してもブロックにつけていて、かつクイックで得点に貢献するとともに相手のブロックマークを分散させることができていたことが結果に繋がったと思います。
全体を通して
今回の試合全体では、全ての項目で日本がスロベニアを上回りました。
ポイントは次の通りです。
・日本がブロック効果率でスロベニアを上回った。
・日本がサーブで狙っていたチェブリ選手のレセプションがかなり低くなっている。
日本は世界の国と比べて身長が低く、ブロック効果率は低くなることが多くなります。
しかし今試合ではブロック得点・ブロックタッチ数どちらもスロベニアを上回りました。
そしてスパイク効果率でも全員が高い数値です。
今回の試合は日本のミドルブロッカー(MB)が世界に通用することを証明するものとなったでしょう。
そして、日本が要所でサーブで狙っていた18番チェブリ選手ですが20%台となっています。
日本の高橋選手が71%であることと比べるとだいぶ低いことが分かります。逆に高橋選手の数値はとんでもないですね。まさにリベロ兼スパイカーです。
最後に、日本のオポジット(OP)・西田選手とスロベニアのオポジット(OP)・モジッチ選手のスパイクコースを見てみましょう。
図は前衛ライトからの攻撃です。左が1番西田選手で、右が19番のモジッチ選手です。
西田選手はクロス方向に偏っていて、モジッチ選手はストレート方向に偏っていることが分かると思います。
前衛ライトは攻撃のテンポが速く、ブロックが追い付くかどうかがカギとなります。
西田選手がクロス方向に多いのは、スロベニアのブロックがあまり追いついていなかったからだと考えられます。
逆にモジッチ選手は日本のブロックがクロスについていたため、ストレートに打たざるを得なかったんだと思います。
こういう場面でも日本のミドルブロッカー(MB)が活きていたことがうかがえます。
最後に
今回の試合により、日本はオリンピック出場を決めることができました。
試合後インタビューで関田選手が鳴いていたシーンがとても印象的です。
オリンピック前の大会はあと1つとなりました。
来年に向けて選手や戦略の分析を進めていけるように頑張ります!
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