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【02】 11月17日/高尾山「スマホの使いみち その2」

 11月17日、国立西洋美術館と高尾山での撮影の帰り道に寄り道して話を伺うことに。スマートフォンの普及で便利になったことはいろいろとあるけれど、それだけでどうにかなるってほど、シンプルではないんですよね。

 少しづつ垣間見えてきた、生駒さんが感じているいろいろな気持ち。障害によって直面する表面的な困りごとだけでなく、それに伴うさまざまなものがあるとあらためて知ることになり。個人の前に「障害者」というフィルターを置いてしまうと、つい見逃してしまうものがあると気づかされました。


g:スマートフォンになったら全然違うでしょ?もしかしたらそれが初めての「はっきり見える体験」なんじゃない?

夢:かもしれないですね。ガラケーの時も、なんか文字を大きくするのとかダサくて嫌で。でもこう顔を近づけるのもダサくて嫌で。なんか形で読み取ってました。文字が見えてなくても。

g:スマートフォンでいろんな事が変わったんだろうね。

夢:いい時代に生まれました(笑)。

g:そうだよね、それこそ事前に調べるとかできるのもスマートフォンがあればこそだし。ここ4、5年はキャッシュレスが急激に普及して、それまではレジとかお金払うのが苦手だったんでしょ?でも苦手って言っても、しなきゃいけないわけじゃない。それはもうストレスだったの?常に。


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夢:うん、そんないちいち「あー」とは思わないですけど全然、でもちょっとわからないとか、見えないっていう場面になった時に、焦りっていうか「あ、どうしよどうしよ」って時はあります。

g:例えばさ、なんかほらコンビニの店員さんとかさ、「しゃいやせー」みたいな滑舌の人いるよね?

夢:そうそうそうそう(笑)。

g:「350円です」みたいのを、「●×△▼??」みたいな(笑)。そういう店員さんとかいるじゃんか(笑)。

夢:そうです。そうです、はっきり言って!って(笑)。「え、なんて?」みたいな、うん。

g:それどうするの?なんかもうよくわかんないけど、とりあえず大きいお札出すとか、そんな感じ?

夢:そうですね、場合によるんですけど、それこそなんか隣にあんまり親しくない人がいて、私の見え方知らないっていう時は、もうポンって大きいお札出して「小銭が増えた〜」って思うこともあるし、見え方知ってる友達とかだったら「え、なんて」って聞いたりとかはします。

g:まあいちいち見え方説明するのも面倒だし、知られたら知られたで気を使われるのが嫌なんだよね?

夢:そっちの方が面倒ですかね。「え、大丈夫」みたいな、

g:知られて急に心配されるのもちょっと重いというか、かえって気を使うみたいな?

夢:そうそう。「あー、ありがとう」とは思うけど、でも別に何かしてくれなくてもいいのに、って思っちゃう。

g:その方が楽なのかな、ちょっとほっといてくれた方が。

夢:そうですね。すごい都合いいんですけど。

g:いや、でもわかるよ。特に親しくもない人に気を使わせてるな、っていうのもちょっと重たいというか。

夢:そうそう。なんかある程度親しかったら、その辺の塩梅もお互い読み取れたりするじゃないですか。ここは必要だなとかここはいらないなとか、自分が相手にする時もそうですけど、そういうのがわかってる関係性だと楽ですね、「ちょっとメニュー読んで」みたいな、「ここなんて書いてる?」みたいなのをぱっと聞けたりとか、読んでくれたり。

g:その辺は相手との関係性ありきでもあるよね。話戻すけど、スマートフォンができて先回りしていろいろ調べたり、電車の乗り降りだったりメニューだって調べられるのはかなり大きい変化っていうか、便利だよね。キャッシュレスになって小銭も気にせず払えるようになったし。その辺の進歩はやっぱり生活大きく変えたってことですね。

夢:大きいですね。うん、思いますよ。

g:でもまだ「キャッシュレス使えません」とかたまにあるでしょ。

夢:ありますあります。

g:あとはセルフレジだったり、タッチパネルだったり。牛丼屋さんのタッチパネル注文とか。で、事前にスマートフォンでメニューは見られたとしても、操作はしなきゃいけないわけだから、ああいうの操作とか、あれはやっぱり使いづらいの?

夢:ああ、大丈夫ですよあれ。

g:そうなの?

夢:なんか適当にポチポチ押してたら、それの写真が出てくるので。自分のイメージ画像と当てはめて「あったあった」みたいな。

g:値段とかわかんないじゃん。

夢:値段もネットでわかるので。失敗したことはないですね。それで。

g:じゃあ事前調べさえあれば大丈夫だけど、今みたいに急にカフェとか入って「メニュー見なきゃ」みたいになると、

夢:なると、ブレンド頼みます。

g:そっかそっか。で、今は一緒にいたのが僕だったから、ブレンドじゃなかった。

夢:あ、そうです。1人だと「え、なにこいつ」になるんで。顔近づけてメニュー見るとね。だからブレンド頼みます。

g:なるほどね。で今は一緒にいたのが僕で、近づいて見ても平気だし、だからちゃんと選べたってことだ。

夢:はい。甘いの飲みたいなって(笑)。

g:なるほどね、じゃあ一緒にいる人によって多少変わるけど、不便とかじゃなくて。ちょっと焦る場面とかはあるにしても、大きく不便があったりとはしないんだね。

夢:しないですね、はい。

g:そうなんだね。これ以上話聞き出すと長くなるから、今日はこのぐらいに。あとなんかある?今日のことで言っておきたいこと。

夢:なんせ美術館は良かった(笑)。絵の鑑賞は面白かったっていうことですね。小学生みたいやけど(笑)。

g:そっか。これは明らかにそうだったと。はっきり見えてよかった。それはよかった。

夢:はい。あとお団子美味しかった(笑)。あ、おそばも美味しかった(笑)。天ぷらそば普段あんまり食べないから。美味しかった(笑)。


…と、高尾山の帰りに聞いたのはここまで。後日いよいよインタビューの本番を迎えて、本紙掲載の話に至るのですが、学校生活の話や調律を学ぶ上での出来事など、掲載しきれなかったエピソードの中にも様々な気づきがありました。
【11月24日/インタビュー「学校生活、体育と外遊び」へ続きます】

次回は3月下旬更新予定です。

取材協力:国立西洋美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
■開館時間/9:30~17:30 金・土曜日 9:30~20:00
※入館は閉館の30分前まで
■休館日/月曜日(祝休日の場合は開館し翌平日休館)・年末年始・
2023年1月23日(月)〜3月17日(金)
https://www.nmwa.go.jp

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