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【01 】11月17日/国立西洋美術館〜高尾山「はっきり見えてみて」

11月17日、国立西洋美術館と高尾山での撮影の帰り道。少し時間に余裕があったので、「今日の感想は今日のうちに」ということでカフェに寄り、話を伺うことにしました。まずはレティッサディスプレイ2(※1:以下RD2)を使ってはじめて見た、絵画と紅葉の感想についてです。
(※1:網膜に映像を直接投射する「レーザ網膜走査技術」により、近視・乱視等その他の低視力※に視力矯正を必要とせず、鮮明な映像を見ることが可能なアイウェア)


g:美術館に行く機会はあるんだよね?

夢:あります、あります。よく行きます。

g:友達から誘われれば、ってこと?自分から「これ観たい」って場合もある?

夢:行きます行きます。「これ行こうよ」って、私から誰か誘って行ったりとかします。

g:でもさ、単純にやっぱり作品はよく見えないわけじゃない?

夢:その場の雰囲気が好きなんですよね。

g:作品はぼんやりしか見えくても。

夢:ぼんやりでも見た気になってます。

g:それが生駒さんのデフォルトの見え方だから、自分の見え方で見られればいいってことかな?はっきり見えてる、見えてないとかってことではないんだね?

夢:そうですね。輪郭がはっきり、っていうのは期待してなくて、その絵の雰囲気とか、ぼんやりしてても実物を観に行けた、みたいなところに魅力があるんだと思う。

g:映画とかもきっとそうだよね。見える見えないじゃなくて、自分の見方で見て、それに満足してるんだよね?

夢:はい。

g:で、今日ははじめてRD2を美術館で使ってみて、新しい体験はどうでしたか?見たいと言っていた作品の他にも、いろんな絵画をはっきりと見て。

夢:今まで見たかったけど諦めていたものが見えたのは、めっちゃうれしかったです。えー!みたいな。それこそ風景画の中にちっちゃい人たちがいっぱいいて、その人たちの表情とか、何してる人とかは裸眼だと一切わかんないんですよね。人がいるかいないかもあやふやぐらいの感じなんですけど、そこはもう私としては見られるところじゃないと思ってたから、全然諦めてたし。それに対して何も思わなかったんです、今まで。

g:諦めてるとか残念、っていうのでもなく、ただ「そうだ」ってことでしかないのかな。


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夢:そうですね、「見れたらいいな」とはずっと思ってる、思ってますけど、でもそれはもう叶わないことだし、別にそれに対してどう、マイナスな感じはもうなくて。だったんですけど、それがなんか念願叶ったっていうか、「あ、やっぱ全然見え方ちゃうやん。こんな、え、めっちゃおもろ」みたいな。今日いろんな絵を見たら、あのちっちゃい人たちがいろんな事をしてて。今日見た絵だって、私からしたら青い背景に複数人いて、いろんな楽器を持ってるっていう情報だったんですけど、それがこういう絵のタッチでこういう表情してて、この人はこういう楽器を持ってて、みたいなが見えたのが全然違いますね。やっぱりうれしかった。

g:これまでも絵を見ることに興味はあって、実際に自分の見方で楽しんではいたけど、RD2を使って「絵ってこう見えてるんだな、こういう風に自分にも見えるんだな」って体験できたのはよかったのかな。

夢:はい。よかった(笑)。

g:今すごいいい笑顔したね。今日の企画してよかったなって思うよ。

夢:はい、本当によかったです、ありがとうございます(笑)。うれしかったですね。

g:今後もぜひたくさん絵を見てほしいなと思うし。また時間があればぜひ美術館へ。

夢:いろいろありましたよね。絵の他に彫刻もめっちゃ面白かったです。あとやっぱり解説を読めたのが大きいですね。絵のタイトルと背景を知って絵を鑑賞するっていうのは、やっぱり全然違います。今までは自分の世界観だけで見て「うんうん、へぇー」みたいな感じだったので。解説を読めていろいろ知れたのは、すごい面白かったです。

g:確かにそうだよね。

夢:あと今日思ったんですけど、なんか不思議なことに私、もともとモネとか印象派が好きなんですよ。で、私の見え方もぼやっとしてるじゃないですか。そこも共通するし、作曲してた時、音楽も印象派が好きで。私の作曲ってそっち系の響きに近いんですよ。だからなんか私って全部ぼやっとしてんなって(笑)。思ってました(笑)。


【国立西洋美術館にて】


g:なるほどね、面白いね(笑)。で、今日は高尾山まで行ったけど、ようやく行けた高尾山は楽しかった?

夢:楽しかったです(笑)。ちょうど良かった。ちょうどいい自然の感じの、そんなに頑張らなくてもいい、ちょうどいい場所(笑)。

g:でも紅葉とか展望にはRD2は合わない感じで、期待ほどよく見えなかった?見え方が合わなかったかな。

夢:そうですね、やっぱり屋外って微妙なんですよね、正直。前も屋外で使ったことはあったんですけど、今回もどうかな、紅葉だから色彩とかもっと鮮やかにはっきり、私が今見ている世界よりももっとはっきり見えるのかなって思ったら、意外とそんなことなくて。たぶんRD2はピンポイントで見るのに適してるのかなって思うんですよね。だからパーっと広がる風景は全然裸眼で大丈夫、ぼんやりしてて別にいいのかな。別にくっきりはっきり見えなくてもよかったなって思いました。

g:それも経験しないとわかんないからね。

夢:そうですね。

g:いろいろ話聞いたけど、すごい困ってることっていうのはそんなにないんだね。

夢:そうですね。文字が見えないことぐらいですかね、直接的に困るのは。

g:文字、新聞雑誌とか。顔を近づければ見えるけど、

夢:近づけたら見えます。でもやっぱ家の中でしか、それはしたくない。

g:目立っちゃうからね。

夢:そうですね。外だとこうやって見たフリをしてます。電車でもこうやって本読んで、見えたフリしてるんで。

g:でも実際には見えてないでしょ?

夢:「見たい」っていう気持ちはあって広げるんですけど、普通に小説とか。でも「あ、見えないな。でも広げちゃったしな。これすぐ閉じたら『この人すぐ本読むのやめた』ってなるから(笑)。しばらくこのポーズでいよ」って(笑)。

g:(笑)。素朴な疑問なんだけど、デジタル版でいいんじゃないの?

夢:結局こうなりますし(顔を近づける)、本は紙媒体が好きなんですよね。デジタルのものも試したことあるんですけど、やっぱり本は実物で持ちたいんですよね、私。

g:あ、うれしい。「gente」も紙で読んでほしいんだよね、わがままだけど。

夢:いや、でもそうだと思います。

g:なるほどね、まぁそういうのはもう日常的にやってきたから、「強いられてる感」はないんでしょ。我慢してる感はそんなに。

夢:ないです。自分がどうするか次第だと思ってます。別に見たかったら近づけてみればいいわけで、 近づけて見るのも遠くで見るのも決めてるのは自分だから。


この時はスマホの使い道についても話を伺っていました。次回はその話の前半部分を公開しますが、ここでちょっとだけ、話の冒頭部分を公開します。

【11月17日/高尾山 「スマホの使いみち その1」】

 11月17日、国立西洋美術館と高尾山での撮影の帰り道。少し時間に余裕があったのでカフェに寄り、話を伺うことにしました。今回は移動の際にも活用していた、スマートフォンの使い道について。ですがちょいちょい脱線気味ですね(笑)。
 話を伺っていると、生駒さんの気持ちや周囲との接し方が少しづつ垣間見られてきました。そこでつくづく感じたのは「障害者対応」という画一的な知識ではなく、個人をみる大切さです。

g:電車にしても何するにしても、スマホは手放せないってことだよね。

夢:そうですね、スマホ依存症です(笑)。

g:ていうか電車の移動もそうだし、お店を選ぶのもメニューを選ぶのもそうだけど全てにおいて、パっと言われてもそこに何があるかってはっきり見えてないから「その場で選ぶ」っていうのが苦手ってことだよね。

夢:そうですね、苦手です。

g:だからそれを補ってくれるのがスマートフォンで、先に調べる。行き先もメニューも、事前に調べておくのがもう当たり前になってて。

…以上です。
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取材協力:国立西洋美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
■開館時間/9:30~17:30 金・土曜日 9:30~20:00
※入館は閉館の30分前まで
■休館日/月曜日(祝休日の場合は開館し翌平日休館)・年末年始・
2023年1月23日(月)〜3月17日(金)
https://www.nmwa.go.jp

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