見出し画像

タイ人王者は「仮病」だったのか、世界戦ドタキャンに「亀田に騙された」

 4月16日、東京・代々木競技場第二体育館で行なわれた亀田プロモーションによる世界戦興行で、メインに出場予定だったWBCミニマム級王者のパンヤ・プラダブスリ(タイ)が、インフルエンザ感染の体調不良で、来日をキャンセルした。代わって元WBO王者の7位・ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)が来日、試合は暫定王座決定戦となり、4位・重岡優大(ワタナベ)が7回KOで王座を獲得した。 

※王者陣営は診断書とともに入院の様子を公開

 通常、王者が負傷や病気の場合、後に延期することが通例だが、このときは様子が最初からおかしかった。4月3日にパンヤ急病が報じられ、入院写真も伝えられ、主催者には診断書も届いていたのに、プロモーターの亀田興毅は翌日、「パンヤのアホ」と、いきなり仮病説を持ち出した。王者側は2日に診断があって、翌日には退院していたのだが10日間の静養が必要だというもの。それを亀田は入院写真を「用意周到に用意した」とし、一部メディアでも、タイでは湿度が高いからインフルエンザ感染が疑わしいなんて話が伝えられた。まず言ってしまうと、東南アジアでもインフルエンザは流行する。時期が日本と違い、2~3月、7~10月に多い。タイではおおよそ人口の1%ぐらいの感染率で、日本の「10人にひとり」というほどではないのだが、インフルエンザにかかっての欠場自体を疑う根拠として、「タイだからおかしい」は当てはまらない。筆者がオフィスを持つマレーシアでもインフルエンザは毎年、雨期に流行している。

 そもそも病気欠場したチャンピオンを即、罵るのはあまりに不自然。通常は延期になって開催されるから、時期を移動できるかどうかの話になるのに、それがまったく出ずに王者をアホ呼ばわり。だいたい試合契約をしているチャンピオンが仮病を理由に試合から逃げるというのもおかしな話だ。ファンにとって見れば「戦い」でも、選手側にとって試合は稼ぐための仕事であり、指名試合でもないのにわざわざアウェーの日本に来る選択をしたのも自国でやるより稼げるとの判断があってこそ。そこを納得済みだったはずで、いきなり仮病という結論になるのはどう見ても変だ。万一に王者が急に心変わりしても、タイ側のプロモーターやマネージャーがそれを許すわけがない。世間は詳しく興行事情を知らないから、亀田の「仮病だ、逃げた」を鵜呑みにする人々もいるが、本来、そんなバカな話にはもっと納得できる真相があるはず、それを追った。

ここから先は

6,073字 / 7画像

¥ 190

頂いたサポートは、貯蓄して運営費に有効活用させていただきます。 一定額があれば、それを経費にした独自記事の配信もしたいですし、モチベーションも上がります。