社会の「意味」を編み直す、8月後半のゲンロンカフェをまとめました!
みなさんこんにちは!ゲンロンのアルバイトスタッフの青山俊之です。みなさんこちらの動画はご覧になられましたでしょうか?8月開催予定のゲンロンカフェのイベントがこぎみよく紹介されています。
ゲンロン YouTube Officialチャンネルでは、これまで開催されたイベントの見どころをまとめたダイジェスト動画を多数投稿しています。公開期限が切れてしまったイベント動画でも、このチャンネル動画からゲンロンアーカイブでの再公開をリクエストしていただく、なんて展開、期待しています。こちらのチャンネル登録もぜひ!
さて、今回まとめて紹介するゲンロンカフェのイベントは、端的に言って社会時評性の色濃い内容が詰め込まれています。YouTube動画では説明しきれないイベントの概要と魅力、そして追加になったイベントをここからご紹介しましょう!
8月19日 (金) 19:00 - 21:30
東畑開人 × 藤井翔太 × 山本貴光 × 吉川浩満
その心理療法、古代ローマの哲学者なら、こう言うね。──『認知行動療法の哲学』刊行記念
2022年7月に刊行された、『認知行動療法の哲学──ストア派と哲学的治療の系譜』(金剛出版)をテーマにしたトークイベント「その心理療法、古代ローマの哲学者なら、こう言うね。──『認知行動療法の哲学』刊行記念」です。本書は、認知行動療法家のドナルド・ロバートソンの著作の翻訳であり、その監訳を担ったのがイベント登壇者の東畑開人さんと藤井翔太さんです。
『認知行動療法の哲学』の翻訳にあたり、東畑さんは「理性に癒される──解題に変えて」で書籍の内容を次のようにまとめます。
現代の認知行動療法と古代ローマのストア派哲学の「間」を紡ぐことで、「理性による治療」の哲学と実践を立体的に、総合的に描く、そんな野心的な翻訳として本書は編まれたそうです。
そんな本書の翻訳をするきっかけもその翻訳チームの結成も、SNSであったとのこと。必ずしも専門家ではない、「素人」が集まり、議論しながら翻訳を進める。そのプロセス自体も「理性による癒し」であったと東畑さんは語ります。今回のゲンロンカフェでは、東畑さんと藤井さんに加え、文筆家の山本貴光さんと吉川浩満さんをお招きしてのトークイベントを開催します。本イベントではどのように新たな「理性による治療」がおのずと施されるのか。必見です!
東畑さんは6月にもモンゴルにおけるシャーマニズムをテーマにしたイベントで、モンゴル研究者の島村一平さんとゲンロンカフェにご登壇いただきました!アーカイブでも視聴できますので、未見の方はぜひ!
8月22日 (月) 19:00 - 21:30
澤田克己 × 與那覇潤 司会 = 石戸諭
ナショナリズムに犠牲は必要か──記憶と国家、戦後の日韓論
本イベント「ナショナリズムに犠牲は必要か──記憶と国家、戦後の日韓論」は、韓国の西江大学教授で、ポーランド近現代史とトランスナショナル・ヒストリーを専門とする林志弦(イム・ジヒョン)さんの『犠牲者意識ナショナリズム──国境を超える「記憶」の戦争』の刊行記念イベントです。
本書は、日本や韓国をはじめ、ポーランド、ドイツ、イスラエルなどで引き起こされている歴史認識をめぐっての衝突(著者は「記憶の戦争」と呼ぶ)を「犠牲者意識ナショナリズム」の観点から丹念に検証するものです。犠牲者意識ナショナリズムとは、「犠牲となった前世代の経験と地位を次世代が世襲し、それによって現在の自分たちの民族主義に道徳的正当性と政治的アリバイを持たせる記憶政治の理念的形態だ」という(本書「はじめに」より)。
ゲンロンカフェでは本書の刊行記念として、本書の翻訳を手がけた毎日新聞論説委員の澤田克己さん、評論家の與那覇潤さん、司会にノンフィクションライターの石戸諭さんを迎えてのトークイベントを開催します。グローバル化によってお互いの記憶がぶつかり合うことで、自らこそが犠牲者であるという記憶を強め、世界各地で攻撃的なナショナリズムが生まれている。自らの犠牲を絶対化することで他者の痛みを蔑ろにするのではなく、異なる記憶が絡み合い、連帯していくためにはどうしたらいいのか?ゲンロンカフェならでは充実の議論をご期待ください!
8月27日 (土) 15:00 - 17:30
『忘却にあらがう』刊行記念(仮)
三浦瑠麗×石戸諭×東浩紀
※ 本イベントは、日頃ゲンロンやシラスを応援いただいている会員の皆さまに感謝を込めて、会場でのご観覧はゲンロン友の会会員限定、配信でのご視聴はシラス・ニコニコ生放送の「ゲンロン完全中継チャンネル」月額会員限定で開催いたします。あらかじめご了承ください。
8月5日に東浩紀の新著『忘却にあらがう──平成から令和へ』(朝日新聞出版)が発売されました。本書は、2017年1月から2022年4月まで『AERA』に掲載された巻頭コラムを中心にまとめた時評集です。元号は平成から令和へ、世界ではポピュリズムが席巻、さらに新型コロナウィルス感染症のパンデミックとロシアのウクライナ侵攻、そんな激動と対峙した東浩紀の軌跡であり、そして姿勢でもあるのが「忘却にあらがう」です。
『忘却にあらがう』の最後には、『文藝』2019年夏季号に寄稿したエッセイ「平成という病」も収録されています。平成という時代の最後に振り返られているのは、しきりに唱えられてきた「改革」とその「お祭り感」、そしてそれがもたらした、何とも言い表せない「疲弊感」でした。「17歳から47歳という人生の最も重要な時期を平成に捧げた世代」と自認する東が、新しい元号がはじまるにあたって、どんなことを語っていたのか。
本書の刊行記念として、国際政治学者の三浦瑠麗さん、ノンフィクションライターの石戸諭さんをお招きしてのトークイベントを開催します。会場はすでに満員となっておりますので、ゲンロン完全中継チャンネル会員の方は、ぜひ配信でお楽しみください。
8月29日 (月) 18:00 - 20:30
ウクライナとロシア、戦争にみる宗教と愛国(仮)
高橋沙奈美×上田洋子
※ 本イベントは、配信のみのイベントです。高橋さんは遠方にお住いのため、オンラインでの出演となります。
今年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始してから、まもなく半年が経とうとしています。この両国の対立をめぐる複雑な背景の一つに、ロシアとウクライナにおける宗教の問題があります。
「ウクライナとロシア、戦争にみる宗教と愛国」という仮題をつけた本イベントでは、ロシアとウクライナ両方の正教を専門とする、歴史学者の高橋沙奈美さんとつなぎ、戦争前から現在にいたるまでの正教の問題について解説いただきながら、戦争や愛国心と宗教の関係について考えていきます。
高橋さんには、2020年にもこの2つの正教会の対立、さらにコロナ禍の状況について論考をお寄せいただきました。こちらの論考をあらためて読み返すと、さまざまなことがいまにつながっていくような感覚があります。
10月刊行予定の『ゲンロン13』の小特集「ロシア現代思想Ⅳ」には、高橋氏が翻訳を手がける、ロシアの祝祭と戦争をめぐる論考が掲載予定です。本特集の導入のひとつとしても、ぜひご覧ください。
「ゲンロンアーカイブス」がはじまりました!
8月からシラスのゲンロン完全中継チャンネルで始動した「ゲンロンアーカイブス」。これまでゲンロンカフェで放送したシラス開始(2020年10月)以前のイベント動画を、月2本程度のペースで配信していきます。
新しくシラスのコメントシステムと併せて配信しますので、ゲンロンスタッフもコメント欄へ参加し、トークを追う上で参考となる補足情報はもちろん、当時の貴重な裏話などもお届けしていきます。
先日、第一回目に「Hidetaka Ishida × Yuk Hui × Hiroki Azuma "Is a Post-European Philosophy of/in Technology Possible?"【2019年8月20日収録】」が放送されました。
本イベントのトークは英語で行われており、日本語字幕はありませんが、ゲンロンから刊行されるユク・ホイ著『中国における技術への問い』の翻訳者で、ゲンロン編集部のスタッフでもある伊勢康平がコメント欄で参加し、トークの解説や補足をしております。英語に自信がないけども、『中国における技術への問い』や石田さん、東さんらによる議論が気になる方は、ぜひコメント欄を追いかけながらお楽しみください。
次回のゲンロンアーカイブスは、2015年06月10日に実施された「宇野重規×東浩紀:日本的リベラリズムの夢──講談社文庫『一般意志2.0』刊行に向けて」を8月末に放映する予定です。『一般意志2.0』は、この秋刊行予定の『ゲンロン13』に掲載される東の最新論考におおきくかかわるの主題となっています。ぜひ今一度、『一般意志 2.0』とご一緒に議論を振り返る機会としてみてください。
「ゲンロンアーカイブス」に関して、ゲンロンの楽屋からでまとめた記事もあります。詳しくはこちらもご参照ください。
ゲンロンアーカイブスをはじめ、これまでとこれからの文脈と意味を紡ぐ言論をお届けしていきます。それはもちろん、知を嗜む観客の応援あってこそです。みなさまのコメントや感想をお待ちしております。今後もさらなる情報をどうぞお楽しみに!
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