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このページではヒトゲノムに含まれる2万種類を超えるたんぱく質を紹介します。学生時代にバイオインフォマティクスと生物分子科学を専攻しました。生命科学からみた、栄養、食事、健康の話題も織り交ぜます。筆者は、ヒトゲノムのほか、神経と植物にも興味があります。

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    このマガジンでは,ヒトゲノムに書かれている2万種類のたんぱく質に関する情報や,食事・栄養・健康に関する話題や考え方をお届けします.著者は学生のときバイオインフォマティクスと生物分子科学を専攻したウェブプログラマです.神経と植物,そして宇宙が好きです.

最近の記事

TPMT遺伝子について解説。

TPMT遺伝子とは、チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(thiopurine S-methyltransferase)という酵素をコードする遺伝子です。この酵素は、チオプリン製剤と呼ばれる免疫調節薬の代謝に関与し、チオプリン製剤の効果や副作用に影響を与えます。 チオプリン製剤は、白血病や炎症性腸疾患などの治療に用いられますが、個人差が大きく、一部の患者では重篤な骨髄抑制や肝障害などの副作用を引き起こすことがあります。 TPMT遺伝子には、酵素活性を低下させる変異(バリアン

    • CFTR遺伝子について解説。

      CFTR遺伝子とは、塩化物イオンチャネルであるCFTRタンパク質をコードする遺伝子です。CFTR遺伝子に変異があると、塩化物イオンの輸送が障害され、分泌液の粘度が高くなり、嚢胞性線維症という遺伝性の難病を引き起こします。 嚢胞性線維症は、呼吸器や消化器などの機能を低下させ、感染症や栄養不良などの合併症を起こします。嚢胞性線維症の治療法は、対症療法や移植などがありますが、根本的な治療法はまだ確立されていません。 CFTR遺伝子に関する最新の研究成果の一つは、CFTR遺伝子の変

      • HLA遺伝子について解説。

        HLA遺伝子は、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen)と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子の総称です。HLA遺伝子は、免疫系の機能に重要な役割を果たし、自己と非自己を識別することで、感染症やがんなどの外来性の抗原に対する防御機構を担います。 HLA遺伝子は、個人差が大きく、多様性が高いことが特徴です。この多様性は、移植や輸血などの際に拒絶反応を引き起こす原因となりますが、一方で、自己免疫疾患や感染症の発症リスクや重症度にも影響を与えることが知られて

        • BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子について解説。

          BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子とは、乳がんや卵巣がんなどの発症リスクを高める遺伝子です。これらの遺伝子は、正常に機能すると、DNAの損傷を修復する役割を果たしますが、病的な変異(バリアント)を持つと、DNAの修復ができなくなり、がんの発生や進行につながります。 BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、遺伝性乳がんや卵巣がんの原因遺伝子として知られており、これらの遺伝子にバリアントを持つ人は、乳がんや卵巣がんを若年で発症する可能性が高くなります。また、これらの遺伝子にバリアン

        TPMT遺伝子について解説。

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          4本

        記事

          CRISPR遺伝子について解説。

          CRISPR遺伝子は、細菌や古細菌のゲノムに存在する、反復配列と呼ばれる短いDNA配列の集まりです。CRISPR遺伝子は、ウイルスやプラスミドなどの外来DNAから切り出した断片を挿入することで、免疫の記憶を形成します。 CRISPR遺伝子は、Casと呼ばれるタンパク質と組み合わさって、CRISPR-Casシステムを構成します。CRISPR-Casシステムは、外来DNAを認識して切断することで、細菌や古細菌の防御機構として働きます。 CRISPR-Casシステムは、ゲノム編集

          CRISPR遺伝子について解説。

          FOXP2遺伝子について解説。

          FOXP2遺伝子は、言語や音声の発達に関連する転写因子をコードする遺伝子で、がん遺伝子の一つでもあります。FOXP2遺伝子は、DNAに結合して標的遺伝子の発現を調節します。FOXP2遺伝子は、ヒトだけでなく、他の哺乳類や鳥類などにも存在しますが、ヒトとチンパンジーではアミノ酸の配列に2個の違いがあります。この違いが、ヒトの言語能力の進化に影響を与えた可能性があります。 FOXP2遺伝子に関する最新の研究成果の一つは、ヒトとチンパンジーのFOXP2遺伝子の下流の転写標的の活性

          FOXP2遺伝子について解説。

          MYC遺伝子について解説。

          MYC遺伝子とは、細胞の増殖や代謝などに関与する転写因子をコードする遺伝子で、がんの発生や進行に重要な役割を果たすがん遺伝子の一つです。 MYC遺伝子は、塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)とロイシンジッパー(LZ)という構造モチーフを持ち、DNAに結合して標的遺伝子の発現を調節します。 MYC遺伝子は、分裂促進シグナルに応答して活性化され、細胞増殖や代謝を促進する遺伝子の発現を上昇させます。一方、MYC遺伝子は、アポトーシスや分化などの細胞の運命を決める遺伝子の発現

          MYC遺伝子について解説。

          SRY遺伝子について解説。

          SRY遺伝子は、哺乳類の性決定遺伝子の一つで、Y染色体上に存在し、オスの発生を引き起こす遺伝子です。SRY遺伝子は、SRYタンパク質をコードしており、このタンパク質が胎児期の生殖腺で発現することで、精巣分化が始まります。SRY遺伝子は、ほ乳類の進化の過程で、X染色体上のSOX3遺伝子から派生したと考えられています。 SRY遺伝子は、1990年に発見されてから、ほ乳類の性決定の仕組みの解明に大きく貢献しました。しかし、SRY遺伝子は、ほ乳類の中でも限られたグループにしか存在せ

          SRY遺伝子について解説。

          p53遺伝子について解説。

          p53遺伝子は、がん抑制遺伝子と呼ばれる遺伝子の一つで、細胞のDNAが損傷したときに修復やアポトーシス(細胞自殺)を誘導することで、がんの発生を防ぐ役割を果たしています。 p53遺伝子の産物であるp53タンパク質は、DNA損傷に応答して活性化され、転写因子として様々な遺伝子の発現を制御します。p53タンパク質は、ゲノムDNA上の特定の配列と結合することで、がん抑制遺伝子群のスイッチをオンにすることで、細胞周期の停止やDNA修復、アポトーシスの誘導などといった機能を発揮します。

          p53遺伝子について解説。

          APOE遺伝子について解説。

          APOE遺伝子とは、アポリポタンパク質E(APOE)という脂質代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子です。APOEは主に肝臓や脳のアストロサイトという神経細胞を支える細胞で作られ、血液中や脳内で脂質を運搬する役割を果たします。APOEは脳の健康に重要なタンパク質であり、脳の発達や修復、炎症、老化などに関与しています。 APOE遺伝子には、アミノ酸の一部が異なる3つの遺伝子型(APOE2、APOE3、APOE4)が存在し、人口の約8%がAPOE2、約78%がAPOE3、約

          APOE遺伝子について解説。

          定衣・定食・定住

          決まった服を着る. いつも同じ服を着る. それを「定衣」という. 禅寺のお坊さんや,制服のある職場や学校,シリコンバレーのエンジニアなどが実践している. 毎朝服を選ばなくてよいようにしている. 選択する行為は負担で, 1日に選択できる回数には上限があるそうだから. 同じような概念に「定食」がある. 毎日決まったものを食べる. いつも同じものを食べる. 禅寺の精進料理,経営者の朝食ルーティン,シリコンバレーのエンジニアもまた実践している. これも毎日の選択回数を減らすのが目的

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          細胞食のすすめ

          人間は細胞でできているので, 細胞を食べていれば健康を保てる. という話し.

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          細胞食のすすめ

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          栄養摂取で大切にしている3つのこと

          食事は人生の喜びのひとつですね.今は簡単においしいものや新鮮な食材,栄養補助食品を求められるので,何をどう食べたらよいか,コツを知っているかどうかで健康が左右されます. そのわりに,学校教育で食事や栄養について学ぶ時間はかなり少ないです.そこで,生命科学や栄養学などの文献を当たり導きだした「健康な食生活を送る3つの原則」を紹介したいと思います.これを目安に考えて食べるものを決めていれば,健康な生活から大きく外れません.

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          ゲノム科学を学んでよかったことは?

          私は情報系の学部を卒業したあと,大学院で生命科学を学びました.学部のときにバイオに関心を持ち,分子生物学やバイオインフォマティクスの教科書で独学しました.先端分野なので,社会であまり知られていない学問ですが,誰にとっても面白いはずだと思います. それだけ時間を費やして学ぼうと考えたきっかけ,それは

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