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HLA遺伝子について解説。

HLA遺伝子は、ヒト白血球抗原human leukocyte antigen)と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子の総称です。HLA遺伝子は、免疫系の機能に重要な役割を果たし、自己と非自己を識別することで、感染症やがんなどの外来性の抗原に対する防御機構を担います。
HLA遺伝子は、個人差が大きく、多様性が高いことが特徴です。この多様性は、移植や輸血などの際に拒絶反応を引き起こす原因となりますが、一方で、自己免疫疾患や感染症の発症リスクや重症度にも影響を与えることが知られています。
HLA遺伝子は、自己免疫疾患の最大のリスク因子として注目されており、その関係を解明することは、病態の理解や診断・治療法の開発に貢献すると期待されています。

HLA遺伝子に関する最新の研究成果の一つは、深層学習を用いて高精度にHLA遺伝子配列の予測が可能になったというものです。
HLA遺伝子配列の解読には、高価な実験費用がかかるため、コンピューター上で推測するHLA imputation法が利用されています。しかし、従来のHLA imputation法では、低頻度のHLA遺伝子配列の予測精度が低く、人種間の統合解析などに問題がありました。
そこで、大阪大学の石垣和慶チームリーダーらの研究グループは、深層学習を応用した新たなHLA imputation法、DEEPHLAを開発しました。DEEPHLAは、畳み込みニューラルネットワークというモデルを用いて、HLA遺伝子周辺のSNP情報とHLA遺伝子配列の複雑な相関関係を学習し、任意のHLA遺伝子配列を高精度で予測することができます。特に、頻度が1%以下の稀なHLA遺伝子配列の予測精度が約80%まで上昇しました。この研究成果は、HLA遺伝子のゲノム情報を用いた個別化医療の進展につながると考えられます。

HLA遺伝子に関する最新の研究成果のもう一つは、自己免疫疾患の最大のリスク因子であるHLA遺伝子の多型が、自己反応性T細胞を増やし、疾患発症に関与することを明らかにしたというものです。
T細胞は、免疫細胞の一種で、HLAに提示された抗原をT細胞受容体によって認識します。T細胞受容体の配列は、HLA遺伝子の多型に影響されることが知られていますが、そのメカニズムや病態との関係は不明でした。
そこで、理化学研究所の石垣和慶チームリーダーらの研究グループは、健常人約800人から収集したT細胞受容体配列のビッグデータを解析し、HLA遺伝子の多型とT細胞受容体の配列の関連を詳しく評価しました。
その結果、自己免疫疾患の発症リスクと強く関連するHLA-DRB1遺伝子の13番目のアミノ酸多型が、T細胞受容体の中央部分のアミノ酸の陰性荷電を促進することを発見しました。この陰性荷電は、自己抗原に対する免疫反応を強めることが知られており、自己免疫疾患の発症に寄与する可能性があります。
この研究成果は、HLA遺伝子の多型が免疫システムにどのように影響するかを示す重要な知見です。

以上のように、HLA遺伝子に関する最新の研究成果は、HLA遺伝子配列の予測技術の向上や、HLA遺伝子の多型と自己免疫疾患の発症メカニズムの解明に貢献しています。今後の研究によって、HLA遺伝子の多様性や機能をさらに理解し、自己免疫疾患の診断や治療に役立てることが期待されます。

深層学習を用いて高精度にHLA遺伝子配列の予測が可能に―ヒトゲノム情報に対する深層学習の応用研究のマイルストーンに― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (amed.go.jp)

自己免疫疾患の最大のリスク因子の機能を解明 | 理化学研究所 (riken.jp)

間質性膀胱炎(ハンナ型)、HLA遺伝子多型が発症に関連-東大病院ほか - QLifePro 医療ニュース

新型コロナ、無症状者に多い遺伝的特徴を発見 米大など - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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