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【本の紹介】笙野頼子「二百回忌」『笙野頼子三冠小説集』(河出文庫)

□難度【★★★★☆】
笙野の作品としては"読みやすい"のかもしれないが、それでも、笙野の作品であることにはかわらない。ぶっとんだ内容であり、作品世界に入っていけないと、難解…というか意味不明にしか感じられないだろう。語彙や言い回しが難しい、というわけではありません。

□内容、感想など
それなりの長さを持つ作品だが、できれば短期間で一気に読み通したい。そのほうが、最後の場面の爽快感をより堪能できるだろう。期間をおいて断続的に読むと、再開したときに作品世界へ没入するのにやや苦労すると思う。
土俗的、ナンセンス、幻想、日常の解体、シュールレアリスム、異化、デペイズマン、実存、存在することの不安、奇書、ユーモア、精神の運動、フロイト、おぞましいものの回帰、虚構の美……「二百回忌」の良さを一言で表すことなどできないが、こうした言葉が続々と連想される小説である。同書に収めされた「タイムスリップ・コンビナート」も「なにもしてない」も傑作だけれど、僕は「二百回忌」が最も好きだ。

□こんな人にオススメ
・ステレオタイプなロマンチシズムに飽き飽きしている人。
・脳みそにずどん!と衝撃を味わいたい人。
・活字を追うということそれ自体に快楽を覚える人。
・小説を読むことでエンドルフィンを分泌したい人。
・天才に打ちのめされたい人。


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