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親戚の老人たちが、ことあるごとに「アタシももう長くないから」「いつでも死んでいいんだ」な…
蛍光灯のなかで羽虫の死んでいるのが不思議でならなかった。そんな隙間もなかろうに。子どもの…
干からびたミミズに蝿が止まっている。ここには、宇宙のすべての意味が、未分化のまま凝集して…
下り坂の途中、猫が轢かれて死んでいた。誰かがダンボールを被せていたが、隠しきれていなかっ…
幼かった頃、時の流れには音があった。それは、例えば午後の早い時間に聞くことができた。カー…
父方の祖父が亡くなったのは、私が小学校三年生のときだった。祖母と父が泣くのを横目で見なが…
つれあいのお腹に子が宿ったとき、医師は、その心臓の動きを機器で聞かせてくれ、「この心臓は、もう一生、動きを止めることがないんです」と教えてくれた。当たり前なことだ。けれどもその事実は、予想した以上に自己主張の激しい鼓動とともに、世紀の大発見かのような衝撃で、私の脳と世界とを揺らしたのだった。
T君は大学の同級生で、でも一年生のときに亡くなった。ボブ・ディランのベスト盤を貸したまま…
二十年ぶり、あるいは三十年ぶりに開いた本に、かつての自分の書き込みを見つけることがある。…
亡き祖母は、生前、窓のそばの陽だまりを好んだ。そこへちょこんと座り(祖母は本当に小さかっ…
「この青い空はどこまでもつながっていて」と言うけれど、本当にそうなのだけれど、でも、実際…
私は人間が大嫌いで、しかも、大好きで。そうしてそんな自分のことを、このうえなく、どうしよ…
黄色のカバーをかけたランドセルの子が、道にうずくまって何かを凝視している。蜂の死骸だ。私…
幼い頃、母が箱入りの輪ゴムを買ってきた。あんなにたくさんの輪ゴムを見たことがなかった私は、「すごーい。これぜんぶ使うの、どれくらいかかるんだろう?」と驚いた。母は、「たぶん一生かかるよ」と笑った。そのとき、私はふと、「人の一生って、一箱の輪ゴムを使い切る程度の時間でしかないんだな」と、切なく感じたのだった。箱の中に詰まった輪ゴムが、なんだか自分の命のように思われた。