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よしなしごと

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そこはかとなく書いてみます。
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記事一覧

後悔ダケガ人生ダ

小学校一年生の頃、母が、目の病に罹った。日中はまぶしくて目を開けられない状態だったので、…

小池陽慈
3日前
7

「そうだね」でも「そんなことないよ」でもなく

親戚の老人たちが、ことあるごとに「アタシももう長くないから」「いつでも死んでいいんだ」な…

小池陽慈
12日前
17

羽虫

蛍光灯のなかで羽虫の死んでいるのが不思議でならなかった。そんな隙間もなかろうに。子どもの…

小池陽慈
13日前
3

意味

干からびたミミズに蝿が止まっている。ここには、宇宙のすべての意味が、未分化のまま凝集して…

小池陽慈
2週間前
4

存在の色と形

下り坂の途中、猫が轢かれて死んでいた。誰かがダンボールを被せていたが、隠しきれていなかっ…

小池陽慈
3週間前
6

砂つぶの時間

幼かった頃、時の流れには音があった。それは、例えば午後の早い時間に聞くことができた。カー…

小池陽慈
3週間前
8

祖父の死(私にとっての)

父方の祖父が亡くなったのは、私が小学校三年生のときだった。祖母と父が泣くのを横目で見ながら、「これはただごとではない」と思った。が、やはり、死なるものの現実は遠かった。葬儀の司会が、「人が死んでも細胞はまだ生きていて、それも少しずつ死んでゆく」というようなことを言っていて、その言葉だけは妙に印象に残ったのだった。しばらくたったある日、祖母が、「爺さん愛用の孫の手が出てきた」と見せてくれた。孫の手の「指」と「指」の隙間に、祖父の垢が詰まっていた。なぜだろう、それを見た私は、人の

ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ…

つれあいのお腹に子が宿ったとき、医師は、その心臓の動きを機器で聞かせてくれ、「この心臓は…

小池陽慈
3週間前
12

嫉妬

T君は大学の同級生で、でも一年生のときに亡くなった。ボブ・ディランのベスト盤を貸したまま…

小池陽慈
3週間前
12

「おまえはいまどこにいる?」

二十年ぶり、あるいは三十年ぶりに開いた本に、かつての自分の書き込みを見つけることがある。…

小池陽慈
4週間前
10

祖母の陽だまり

亡き祖母は、生前、窓のそばの陽だまりを好んだ。そこへちょこんと座り(祖母は本当に小さかっ…

小池陽慈
4週間前
11

青空を割くもの

「この青い空はどこまでもつながっていて」と言うけれど、本当にそうなのだけれど、でも、実際…

小池陽慈
4週間前
10

私は人間が

私は人間が大嫌いで、しかも、大好きで。そうしてそんな自分のことを、このうえなく、どうしよ…

小池陽慈
1か月前
8

完璧な世界

黄色のカバーをかけたランドセルの子が、道にうずくまって何かを凝視している。蜂の死骸だ。私の視界が切り取ったこの光景は完璧な世界で、何を足すことも引くこともできない。