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祖父の死(私にとっての)

父方の祖父が亡くなったのは、私が小学校三年生のときだった。祖母と父が泣くのを横目で見ながら、「これはただごとではない」と思った。が、やはり、死なるものの現実は遠かった。葬儀の司会が、「人が死んでも細胞はまだ生きていて、それも少しずつ死んでゆく」というようなことを言っていて、その言葉だけは妙に印象に残ったのだった。しばらくたったある日、祖母が、「爺さん愛用の孫の手が出てきた」と見せてくれた。孫の手の「指」と「指」の隙間に、祖父の垢が詰まっていた。なぜだろう、それを見た私は、人の死というものを、ようやく、ずしんと感じたのである。

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