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存在の色と形

下り坂の途中、猫が轢かれて死んでいた。誰かがダンボールを被せていたが、隠しきれていなかった。次の日、猫の死骸はすでになかった。ただ、アスファルトにはくっきりと、血痕や体液の跡が残っていた。今にも体積を得て、むくりと起き上がりそうな形の染みであった。奇妙な話、私には、これこそが存在なるものの色であり、存在なるものの形であると思われた。見つめる私の影は、のっぺり平たく延びるばかりだった。

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