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仕事とおやつの合間に本を読んだり駄文をつらねたり音楽を聴いたり映画を見たり妄想したりしています。 インスタ始めました。 https://www.instagram.com/avantlongtemps/

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    日々なんとなく頭に浮かんだ駄文の切れ端とか読み散らした本の断片など

記事一覧

百光年

高い空に 薄い月が残る 秋の日の朝に 一人歩く まだ眠っている 家々の 間の路地で 昨日忘れた 洗濯物が 軒先で冷え切ったまま 光を待ってる もう終わったのやら ま…

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1年前
12

記憶

風のない日に 港を走る 人気のない荒れた舗道に 大型トラックが 寝そべってる 誰もいないような顔で どこかの工場で動いてる クレーンが 軋みを立てる あれはもう十年…

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2年前
23

over the fence

誰もいない 休日の波止場の 錆びた鉄板の上に ひとり ひなたぼっこしてる 猫の横を 我が物顔で 自転車をとばす どこへ行くあてもなく 誰と会うでもなく 冷えた秋の…

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2年前
32

秋の朝に

冷えた朝 久しぶりに晴れた休日の秋空 冷蔵庫のように冷えた草地を ズボンの裾を ぬらして歩く ようよう照らし始めた太陽が まだ夏みたいな顔をして目を刺すけど 冬はも…

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2年前
36

足音

まだ昨日の波にぬれた浜の 波打ち際を 砂利を踏んで歩く だれかの捨てた バーベキューの炭だの花火の燃えかすだの 昨日の宴の残り火が くすぶってる まだ暗い時間から…

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2年前
32

正しい町で僕は

早朝からハンドルを握ってる 昨日の風が まだ止んでもいない車道を 緑のリュック 背負った自転車が 目の前の赤信号を逆走する わずかにアクセルが遅れた瞬間 後ろから…

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2年前
29

夏日

突然泣いたり笑ったりする まるで不安定な君とぼくのような 気まぐれな空のやつは どうやら今日は 晴れることに したらしい そんで 何だかまだ嘘っぽい 君の笑顔と同…

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2年前
30

sanctuary

まるで夏のような光の午後 もう梅雨なんて終わりとばかりに 汗ばむ太陽の月曜に 僕は休んでる その代わり日曜も休日もないけど 学校が終わったらいつも本を抱えて 図書…

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2年前
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山桜

すっかり汗ばむような それでも 木陰に入ると うっすら冷たい 山里の春は 去年と同じ顔して それでも今年は今年 去年咲いた花は枯れて落ちて 秋をこえ冬をこえて 芽…

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3年前
36

風のある午後に

よく晴れた 風のある昼下がり 自転車をこいで となりの町まで ちょっとばかり 海のやつを見に 埋立地の工場の裏手の 堤防の上 誰もいない海は コンクリートに切り取…

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3年前
40

自由へ

閉じた壁の中 息をひそめて暮す 別に殺されるわけじゃない 我が物顔でお仕着せの制服を着た 流刑地ばりの兵隊が闊歩する はるか昔の亡霊が蘇るごとく 誰かの気分が法律…

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3年前
29

さぼる

何だか寒くて起きられない 冬の朝 布団の中から手を伸ばし どうにかリモコンをさぐりあて エアコンのやつを先に起こす めんどくさそうに返事して 律儀にカタカタ動き出…

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3年前
27

冬ごもり

よく冷えた朝 斜めにずれた毛布から はみ出した足が あんまり寒くて ベッドの奥に 縮こまってる 何だか排水溝の ごみみたい いつまで縮こまって 固まって こわばっ…

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3年前
40

キッチン

積みあがった荷物を片付ける ひとつ またひとつ 箱を開けては 増えるばかりの がらくたの山 ラップに洗剤 キッチンタオル あなたが一生かかって使いきれなかった 残…

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3年前
31

Lord knows

晴れた秋の日 あなたを運ぶ ひどく晴れた空は やけにまぶしくて まるで夏が帰ってきたような陽気の下 あなたが箱の中で ことこと揺れる 見上げるほどに高かった背中も…

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3年前
30

Grace of God

垂れこめた秋の朝 雲隠れしてるのは 何も太陽ばかりじゃないと 君は憂鬱そうな顔で ひとり キッチンで湯をわかしてる 僕はといえば 読めもしない本を開き 白紙の部分…

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3年前
29
百光年

百光年

高い空に 薄い月が残る
秋の日の朝に

一人歩く まだ眠っている
家々の 間の路地で

昨日忘れた 洗濯物が
軒先で冷え切ったまま 光を待ってる

もう終わったのやら
まだ始まってないのやら

あの物語この物語の 書き手はどこへ
果たして続きはあるのか 否か

誰が読む 百光年の彼方の物語
百年後の 君に届くといいな

  〇  〇  〇  〇  〇

記憶

記憶

風のない日に 港を走る
人気のない荒れた舗道に
大型トラックが 寝そべってる

誰もいないような顔で
どこかの工場で動いてる
クレーンが 軋みを立てる

あれはもう十年 いや二十年前の
やっぱり今年と同じくらい
寒い 寒い 冬の終わり

ほんの少し 暖かくなった頃
家出する猫みたいに
君は 出ていった

いくつもの春が重なって
記憶と時間が曖昧に溶ける
砂混じりの風の中

消えては浮かぶ 遠い歌

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over the fence

over the fence

誰もいない 休日の波止場の
錆びた鉄板の上に ひとり

ひなたぼっこしてる 猫の横を
我が物顔で 自転車をとばす

どこへ行くあてもなく
誰と会うでもなく

冷えた秋の空の下で
ひとり 汗をかいている

立ち入り禁止の有刺鉄線の奥で
資材置き場の水たまりが光ってる

去年は昨日 昨日は去年
考える間もなく過ぎる時間に

押し流されながら それでも
どうにか息をしてる

有刺鉄線を素手でつかんで 泣

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秋の朝に

秋の朝に

冷えた朝 久しぶりに晴れた休日の秋空
冷蔵庫のように冷えた草地を
ズボンの裾を ぬらして歩く

ようよう照らし始めた太陽が
まだ夏みたいな顔をして目を刺すけど
冬はもうそこ 冷たい風の刃に

切り刻まれた落ち葉が かさかさ鳴る
わざと枯草をけちらして 投げて遊んだ
だれかの背中 遠くで光る水面に

逃げた青空 そこにもういない
だれの声 ひびく空に思う
よぎる風の奥は もうすぐ冬の色

 〇  〇

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足音

足音

まだ昨日の波にぬれた浜の 波打ち際を
砂利を踏んで歩く だれかの捨てた

バーベキューの炭だの花火の燃えかすだの
昨日の宴の残り火が くすぶってる

まだ暗い時間から釣りをしてる人たちが
目をこすりながら水面を見つめている

僕は立ち入り禁止の柵をこえて
防波堤を下り 誰もいない砂浜を歩く

寄せては返す波の音に いなくなった人の声
最近見ないあいつは入院してたらしい

ひとり またひとり 浜辺に

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正しい町で僕は

正しい町で僕は

早朝からハンドルを握ってる 昨日の風が
まだ止んでもいない車道を 緑のリュック

背負った自転車が 目の前の赤信号を逆走する
わずかにアクセルが遅れた瞬間 後ろから

けたたましいクラクションを鳴らして
暴走気味のBMWが 僕を追い越していく

昔雑誌に載ってた記事までほじくり出して
重箱の隅まで清潔にするのが 今時の流行らしい

どこまでも正しい町で 汚れ一つなく
戻ることも やり直すことも許さ

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夏日

夏日

突然泣いたり笑ったりする
まるで不安定な君とぼくのような

気まぐれな空のやつは
どうやら今日は 晴れることに

したらしい そんで
何だかまだ嘘っぽい

君の笑顔と同じくらいに
信用できない青空に

誘われて 防波堤までサイクリング
まるで真夏の顔した太陽が

むせかえるような熱と光の中
多分君は クーラーの効いた部屋で

今頃 アイスでも食べてるかな
防波堤なんかない都会の町で

僕はまだ 海

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sanctuary

sanctuary

まるで夏のような光の午後
もう梅雨なんて終わりとばかりに

汗ばむ太陽の月曜に 僕は休んでる
その代わり日曜も休日もないけど

学校が終わったらいつも本を抱えて
図書館にこもっていた君は 今はどこ

みんな知らない町で知らない人と
うまくやってるのかな なんて

いまだにどこにも行けないまま
何者にもなれてない僕は思う

何回目の夏が来ても同じ場所で僕は
同じ壁の前に 同じ絶望と同じ希望を

繰り

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山桜

山桜

すっかり汗ばむような それでも
木陰に入ると うっすら冷たい

山里の春は 去年と同じ顔して
それでも今年は今年

去年咲いた花は枯れて落ちて
秋をこえ冬をこえて 芽吹いた

新しいつぼみが まだちらほらと
遠慮がちに でも誇らしげに色づいてる

咲いた花は また枯れる そして
すぐに新しい季節も 昨日に変わる

だから何 ときみなら言うのかな
昨日も明日も今日の続き

くるくる回って みんな変わ

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風のある午後に

風のある午後に

よく晴れた 風のある昼下がり
自転車をこいで となりの町まで

ちょっとばかり 海のやつを見に
埋立地の工場の裏手の 堤防の上

誰もいない海は コンクリートに切り取られ
空まで真四角な顔で にこりともしない

いつだってそうだった
いつもそう

学校をやめたときも 仕事をやめたときも
ひとりぼっちに戻ったときも

同じように定規で引いたような線で
くすりとも言いやしない

逃げるように猫が走る 

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自由へ

自由へ

閉じた壁の中 息をひそめて暮す
別に殺されるわけじゃない

我が物顔でお仕着せの制服を着た
流刑地ばりの兵隊が闊歩する

はるか昔の亡霊が蘇るごとく
誰かの気分が法律にすり替わる

誰も声を上げないのはなぜかって
そんな子どもみたいなことを

言ってた君は 次の日に消えた
人を殺すのは武器じゃない

沈黙と恐怖に包まれた壁の中で
黙っていれば生きることはできる

それを 生きると
言うならだけど

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さぼる

さぼる

何だか寒くて起きられない 冬の朝
布団の中から手を伸ばし

どうにかリモコンをさぐりあて
エアコンのやつを先に起こす

めんどくさそうに返事して
律儀にカタカタ動き出す

機械は偉大 人は怠惰
いつまでも動けないぼくは

ラジオをつけてまたひと眠り
こんな寒い日には いつまでも

このままぬくぬくしていられたら
どんなにすてきだろう

そういう訳にもいかなくて
何度目かの夢からさめて 無理やり起き

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冬ごもり

冬ごもり

よく冷えた朝 斜めにずれた毛布から
はみ出した足が あんまり寒くて

ベッドの奥に 縮こまってる
何だか排水溝の ごみみたい

いつまで縮こまって 固まって
こわばって 動けなくて

がたがたしてるうち 朝日のやつが
先に顔を出してる

どうしてエアコンのリモコンを
枕元に置かなかったの

君だったら 怒るかな
どうでもいい夢想にようやく

目を覚ましながらスリッパをはき
やっとこさストーブをつけ

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キッチン

キッチン

積みあがった荷物を片付ける
ひとつ またひとつ 箱を開けては

増えるばかりの がらくたの山
ラップに洗剤 キッチンタオル

あなたが一生かかって使いきれなかった
残り物 捨てては拾い 拾っては捨て

ああもう きりがないやと
お茶をわかして 一休み

いい天気の秋の日 やり残した仕事は
途中で投げて 一休み

公園で遊んでいるのは いつかの誰か
まだこんなに忙しくなかったころの

きみとあいつと

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Lord knows

Lord knows

晴れた秋の日 あなたを運ぶ
ひどく晴れた空は やけにまぶしくて

まるで夏が帰ってきたような陽気の下
あなたが箱の中で ことこと揺れる

見上げるほどに高かった背中も
大きてごつごつした手も 長かった足も

日に焼けた笑顔も 目じりの皺も
今は小さな箱の中

石段を踏んでお堂に上がる
ここであなたとお別れ いや

かつてあなただったものが
火となり土となり水となって

またこの世界を巡る ただそれ

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Grace of God

Grace of God

垂れこめた秋の朝 雲隠れしてるのは
何も太陽ばかりじゃないと

君は憂鬱そうな顔で ひとり
キッチンで湯をわかしてる

僕はといえば 読めもしない本を開き
白紙の部分を目でなぞってばかり

君は言う
本なんて捨てちゃえばいい だって

大事なことは何一つ書いてやしないのに
僕は言う

書かれていないことを読むために
本を読むのだと

君はあきれた顔で肩をすくめ
ひとり お茶を入れてため息をつく 

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