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百光年
高い空に 薄い月が残る
秋の日の朝に
一人歩く まだ眠っている
家々の 間の路地で
昨日忘れた 洗濯物が
軒先で冷え切ったまま 光を待ってる
もう終わったのやら
まだ始まってないのやら
あの物語この物語の 書き手はどこへ
果たして続きはあるのか 否か
誰が読む 百光年の彼方の物語
百年後の 君に届くといいな
〇 〇 〇 〇 〇
over the fence
誰もいない 休日の波止場の
錆びた鉄板の上に ひとり
ひなたぼっこしてる 猫の横を
我が物顔で 自転車をとばす
どこへ行くあてもなく
誰と会うでもなく
冷えた秋の空の下で
ひとり 汗をかいている
立ち入り禁止の有刺鉄線の奥で
資材置き場の水たまりが光ってる
去年は昨日 昨日は去年
考える間もなく過ぎる時間に
押し流されながら それでも
どうにか息をしてる
有刺鉄線を素手でつかんで 泣
Lord knows
晴れた秋の日 あなたを運ぶ
ひどく晴れた空は やけにまぶしくて
まるで夏が帰ってきたような陽気の下
あなたが箱の中で ことこと揺れる
見上げるほどに高かった背中も
大きてごつごつした手も 長かった足も
日に焼けた笑顔も 目じりの皺も
今は小さな箱の中
石段を踏んでお堂に上がる
ここであなたとお別れ いや
かつてあなただったものが
火となり土となり水となって
またこの世界を巡る ただそれ