garuri

仕事とおやつの合間に本を読んだり駄文をつらねたり音楽を聴いたり映画を見たり妄想したりし…

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仕事とおやつの合間に本を読んだり駄文をつらねたり音楽を聴いたり映画を見たり妄想したりしています。 インスタ始めました。 https://www.instagram.com/avantlongtemps/

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    日々なんとなく頭に浮かんだ駄文の切れ端とか読み散らした本の断片など

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百光年

高い空に 薄い月が残る 秋の日の朝に 一人歩く まだ眠っている 家々の 間の路地で 昨日忘れた 洗濯物が 軒先で冷え切ったまま 光を待ってる もう終わったのやら まだ始まってないのやら あの物語この物語の 書き手はどこへ 果たして続きはあるのか 否か 誰が読む 百光年の彼方の物語 百年後の 君に届くといいな   〇  〇  〇  〇  〇

    • 記憶

      風のない日に 港を走る 人気のない荒れた舗道に 大型トラックが 寝そべってる 誰もいないような顔で どこかの工場で動いてる クレーンが 軋みを立てる あれはもう十年 いや二十年前の やっぱり今年と同じくらい 寒い 寒い 冬の終わり ほんの少し 暖かくなった頃 家出する猫みたいに 君は 出ていった いくつもの春が重なって 記憶と時間が曖昧に溶ける 砂混じりの風の中 消えては浮かぶ 遠い歌 むすんで ひらいて 誰の影  〇  〇  〇  〇  〇

      • over the fence

        誰もいない 休日の波止場の 錆びた鉄板の上に ひとり ひなたぼっこしてる 猫の横を 我が物顔で 自転車をとばす どこへ行くあてもなく 誰と会うでもなく 冷えた秋の空の下で ひとり 汗をかいている 立ち入り禁止の有刺鉄線の奥で 資材置き場の水たまりが光ってる 去年は昨日 昨日は去年 考える間もなく過ぎる時間に 押し流されながら それでも どうにか息をしてる 有刺鉄線を素手でつかんで 泣きべそかいた いないヒーローを 今も ここで待ってる  〇  〇  〇  〇 

        • 秋の朝に

          冷えた朝 久しぶりに晴れた休日の秋空 冷蔵庫のように冷えた草地を ズボンの裾を ぬらして歩く ようよう照らし始めた太陽が まだ夏みたいな顔をして目を刺すけど 冬はもうそこ 冷たい風の刃に 切り刻まれた落ち葉が かさかさ鳴る わざと枯草をけちらして 投げて遊んだ だれかの背中 遠くで光る水面に 逃げた青空 そこにもういない だれの声 ひびく空に思う よぎる風の奥は もうすぐ冬の色  〇  〇  〇  〇  〇

        百光年

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        記事

          足音

          まだ昨日の波にぬれた浜の 波打ち際を 砂利を踏んで歩く だれかの捨てた バーベキューの炭だの花火の燃えかすだの 昨日の宴の残り火が くすぶってる まだ暗い時間から釣りをしてる人たちが 目をこすりながら水面を見つめている 僕は立ち入り禁止の柵をこえて 防波堤を下り 誰もいない砂浜を歩く 寄せては返す波の音に いなくなった人の声 最近見ないあいつは入院してたらしい ひとり またひとり 浜辺に来ては去っていく 釣り人に自転車 散歩する老人たち 僕もそのひとり ただのひと

          正しい町で僕は

          早朝からハンドルを握ってる 昨日の風が まだ止んでもいない車道を 緑のリュック 背負った自転車が 目の前の赤信号を逆走する わずかにアクセルが遅れた瞬間 後ろから けたたましいクラクションを鳴らして 暴走気味のBMWが 僕を追い越していく 昔雑誌に載ってた記事までほじくり出して 重箱の隅まで清潔にするのが 今時の流行らしい どこまでも正しい町で 汚れ一つなく 戻ることも やり直すことも許さない 清潔でゴミ一つない町を 染み一つない スーツを着た男が 我が物顔でBMW

          正しい町で僕は

          夏日

          突然泣いたり笑ったりする まるで不安定な君とぼくのような 気まぐれな空のやつは どうやら今日は 晴れることに したらしい そんで 何だかまだ嘘っぽい 君の笑顔と同じくらいに 信用できない青空に 誘われて 防波堤までサイクリング まるで真夏の顔した太陽が むせかえるような熱と光の中 多分君は クーラーの効いた部屋で 今頃 アイスでも食べてるかな 防波堤なんかない都会の町で 僕はまだ 海沿いの同じ町で 同じところを ぐるぐる回ってる 焼けたコンクリートの上 文句を

          sanctuary

          まるで夏のような光の午後 もう梅雨なんて終わりとばかりに 汗ばむ太陽の月曜に 僕は休んでる その代わり日曜も休日もないけど 学校が終わったらいつも本を抱えて 図書館にこもっていた君は 今はどこ みんな知らない町で知らない人と うまくやってるのかな なんて いまだにどこにも行けないまま 何者にもなれてない僕は思う 何回目の夏が来ても同じ場所で僕は 同じ壁の前に 同じ絶望と同じ希望を 繰り返してる そうしてこのどうしようもない 円環とも螺旋ともつかない迷路のような夏に

          sanctuary

          山桜

          すっかり汗ばむような それでも 木陰に入ると うっすら冷たい 山里の春は 去年と同じ顔して それでも今年は今年 去年咲いた花は枯れて落ちて 秋をこえ冬をこえて 芽吹いた 新しいつぼみが まだちらほらと 遠慮がちに でも誇らしげに色づいてる 咲いた花は また枯れる そして すぐに新しい季節も 昨日に変わる だから何 ときみなら言うのかな 昨日も明日も今日の続き くるくる回って みんな変わって 誰もいなくなって 一人ぼっちでも それだってみんな いつかの今日の 続き

          風のある午後に

          よく晴れた 風のある昼下がり 自転車をこいで となりの町まで ちょっとばかり 海のやつを見に 埋立地の工場の裏手の 堤防の上 誰もいない海は コンクリートに切り取られ 空まで真四角な顔で にこりともしない いつだってそうだった いつもそう 学校をやめたときも 仕事をやめたときも ひとりぼっちに戻ったときも 同じように定規で引いたような線で くすりとも言いやしない 逃げるように猫が走る そのあとを 追うでもなく歩き出して 見失う 堤防の上 目まいがしそうな潮の風に

          風のある午後に

          自由へ

          閉じた壁の中 息をひそめて暮す 別に殺されるわけじゃない 我が物顔でお仕着せの制服を着た 流刑地ばりの兵隊が闊歩する はるか昔の亡霊が蘇るごとく 誰かの気分が法律にすり替わる 誰も声を上げないのはなぜかって そんな子どもみたいなことを 言ってた君は 次の日に消えた 人を殺すのは武器じゃない 沈黙と恐怖に包まれた壁の中で 黙っていれば生きることはできる それを 生きると 言うならだけど 捧げるものは まだあるのか 何一つない 何一つ 僕には それでも ただ一つ信

          自由へ

          さぼる

          何だか寒くて起きられない 冬の朝 布団の中から手を伸ばし どうにかリモコンをさぐりあて エアコンのやつを先に起こす めんどくさそうに返事して 律儀にカタカタ動き出す 機械は偉大 人は怠惰 いつまでも動けないぼくは ラジオをつけてまたひと眠り こんな寒い日には いつまでも このままぬくぬくしていられたら どんなにすてきだろう そういう訳にもいかなくて 何度目かの夢からさめて 無理やり起きる そしてまた寒い外へ こごえそうな風の中 見る人はなくても 機械は動く そ

          さぼる

          冬ごもり

          よく冷えた朝 斜めにずれた毛布から はみ出した足が あんまり寒くて ベッドの奥に 縮こまってる 何だか排水溝の ごみみたい いつまで縮こまって 固まって こわばって 動けなくて がたがたしてるうち 朝日のやつが 先に顔を出してる どうしてエアコンのリモコンを 枕元に置かなかったの 君だったら 怒るかな どうでもいい夢想にようやく 目を覚ましながらスリッパをはき やっとこさストーブをつける 冬はやっぱり苦手だけど ストーブの前にかじりついて飲む コーヒーと君がい

          冬ごもり

          キッチン

          積みあがった荷物を片付ける ひとつ またひとつ 箱を開けては 増えるばかりの がらくたの山 ラップに洗剤 キッチンタオル あなたが一生かかって使いきれなかった 残り物 捨てては拾い 拾っては捨て ああもう きりがないやと お茶をわかして 一休み いい天気の秋の日 やり残した仕事は 途中で投げて 一休み 公園で遊んでいるのは いつかの誰か まだこんなに忙しくなかったころの きみとあいつとそいつとぼくと みんなフリーじゃなくても自由だった頃 お茶を飲みながらラジオを

          キッチン

          Lord knows

          晴れた秋の日 あなたを運ぶ ひどく晴れた空は やけにまぶしくて まるで夏が帰ってきたような陽気の下 あなたが箱の中で ことこと揺れる 見上げるほどに高かった背中も 大きてごつごつした手も 長かった足も 日に焼けた笑顔も 目じりの皺も 今は小さな箱の中 石段を踏んでお堂に上がる ここであなたとお別れ いや かつてあなただったものが 火となり土となり水となって またこの世界を巡る ただそれだけ 誰も そしていつか 僕も  〇  〇  〇  〇  〇 Les êt

          Lord knows

          Grace of God

          垂れこめた秋の朝 雲隠れしてるのは 何も太陽ばかりじゃないと 君は憂鬱そうな顔で ひとり キッチンで湯をわかしてる 僕はといえば 読めもしない本を開き 白紙の部分を目でなぞってばかり 君は言う 本なんて捨てちゃえばいい だって 大事なことは何一つ書いてやしないのに 僕は言う 書かれていないことを読むために 本を読むのだと 君はあきれた顔で肩をすくめ ひとり お茶を入れてため息をつく  そして冬になる前に 少ない荷物をまとめ シングルベッドといっしょにいなくなった

          Grace of God