見出し画像

ADHDっぽい私が心理学を仕事にするまでの話6  ~卒業したけど心理はわからず!~

前回のお話はこちらから

卒論作成の道筋

前回までのように、私が当時学んだ心理学では、2年次・3年次で実験研究の一通りの知識や技術を学び、4年次で卒論作成に向けての準備に入ります。

まずは、実験計画のレジュメ作りが前期終了までの課題になります。

ゼミの時間に進捗状況を報告するのですが、大体のゼミでは、前期の終わりに卒論テーマを発表するためにどこかの施設を借りてゼミ生全員で合宿を張るという恒例のイベントがあり、それに間に合わせる必要があります。

問題となるのは、テーマです。テーマは基本的には指導教授の研究に付随する周辺の研究を行うのが定石、でしょうけど、人とは違うことをやりたがる私の場合、少しはずれたところをテーマに選んでしまったため、文献の収集、実験道具の準備から分析の方法など、ほとんどを自分で作り上げなければならず、大変苦労することに。

卒業のため、と割り切って、無難なテーマにしておけばいいものを、どうも、私は自分の「こだわり」のために苦労を背負い込む性格らしく、それで自分を苦しめていく性分のようです。

ですので、この1年はとにかくそれにかかり切り、という状況でしたね。

卒論のテーマは「仮現運動」という、古くて新しいテーマでした。

仮現運動とは、たとえば、ネオンサイン。
実際には動いていませんが、電飾のランプが一定の間隔で点滅することで、動いているように見える現象です。

点と点がつながると「動き」という現象が生じる、ということは考えてみると不思議なことです。

そのメカニズム(認知情報処理過程)を検討することで、心の働き(の一部)を理解することが目的です。

この現象、元々はヴェルトハイマーという学者が20世紀の初め頃に研究を行い、それををもってゲシュタルト心理学の始まりとされるくらい由緒ある題材ですが、近年のコンピュータの進歩によって当時ではできなかった詳細な検討が可能になり、近年になって新しい題材として割と盛んに研究され始めた頃でした。

ゲシュタルト心理学 Gestalt Psychology とは
ヴェルトハイマー(M. Wertheimer,1880-1943)
による「運動視に関する実験的研究(1912)」にはじまるといわれる。要素主義を排して部分に対する全体性の優位を説き、部分の性質は全体の構造によって規定されるとする立場をとった。ヴェルトハイマーの教えを受けたケーラー、コフカらとともに、ゲシュタルトの要因に代表される心的過程を自然科学的な立場で検証し、特に知覚の領域で多くの実験的成果を上げた。

「新版 心理学事典(1988)平凡社」 を参考

したがって実験研究には、コンピュータによる実験装置の設定が不可避である、ということです。

実験のためにプログラミング?

コンピュータは大学のものを利用できるのですが、ここで、今まで全くやったことのない、「プログラミング」をする必要に迫られることになりました。

…この時代のコンピュータは、やっとwindows3.1の時代でしたので、まだまだMS-DOSの知識がないとなかなか使いきれないところがありました。

PCの知識はまったくなかったわけではないですが、やはり言語を使ってのプログラム作成には苦労することになり、それだけで相当な時間を要しました。

いまならネットを駆使してあれこれ調べられますが、まだまだそんな時代ではなかったです。

まずはテキストを購入して、書かれているとおりに「点」を表示することとか、「線」を表示することとか、そんなことから始め、掲載されているゲームプログラムを丸写しで走らせてみたりと、トライ&エラーを繰り返しながらすべて独学で習得していきました。

最終的には、「作成した任意の図(ランダムドット)を逐次的に提示して仮現運動を作り出すこと、独立変数である呈示速度を変化させて一定回数ループすること、実験参加者はそれをキー入力で応答、キーによる反応をデータ・ファイルに取り込むこと・・・等々」、といういくつかのルーチンを作成して、完成にこぎつけることができました。

今思えばごく基本的なプログラムではありましたが、元々文系人間の私には困難を極めるものでしたね。

使った言語はQuick BASICでしたので比較的容易だったとはいえ、いや~、よくやったものだと今も思います。

QuickBASIC(クイックベーシック)とは
QuickBASIC(クイックベーシック)は、マイクロソフトが開発した統合開発環境。また、そこで用いられるプログラミング言語。 Microsoft Visual Basicの前身でもある。MS-DOS版とMacintosh版がある。

MS-DOS版の開発環境はMS-DOS上での動作ながら非常に高機能で、かつ文字ベースでGUIをエミュレートしていたため視覚的に操作できた。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より転載(https://ja.wikipedia.org/wiki/QuickBASIC)

そんなこんなで卒論作成の年も半分終わった頃、一進一退で苦しんだ実験プログラムも何とか作ることができ、実験の準備が整いました。

それから、事前に作成した実験計画に基づいて実験を進めることになります。

ただ、メリットだったのは、プログラムができれば実験自体は全自動でできるので、その後の手間は少なかったと言えます。実験協力者を20人ほどお願いし、順調に進みました。

およそ一月かけて、何事もなく淡々と実験終了!
ただ、実験が終われば、データの整理、表やグラフの作成、文献を整理して論文にまとめ、さらにそのレジュメを作成するという、一連の課題を行う必要がありました。

当然のごとく、苦労しましたが、何とかまとめあげ、締め切りぎりぎりで提出したのを覚えています。

ほんと、ギリギリでした。そのため、少し中途半端になったところもあり、正直、あまり「やり切った」感はなかったです。なので、出しても、その後の口頭試問に向けての不安は残りましたが・・・。まあ、仕方がないですね。

その後、緊張のなか口頭試問を終え、はれて単位が認められ無事に卒業と相成りました。

卒業見込みも、進路はどうする?

ところで、大学4年生と言えばもう一つの重大事が、「進路」ですよね。

ほとんどの学生は就職するわけですが、より学究を求める小数は、大学院に進むことになります。

私はというと、早くから大学院を希望していたので、就活はまったくやっていないです。

その分、卒論に集中することはできましたが、それだけいいものができたか、というと?です。(苦労は一人前にしたつもりですが)

院を目指す場合、学究を求める場合と、自分の明確な進む道がわからないのでとりあえず、という「モラトリアム」の場合もあります。

私はというと・・・。

今正直に考えると、就職するということは考えられなかった。就職している自分の姿が想像できなかったです。振り返ってみると、社会に出ることは当時の私にはまだ怖かったのだと思います。

他の方々とは少し遅いタイムスパンで生きているのでしょうね。

ただ、そのときの選択が今の自分と関係していることを考えると、悪い選択ではなかったのかな・・・という感じです。

思えば、心理学を志し、大学4年間はほとんど実験とレポートの作成、最終的にはプログラミングに苦しみ、やはり「何でこれが心理学?」な感じはぬぐいきれず、入学前の志は不完全燃焼のまま、卒業の日を迎えたのでした。

続きはまた次回。今回もお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?